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「明治初期の西洋画の絵師として二人をあげよ」といわれれば、高橋由一と五姓田義松の名前をあげる人が多いのではなかろうか。この二人は、ワーグマンの指導を受けたという共通点を持つ。高橋由一は《鮭》・《花魁図》・《豆腐》などが教科書にも載っているため誰でも知っていると思われるが、一方の五姓田義松のほうはまとめて紹介されることが少ないため、知名度は高橋に及ばない。
その五姓田をまとめて見られる機会がやってきた。神奈川開港・開国150周年記念メモリアルイベントとして、神奈川歴博で特別展「五姓田のすべて-近代絵画への架け橋」が開かれているのである。 Ⅰ五姓田派誕生 五姓田派は義松の父、初代芳柳(1827-1892)を始祖としている。幼少時、何回も養子に出され、5つの姓を持ったところから、五姓田と称したらしい。その修行時代は詳らかではないが、歌川国芳と関係があったともいわれている。絹地にぼかしを多用する横浜絵を大量に制作したとされているが、今回出ているものでは《西洋老婦人像》↓の金髪や青い目が印象的である。 一方、芳柳は息子義松を英国人報道記者チャールズ・ワーグマン(1831-1891)のもとに、入門させている。本格的な西洋絵画技術を求めたのであろう。本展にはワーグマンの水彩・油彩がでていたが、時局に敏感でありながら、即興で民衆の姿や風景を把握した穏やかな画である。この感覚も五姓田派に共有されていったようである。 Ⅱ五姓田家の絵師たち 五姓田派の拡大は、ひとえに義松(1855-1915)の成長とともにあった。《十三歳の自画像》をみれば、早い時期に鉛筆デッサン・水彩画技法・油彩画技術を習得していたことが分かる。ポスターのデッサン↑や《二十二歳の自画像》を見ると、その巧みさに舌を巻く。《根岸友山像》↓も素晴らしい。 この技量をもって皇室・政府の御用絵師となっており、この展覧会にも《御物 北陸・東海道御巡幸記録画》が出展されている。こうして五姓田派の画塾に画学生が集まったのである。 ところが1882年に、義松はパリに留学し、9年間滞欧した。今回の展覧会の裸体画《西洋婦人像》や風俗画《操芝居》↓などを見ると、留学早々から実力を発揮し、サロンにも日本人として初めて入選している。しかしその後のパリ生活は苦しかったようであり、帰国後の活動も目立っていないが、円熟した技量を示す作品が残っている。《加奈陀ヴィクトリア港景図》も汚れてはいるが、当時の色彩の豊かさが感じられる。 また、妹の幽香(1856-1942)の中には、義松をも凌駕する技術の高さを見ることができる。《幼児図》↓は石臼に足を縛られながら、トンボを捕っているガッツのある子供がしっかりと描かれ、《宝林院了巌居士像》↓↓の表情は豊かである。女性絵師として、もう少し評価されて然るべきであろう。 義松のパリ留学を受けて、芳柳号を継承した二世芳柳(1864-1943)は、その継承に相応しい実力を発揮した。今回出ている国府台風景図屏風》右隻↓を見ると、西洋画のみならず、日本画も十分にこなしていたことが分かる。 また山本芳翠(1850-1906)は、五姓田派という枠をも飛び越え、明治美術会から白馬会へと、明治洋画の大きな流れを作っていった。《若い娘の肖像》・《西洋婦人像》・《琉球令正婦人肖像》などの美人画は素晴らしい。《猛虎一声》は暗いが、迫力十分である。日清戦争・日露戦争の戦争画も出ていて驚いた。 初代の娘婿、幽香の夫である渡辺文三郎(1853-1943)は、中等教育に尽力したが、今回出展されている《富士遠景》や《松島内雄島》は美しく、《松島》はモネの《日の出》のようである。 《明治初期洋画壇回顧》の著者である平木政次(1859-1943)の作品では、《板倉勝静》や《箱根》が良かった。明治期の関西洋画壇をリードした松原三五郎(1864-1946)の作品もあった。土方歳三の甥の土方力三郎の《近藤勇像》↓は歴史資料としても大切なものだろう。 五姓田派が登場し、その西洋絵画技術は二つの方向で国内に広がっていった。一つが複製技術を利用した版画・挿絵などで、もう一つが美術教育である。これらについても沢山の作品で説明されていた。 前期は8月31日まで、後期は9月6日-28日。後期に出てくる山本芳翠の《浦島図》や《富士山》も見逃せないと思う。 特別展の会場は暗く、ガラスが反射して見にくい。単眼鏡あるいは双眼鏡を持参することをお勧めする。また出品リストは会場ではいただけないので、ネットのpdfリストをプリントアウトしていったほうが良い。 また常設展の2階にも五姓田義松のデッサンなどが多数陳列されているので、注意されたい。 美術散歩 管理人 とら HP
by cardiacsurgery
| 2008-08-16 22:36
| 国内アート
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