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美術評論家の井手洋一郎氏は、1992年に出版されたアサヒグラフ西洋編19「コロー」の中に、「コローの新しい見方―『抒情』の風景画家から『光と影』の造形家へ」という一文を残している。これを前日に読んでいって、展覧会の初日開館直後に入場した。
こういう意味で今回の展覧会を概観すると、個人蔵は110点のうちわずか1点だけである。コローの全体的な評価については、今回のフランス側監修者のポマレット氏(ルーブル美術館絵画部長)の講演「コロー:絵画における音楽的概念」↓を聴くことにした。その詳細はホームページに書いたが、ここでは、監修者の意見も参考にしつつ、主として展覧会の章立てに沿って、コローの画風の変化を追っていくことにする。 コローの初回のイタリア旅行は1825-27年である。この頃のコローの作品は堅牢で、光と影にとみ、後期の銀灰色のマンネリ化した画よりも好感が持てる。お気に入りは、《ヴィル=ダヴレー、牛飼い女のいる森の入口》の道に差し込む光線、《ローマのコロセウムの習作》や《ファルネーゼ公園から見たフォロ・ロマーノ》↓の光と影、《プッサンの散歩道》、《ティヴォリ、ヴィラ・デステ庭園》↓↓などである。 《画家の姪の肖像》は何回も見ている。《ヴィル・ダヴレー 水門の釣り人》↓の水面に映る人物や遠くの女性たち、《水汲み場のブルターニュの女たち》の頭に乗せた水瓶、《エトルタの風車》の極端な遠近法や《小さな谷》なども印象的だった。 《ピエルフォン城》の明るい順光や《パリ近郊の農家の中庭》が気に入った。ドランやセザンヌへの影響が見てとれる作品もあった。 4章:樹木のカーテン、舞台の幕 コローは生涯にわたって、舞台芸術に関心を示し、このセクションの木立を描いた一連の作品では、前景のヴェールのように枝を広げる木々はちょうど舞台の幕の役割を果たし、霧の向うに見え隠れする遠景は舞台となっているというのである。これは新鮮な見方で共感できた。また、傾いだ木や奥行き感の表現は、演劇的な効果をあげているとも述べている。 ここではこういったコローの画風に影響を受けたものとして、モネの《木の間越しの春》、シスレーの《ヴヌー=ナドンの岩の森》、モンドリアンの《農家の前の水辺の人々》、ピサロの《夏の木蔭の小道》やゴーギャンの《ノルマンディーの風景、沼の片隅》などが挙げられていた。 5章:ミューズとニンフたち、そして音楽 《本を読む花冠の女》はラファエル前派のミレイに通うものがある。《本を読むシャルトル会修道士》は落ち着いた良い画である。《ミューズの歴史》や《バラ色のショールをはおる若い女》も良かったが、後者はちょっと淋しい。有名な19世紀のモナリザ《真珠の女》はポスター↑よりはるかに良い色であるが、ガラスが反射して髪の毛が水玉模様のようになってしまっていた。 《マンドリンを手に夢想する女》や《水浴するディアナ》↓はお気に入り。とくに後者はマドリッドでも見たものだが、コローにしては珍しい裸体画である。思わず絵はがきを買ってしまった。ここでどうしてコローは独身を通したのだろうという疑問が頭の中に持ち上がってきてしまった。 この章のベストは《青い服の夫人》↓である。これはコローの最晩年の作であり、彼の一つの到達点であると考えたい。 この章が、今回の展覧会の副題に関係があるらしい。コローは、戸外で描いたスケッチを利用しながら、かつて旅した土地の想い出を追想してアトリエのなかで再構成し、「・・・の想い出」と題した多くの情緒的な風景画を残している。今回の展覧会の監修者は、「想い出」の風景は少しずつ叙述的な表現をはなれ、音楽的なリズムに満たされていく」としている。さらに「このような銀灰色の靄に包まれた喚起力と連想の芸術は、抽象へとむかっていった20世紀芸術の担い手たちがもとめた新しい芸術的地平を見ることができる」ともしているが、この意見には必ずしも賛成できない人も多いのではあるまいか。いずれにせよ、有名な《モルトフォンテーヌの思い出》↓や《幸福の島》はさすがに素晴らしかった。 美術散歩 管理人 とら HP
by cardiacsurgery
| 2008-06-16 00:02
| 国外アート
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