川端龍子と修善寺 ＠大田区立龍子記念館

　久し振りで龍子記念館へ。まず反対側の「龍子公園」へ寄る。緑豊かな旧川端邸を撮影。手前に「爆弾散華の池」が見える。　今回は、龍子記念館開館４５周年記念特別展。副題は「伊豆市所蔵、近代日本画の巨匠の姿と共に」である。　龍子は、修善寺に別荘「青々居」を構え、修善寺を菩提寺とし、伊豆から画題を得ることが多かった。第一部は、このような龍子の「修善寺への想い」の表れた作品を集めたもの。最初に出てくるのは、ポスター↑表面にある《龍子垣》。この竹垣は、実際に別荘の前にあったもの。梅や藤の花がうまくあしらわれている。

　次は、全長28メートルの大作、《逆説・生々流転》。昭和33年の狩野川台風によって被害を受けた伊豆半島がテーマ。図録では4段2ページに収録されているが、記念館では大きな壁面に2段に展示されており、迫力がぜんぜん違う。　記念館の上段(図録では上2段）は、三本爪の龍が持つ台風の目↓→それに気付かず魚を採る平和な漁村→雨が降り出し逃げはじめる魚や鳥→黒雲が現れ、富士山を取り巻く。　下段(図録では3段目）は、激しい台風の雨風→狩野川があふれて、人々は屋根にしがみつく↓。　最後（図録の4段目）は、機械を駆使した復興への努力→虹↓の向こうに飛ぶ鳥と新しい橋。なぜかこれを撮影する男も描かれている。この台風の直後に龍子は伊豆を訪れているから、この男は画家本人なのではなかろうか。　大観の《生々流転》が観念的な自然の流転であるのに対し、龍子の《逆説・生々流転》は自然の猛威に耐えて復興する人間の営みの流転である。もちろん後者のほうが数倍の迫力がある。

　第1章では、この他に、《寝釈迦》↓、《怒る富士》、《伊豆の国》などの力作が揃っている。　第2部では、修善寺の新井旅館をベースにした画家の作品が集められていた。川端龍子の他に、安田靫彦・前田青邨・石井林響･横山大観・今村紫紅などの作品はそれぞれに味わい深かった。龍子の《湯浴》に描かれた湯煙りにくもる9歳の娘の姿は、修善寺温泉の雰囲気そのものである。　とても良い展覧会だが、会期は1ヶ月のみ。6月15日までである。これはおすすめ。

美術散歩　管理人　とら

HP