足立美術館 @山陰美術散歩（第２日）

　いよいよ有名な足立美術館へ。車窓から雪を被った大山が見える。　この地に生まれ育った足立全康は木炭運搬の帰り車が空なのに目をつけて村への必需品を仕入れて金儲けを始めた。雪道では素足から血がにじみ難儀したとのことである。おそらくその時はこのように美しい大山を愛でる余地はなかっただろう。しかし後年横山大観の富士の画の収集に並々ならぬ意欲を示した心の奥にこのような若き日の思い出が潜んでいたかもしれない。

　美術館前には大型バスが並んでいる。日本庭園と日本画ということで観光旅行のコースになってしまっている。　冬季特別展は「日本画の中の美人たち」。ポスター↓の画は、上から順に、安田靫彦《王昭君》・伊藤深水《爽涼》・上村松園《娘深雪》の一部分。　まず庭園を拝見。窓から直接に↓、あるいは生の掛軸↓↓や生の額縁↓↓↓として眺めるようになっている。「５年連続　庭園日本一」というパンフレットが置いてあったが、十分に納得できる。　次は「小展示室」で「四季の屏風絵」を観る。竹内栖鳳《富貴くさ》、榊原紫峰《秋草》、橋本関雪《樹上孔雀図》・《唐犬図》の他に川端龍子が３点出ていた。《浪戯》や《春雪譜》はいずれもすばらしかったが、画像としては色彩が華やかで、動きと感情表現のある《愛染》を上げたい。
　次に「大観室」に入る。この美術館には横山大観の作品が130点もあるというから、展示されている16点はごく一部である。《春光》という大きな作品が突き当たり中央に架かっているが、あまり力がない。《無我》３点の一つも出ているが、東博や水野のものに比べれば迫力がない。《乾坤輝く》（海山十題）のような軍国主義絵画は嫌いである（①、②、③、④）。《雨聲》、《白梅》、《春風秋雨》、《春光》、《風蕭々兮易水寒》、《山川悠遠》などは良い。画像としては、《蓬莱山》を上げておく。足立は将来大観を買えるようになりたいと心に決めたという曰くつきの作品と同名の画である。　「大展示室」は「日本画の中の美人たち」で今回のメインイベント。ポスターに載っているもの以外のお気に入りをいくつか上げる。
　まづ上村松園の《待月》↓。《牡丹雪》も良いが観たことがある。
　伊藤小坡の《一聲》は、女性が古今和歌集第三巻を持っていることからホトトギスの一声に空を見上げるところと分かる。鏑木清方の《春游》や《潮干がり》はちょっと古い感じがする。北野恒富の《鷺娘》は幻想的な絵画で、今回のマイベスト↓。　伊東深水の作品に良いものが多かった。色気たっぷりの《春の雪》↓や《湯気》↓↓、娘雪路とその友達を描いた《夢多き頃》、辻が花染の着物と黒猫の対比が目立つ《ペルシャ猫》↓↓↓などいずれも絶品である。　最後に石本正の《麗日》。これを見たので島根県立美術館で見逃した石本正を取り返した。
　
　「陶芸館」の河井寛次郎と北大路魯山人も満喫した。どちらかというと近代的な後者をとる。

美術散歩　管理人　とら

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