大正シック

　大正シックという洒落た名前の美術展。アール・デコの庭園美術館にぴったりのものだった。

　元パンナム客室乗務員の女性が日本で蒐集し、ホノルル美術館に「売却」したものの里帰り。外国人だけに、作家の名前にこだわらず、自分でよいと思ったものを集めたのだろう。わたしの趣味とは合わないものもあったが、これは良いと納得するものも少なくなかった。結局、大正ロマンチズムの藝術表現を十分に楽しませていただいた。

　お気に入りの画を並べてみる。

　山川秀峰≪三人の姉妹≫・・・久原房之助の娘と白い外車、　武藤嘉門≪日光≫・・・三猿の写真を撮っている女性、伊藤深水≪対鏡≫・・・有名、橋口五葉≪化粧する女≫・・・有名、同≪夏衣≫・・・単衣の向こうに乳房まで透けて見える、同≪髪梳ける女≫・・・有名な絵だが、微妙な口許の描き方に気づいた、鳥居言人≪髪梳き≫・・・女性の柔らかな体の白い輪郭を無線彫りとしている素晴らしい絵、柿内青葉≪美人≫・・・全体にぼかしの効いた不思議な艶っぽさ、中村大三郎≪婦女≫・・・あでやかな赤の着物に身を包んでカウチに休む大正美人、　別役月乃≪七夕≫・・・足をつま立てて井戸水を汲む少女と髪を洗う女性、榎本千花俊≪銀嶺≫・・・毛糸のスキー手袋の質感、鏑木清方≪団扇≫・・・花びらが舞うなかの婦人の姿、梥本年方（まつもと）≪橋を渡る女≫・・・刀をさした女が渡る橋の向こうの舟に燕が２羽、水野年方≪茸狩り≫・・・立派な一物のような松茸をさしだされて恥かしがる女、寺崎広業≪水着姿の美女≫・・・囚人服のような横縞のスィム・スーツ。

　このほか着物の柄が近代的で、抽象的なアートとして見応えがあるものが多かった。　ホームページにやや詳しい感想を書いた。

美術散歩　管理人　とら