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2018年9月1日の【ラジオ深夜便】で、絵画修復家 山領まりの「没画学生の絵を修復する」を聴いた。これは「戦争の記憶シリーズ」の一つで、初回放送は2015年8月11日である。
「ホームページ①」 ・日高安則《自画像》未完 無言館蔵 以下は今回の番組「絵画修復家・山領まり 戦没画学生の絵を修復する 」のメモである。 山領まりは、1934年 昭和9年福島市生まれ、 東京芸術大学専攻科を卒業、絵画の修復と出会い、自らの工房を立ち上げて半世紀にわたって絵画の修復に取り組み、絵画修復の基準を作り上げてきた。 太平洋戦争当時、日本軍が描かせ、戦後はGHQに接収された戦争記録画の修復や、パリ日本館の藤田嗣治の作品の日仏共同修復事業のほか、浮世絵、版画、文書など紙の美術作品、文化財の保存修復に取り組んできた。 平成9年長野県上田市に開館した無言館に展示する戦没画学生の作品の修復を依頼された。 戦争に行かざるを得なかった画学生の作品は、描きたいという思いが強く伝わってくる一方で、戦後時間の経過とともに絵代が変わり、保管状態が悪いことも多くて修復は極めて難しい。 ただ、その時代を物語るものとして、修復して保存する意味は非常に大きいので、この仕事にはかかわっていきたいとのこと。 山領まりは、45年前に立ち上げた「山領絵画修復工房」の代表を昨年を退いた。 絵画の修復というのは、物を直すという観点から見ると、特殊なものとは思えないが、絵画の特殊性、世界中に一つしかないという観点から見ると、修復家がすべきことはその作品を子細に観察する事から始まる。 絵画を構造的に考えると、一番下に麻布、次に目止め層(目止め材はにかわで現在は合成樹脂)、次に地塗り層があり、その上に何層かの絵具層があり、その上にニス層がある。 これらをその状態が想像できるぐらい観察して、それが今どういう状態なのかをきっちり掴むようにしている。 カビ、絵具がひび割れてある面積で落ちてしまったり、裏から破れたり、埃など様々なことが起きている。 現状をあまり大きく変えないで、劣化が遅くなるように手助けするのが、修復家の立場である。難しいが、現状の画面なりの印象をなるべく変えないというのが、原則である。 無言館館主の窪島誠一郎は、「介入」には消極的だが「保存」はしなければならないという考えである。 無言館の作品は物置などに置かれていたものが多くて、時代が経っている痛んでいる作品が多いので、ほとんどのものは修復しなければならない。 ただし無言館に寄託しようと思った遺族の方の中には普通の修復(ぴかぴかに戻す)して、寄贈した作品が混じっていているが、これらは飾られていてもとても違和感がある。 作品に介入するという形ではなく、落ちそうなものは裏から支えるという修復をしたいと思っている。 「最後の晩餐」等の名だたる名画は、顕微鏡をのぞきながら、吟味しつつ絵具層を洗いとって行っていくので、オリジナルな姿が残っているが、今の私たちのお手本である。 無言館の絵の修復は10数点になると思う。 材料としては必ず元に戻し得るものを使わなければいけないのが修復の原則だが、そうやって遠近法で描かれている風景画の一点の欠損が埋まると、風景の遠近がはっきりしてきて、風が吹くみたいな感じがすることがあるが、無言館の作品に対しては風まで吹かしては困る。 無言館の修復の難しさは、埃などをどこまで取っていいのかということである。取ることはできるが、残すことは難しい。顔や手などあらゆるところに無残な剥落がある「飛行兵立像」(↓)場合、これを見たものは衝撃を受けるかもしれないが、作品を綺麗にしてしまうと、あれだけの力は持たないだろう。 また当時、良い画材が手に入らなかった。麻の布の織り目も粗いし、画学生には絵具の配給はあったとは思えず、絵具もなかなか手に入らなかっただろう。 無言館に置かれた或る時期の20代の若い人たちの作品には、美術史を輪切りにしたような面白さが有るのではないかと思う。 これで死んでいかなければならないかもしれない自分を見つめたいので、自画像、肖像画が多いという特徴がある。 無言館はそこを訪ねた自分自身が何かを見出す、発見する美術館だと思う。 やってみると、修復によって絵に力が戻ることが分かる。この修復には「やさしさ」が必要であった。戦後70年経って再び力を取り戻してゆく作品の手伝いをしたことには意味があった。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2018-09-01 12:23
| 近代日本美術
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