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府中市美術館で「リアル 最大の奇抜」展の後期を見てきた。コンセプトの難しい展覧会だった。
展覧会の構成は、下記の五章建て。 一章 「リアル」の力 二章 「リアル」から生まれる思わぬ表現 三章 ところで「これもリアル?」 四章 従来の描き方や美意識との対立と調和 五章 二人の創作者 司馬江漢と円山応挙 以下、章別にお気に入り作品をいくつか挙げつつ、各章のコンセプトに迫っていきたい。 一章 「リアル」の力 この章には、現代人の口からも「リアルで凄い」という言葉が出てくるような、迫真描写に目が釘付けになるような作品が集められている。 ・森狙仙《群獣図巻》部分 ・原在中《鶏頭花図》敦賀市立博物館 ・長谷川雪堤《浅草雪景図》立花家史料館 二章 「リアル」から生まれる思わぬ表現 この章では、非近代的といわれる多彩な創作の数々を具体的に提示する。 ・太田洞玉《神農図》府中市美術館 ・祇園井特《美人図》 ・北鼎如蓮《鯉図》摘水軒記念文化財団(府中市美術館寄託) ・葛蛇玉《鯉図》 ・黒田稲阜《千匹鯉図》鳥取県立博物館 ・小泉裴《鮎図》 ・本多猗蘭《蓮鷺図》 この絵は、墨の濃淡だけで出来上がった蓮と鷺、蘆の光景であるが、濃淡が非常に繊細な場所とややリアルの場所が混在している。 ・片山楊谷《虎図》 三章 ところで「これもリアル?」 この章では、一味違うリアルな絵画に目を向けている。 ・東燕斎寛志《美人瞋焔図》熊本県立美術館(今西コレクション) ・島田元旦《紫式部清少納言図》鳥取県立博物館寄託 四章 従来の描き方や美意識との対立と調和 この章で取り扱っているのは、中国風の山水画あるいは雪舟流の気骨あふれる描法と日本の身の回りの風景を描くことの融合を図った作品と文人画(南画を含む)である。 ・米田松洞《西山秋景》熊本県立美術館 ・天竜道人《牡丹に猫図》 ・渡辺崋山《市川米庵像》重要文化財 京都国立博物館 五章 二人の創作者 司馬江漢と円山応挙 この章では、創作者としての生涯をかけて「リアル」と向き合った江戸の司馬江漢と京の円山応挙の作品を見ていく。 ・司馬江漢《生花図》府中市美術館 ・司馬江漢《円窓唐美人図》府中市美術館 この作品には、中国で多く描かれた宮廷美人画「仕女図」の可憐さや妖艶さはなく、西洋絵画を真似て単一視点から見た光景を表している。 ・司馬江漢《犬に木蓮図》府中市美術館寄託 ・司馬江漢《七里ヶ浜図》 ・円山応挙《鶴図》 ・円山応挙《虎皮写生図》 ・円山応挙《猛虎図》摘水軒記念文化財団(府中市美術館寄託) ・円山応挙《鼬図》山形県指定文化財 本間美術館 ・円山応挙《雪中残柿猿図》 背景の空間は、広い余白に薄い墨を刷き、大きなムラを作り出している。これは写生というより、寒中の光景全体のイメージである。 ・円山応挙《時雨狗子図》府中市美術館 ・円山応挙《芭蕉鶏図襖》白鶴美術館 ・円山応挙《鯉魚図》 ・円山応挙《竜門図》重要美術品 京都国立博物館 江戸後期の安西雲煙「近世名家書画談」の一節に曰く「瀑布の中にて形像生るが如く真に登るが如くに見ゆ、応挙もとより登鯉の図を知らぬにはあらざるべけれ共、新意を出して写せしならん」 激流を登る鯉の姿は水に遮られて、途切れて見える。左右の図の縦が短いのは、滝の図の豪快さを際立させるためのアイディアである。 リアルに描くことは美術の基本……そう考えている人は少なくありません。明治時代の欧化政策を背景に、近代以降、西洋の画法をあらゆる美術の基本とする考え方が日本に定着したからでしょう。しかしそれは、言うまでもなく近代の話であり、きわめて限られた「リアル」のあり方です。古くからの日本の絵画を思い浮かべてみてください。迫真性にこだわらない、純粋な色や形そのものから醸し出される美しさは、日本絵画の大きな魅力だったのです。 江戸時代になると、そんな日本の絵画の「美しいものづくり」のうえでは必要とされなかった、あるいは意識外だったことを追及する画家が現れます。その一人が円山応挙です。応挙は、徹底した「リアル」の画家です。目に映るありさまを冷静に分析して画面に表してみる、いわば既成の美の手段を破壊した創作者でした。 「画を求めるなら自分に、図を求めるなら円山応挙に頼めばよい」。これは、今日「奇想の画家」と呼ばれる曽我蕭白が語ったと伝えられる言葉です。人気の応挙を向こうに回し、個性で勝負する蕭白の意気を示すものとして、よく知られています。しかし、蕭白といえば、中世以来の禅画の創作精神をも汲む画家です。見方を変えれば、旧来の芸術観をもつ蕭白にとって、科学的な目や技術から新しい絵づくりを試みた応挙の作品は、もはや別世界のものだったのかもしれません。たとえこの言葉が蕭白自身のものではなかったとしても、当時の人々の「リアル」に対する一つの受け取り方を示す、非常に興味深い内容ではないでしょうか。 江戸時代中期以降、応挙や江戸の司馬江漢ら、さまざまな画家たちが、思い思いに手法を考え、迫真的に表すことから生まれる未知の絵画の魅力を探っています。西洋絵画を目標にした明治以降とは違い、彼らの作品は、見た目も技法も多様です。また、それまでの「絵画の美とはこうあるべきだ」という考えや美意識と葛藤する様子、あるいは融合を試みる様子もみられます。 ともすると近代の先駆けとみなされることの多い江戸時代の「リアル」ですが、本展ではそのようなことに縛られずに、むしろそれを疑いつつ、作品に向き合いたいと思います。未知の領域に挑む画家たちの、濃密で素晴らしい創作の数々を、ぜひご覧ください。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2018-04-18 14:58
| 江戸絵画(浮世絵以外)
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