レオナルド・ダ・ヴィンチ《ジネブラ・デ・ベンチの肖像》

レオナルド・ダ・ヴィンチ《ジネブラ・デ・ベンチの肖像》をワシントンのナショナル・ギャラリーで、家内と一緒に見たのは、ジョンス・ホプキンス大学留学中の1970年12月のことであるから、詳細は忘れてしまっている。覚えているのは、長男を背中に負ぶっていたことと、この画が防弾ガラスに囲まれていたことぐらいである。⇒参照

【追記】家内に当日の日記を調べてもらったところ、「レオナルド・ダ・ヴィンチのこの画の他に、チチアン（ティッツアーノ）の画があった」との記載があった。ナショナル・ミュージアムで最も有名なティッツアーノの画といえば《鏡を見るヴィーナス》なのだが・・。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《ジネブラ・デ・ベンチの肖像》表面　1478～80年頃、油彩・板　　36.1ｘ37㎝　ワシントン、ナショナル・ギャラリー　⇒参照　⇒池上英洋教授ジネブラは銀行業をしていたベンチ家の娘で、ロレンツォ・イル・マニフィコの詩の中でうたわれている。ベンチ家は、一家をあげてメディチ家の新プラトン主義のサークルに出入りしていた。表情のこわばり、血色の悪さ、明瞭な輪郭線といった相違点はあるが、立体感、丸みを帯びたライン、奥行き、静寂などの点において、本作品は《モナ・リザ》を予告している。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《ジネブラ・デ・ベンチの肖像》裏面　1478～80年頃、テンペラ・板　38.1ｘ37㎝　ワシントン、ナショナル・ギャラリー
「美は徳を飾る」という銘文のある裏面の中央にある杜松（ねず、ジネブロ）は、モデルの名前に掛けてある。月桂樹と棕櫚の葉による円環が途中で切れているのは、この作品が下4分の1ほどで切断されたことを示している。裏面の最下部には剥離が見られるので、ここから下は切断時に既に損傷を受けていたのであろう。本作を1474年のジネブラの結婚式までさかのぼらせる説もあるが、様式の完成度からみてフィレンツェ時代最後の数年間の作とするのが妥当である。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《腕の習作》1474年頃　シルバーポイント　白ハイライト　紙　21.4ｘ15㎝　イギリス　ウィンザー城　王室図書館
《ジネブラ・デ・ベンチの肖像》の失われた切断部分に相当するデッサンとされる。右手は花の茎を持っているが、完成作には花は見えていない。

《ジネブラ・デ・ベンチの肖像》＋《失われた切断部分に相当するデッサン》合成画像（表面）《ジネブラ・デ・ベンチの肖像》＋《失われた切断部分に相当するデッサン》合成画像（裏面）美術散歩　管理人　とら