熱烈！傑作ダンギ クリムト ＠日曜美術館

今日の日曜美術館は「熱烈！傑作ダンギ クリムト」。今年没後百年を迎えるオーストリアの画家・クリムト。あでやかな金を使った表現で知られる。

番組は、クリムトの履歴を縦糸に、クリムトの傑作談義を緯糸に進行。スタジオに集結し、クリムトの魅力を語ったのは、クリムト好きの各界の著名人。【ゲスト】ファッションデザイナー・コシノヒロコ
【ゲスト】華道家・假屋崎省吾
【ゲスト】広島県立美術館館長・千足伸行
【司会】井浦新、高橋美鈴

ファッションデザイナーのコシノヒロコはクリムトの世界観に魅了され、仕事に影響を受けた。華道家の假屋崎省吾は反骨精神で革新的な作品を生み続けるクリムトに勇気をもらった。広島県立美術館館長の千足伸行は、現実の世界にとらわれない妖しい美にひかれるという。クリムトは、1862年、金細工職人の家に誕生。
クリムトの家族。
クリムトは、ウィン―ン美術史美術館の大階段の上に古典的な絵画（↓）を描いている。ウィーン大学講堂に描く三部作のうちの「医学」がスキャンダルを巻き起こした。あまりの論争の大きさにクリムトは契約の破棄を求め、事前に受け取っていた報酬を返却した。美術館および個人に売却された3枚の絵は、後にナチスによって没収され、1945年にインメンドルフ城において、親衛隊が撤退する際の放火により、没収された他の作品と共に焼失した（白黒写真および『医学』の習作が現存）。

クリムトは、1897年、伝統に縛られない「ウィーン分離派」を結成した。「ウィーン分離派宣言」は、「時代にはその時代の芸術を、芸術には自由を」Der Zeit ihre Kunst.Der Kunst ihre Freiheit.
生前、自分の作品についてほとんど語ることのなかったクリムト。その真意や魅力をゲストが三者三様に選んだ傑作をもとに語り尽くした。

假屋崎省吾が選んだのは《接吻》。クリムト以前に愛し合う二人を描いた作品はない。クリムトは、今までの美術の世界をを打破して、新しい描き方で新しい内容を描いた。今までの愛の表現には天使が登場している。例1《アモルとプシュケ》天使が登場するクリムト以前の愛の表現。例2《プシュケとアモル》箔画作家・野口琢郎さんの意見：箔の使い方が日本の昔からの表現に近い。人物付近が強く輝くように押してある。
また、抱き合ってキスをする二人を強調するために金の表現を変えている。

コシノヒロコが選んだのは《アデーレ・ブロッホ＝バウアーの肖像Ⅰ》クリムトは衣装のデザインにも興味を持っていた。かれは従来のコルセットで締め上げた衣装ではなく、ゆったりとした衣装をデザインしていた。
（↑）はクリムトのデザイン集であるが、クリムト自身が写真を撮り、日本の落款を模した署名（↓）をつけていた。
千足伸行が選んだのは、クリムトが1915年に描いた《死と生》。この頃、クリムトの金色の画はピカソやカンディンスキーのような新時代の美術から取り残されつつあった。若い人たちは、もはや私をりかいしていない。かれらは別な方向に進んでいる。若い人たちがそもそも私を評価しているかどうかも分からない。

《死と生》はそのような若いひとたちの絵画に対するクリムトの挑戦であった。

この画の現在はダークブルーになっている部分は、当初は金色にする計画だった。　
女子美術大学坂田勝亮教授曰く：周りが金だと「死」のほうが強いコントラストをもって現れてくる。
周りを暗くすることによって、死を迎えるまで抱き合って生を謳歌できることを表現できる。
司会の井浦新が選んだのはクリムトが晩年に描いた風景画。クリムトの晩年を支えたのは、愛人エミリーエ・フレーゲだった。エミーリエはクリムトの死後にクリムトと交わした手紙を全て処分し、生涯独身を貫いている。
クリムトの家には、多い時には15人もの女性が寝泊りしたこともあったという。何人もの女性が裸婦モデルをつとめ、妊娠した女性もいた。生涯結婚はしなかったものの、多くのモデルと愛人関係にあり、非嫡出子の存在も多数判明している。

1918年2月6日、クリムト死去。
私のことを知りたいと思う人は、私の画を注意深く見てほしい。私が何者で、何を求めているのか、画から知るように　努めてほしい。美術散歩　管理人　とら