第69回正倉院展 ＠日曜美術館

「正倉院展」は大阪出張中に一度見に行ったことがあるが（第62回）、そういう偶然がなければ「奈良国立博物館」までは行けないので、日曜美術館で正倉院展の主だった出陳作を紹介して頂くとありがたい（第68回）。

という次第で、今朝の日曜美術館で放映された番組「第69回正倉院展」をじっくりと見させていただいた。以下がそのメモである。

●緑瑠璃十二曲長坏　ガラスのさかづき　濃緑色で楕円形。鉛ガラス製で、発色は銅による。
ウサギの文様
長側面に沿って三段の縦ひだをつけることによって口縁部に十二の屈曲ができているので「十二曲杯」の名がある。底部

ペルシャの遺跡から類似の形の《鍍金銀人物八曲長杯》が出土している。今回展示されている《緑瑠璃十二曲長坏》は唐で制作された。

●犀角坏　サイの角のさかづき　インド製　犀の角は工芸品の材料として利用されるが、削って薬としても用いられる。
●槃龍背八角鏡　龍文様の鏡　唐からの将来品。中央に亀。
下部には蓬莱山。
●玉尺八　石製の縦笛　聖武天皇の遺品。現在の尺八とは穴が異なっている。
●漆槽箜篌　漆塗の竪琴
莫高窟の壁画に「箜篌」が描かれている。
この箜篌に欠けていた部品が正倉院内で発見され、番組内で実際に演奏された。まさに「天平の調べ」を聴くことができたのである。●碧地金銀絵箱　献物箱　国内産
箱の内側に貼られた布の橙色が日本独自の色であるところから、この箱が国産と判明した。●木画螺鈿双六　遊戯の盤　これも国内産。
●羊木臈纈屛風　ろうけつ染めの屛風　これも国内産。　「ろうけつ染め屏風」の一部。左扇が象木、右扇が羊木。
年号が書かれていたことが国産である証拠となった。
この天平の色の再現が試みられた。
試行錯誤の後に、黄色には「刈安」・赤色には「印度茜」・媒染剤には「椿の灰」が用いるのがベストであるとされた。
「巻き角の羊」は西アジアに生息する羊の原生種・ムフロン。ササン朝ペルシャではゾロアスター神の化身を表した。「巻き角の羊」の意匠の布が、西アジアから唐に運ばれ、さらに遣唐使によって日本に伝えられ、これは国内産の絹地へのろうけつ染めの見本となった。

●最勝王経帙　経巻のつつみ　竹ひごに紫と白の絹糸を全面に編んで迦陵頻伽などの文様や文字を織り出している。
当該経典の名前が白抜き文字で見えるので、天平14年（742年）に東大寺へ納められた「金字金光明最勝王経」を包んだものであることが分かる。唐花文錦の縁や帯、外巻き紐が付き、ほぼ完形に近い形で伝わっている。
●雑玉誦数　色ガラスの念珠

●伎楽面　迦楼羅
迦楼羅とは、インドの怪鳥「ガルーダ」のこと。現在もインドネシアの国営航空会社を「ガルーダ・インドネシア航空」と呼んでいる。
●伎楽面　酔胡従　酔っぱらったペルシャ人従者。
●伎楽面　呉公　中国・呉の貴族

【出陳宝物一覧】

美術散歩　管理人　とら