原爆の原料 ウラン採掘に知らずに動員された少年たち ＠ラジオ深夜便 2017/8/16

８月１６日（水）のラジオ深夜便の【戦争・平和インタビュー】で、福島県石川町　有賀究さんの「原爆の原料 ウラン採掘に知らずに動員された少年たち」を聴いた。

福島県石川町は、第二次大戦末期にウラン鉱産地として注目され、陸軍航空本部主導で、東京の理化学研究所が原爆の開発も行っていた。

「日本でもウラン爆弾を開発しよう」と、昭和16年頃から陸軍航空本部の指示で理化学研究所が研究したが、当時は日本でも出来ないのだから米国でも無理だろうと、本格的研究には入らなかった。

本格的な研究を始めたのは、昭和19年にサイパン島が陥ちて、日本本土も空襲の範囲に入ってから。戦況を挽回する秘密兵器をつくろうと考え、石川町に白羽の矢が刺さった。

理研は、昭和20年4月13日の大空襲で6割方の施設が破壊され、一部の工場が石川町に疎開し、原爆開発の研究が進められた。海外からのウランで、イエローケーキ（原爆製造用の濃度の高いウラン精鉱）がつくられたが、6月に開発は挫折した。

研究は中止になったが、陸軍は戦略物質としての希元素が欲しくて、中学生たちを使って、採掘を続けた。

当時、石川中学校（現学法石川高校）の3年生で、学徒動員でウラン鉱山の通称石川山で採掘作業をした、有賀究さんは当時の様子と、戦争、原爆、そして原発について次のように語っている。

私は、昭和20年（1945年）4月から、ウラン鉱採掘に学徒動員され、石川山に約10キロの道のりを歩いて通った。旧制中学校は5年制で、4、5年生は関東方面へ動員されていた。2年生だった3月末、先生から石川山に行くんだと言われた。目的は分からなかったが、家から通えるからよかった、と内心思った。

石川山では、朝8時から夕方4時まで、「月月火水木金金」と休みなく働いた。山の斜面をツルハシで崩して、岩を砕き、近くの石置き場までモッコを棒につるして、2人で運ぶ。目的も分からず、ただ炎天下、腹を減らしながら、言われた場所を掘って、石を運んでいた。

5月のある日に東京の参謀本部から、えらい将校が来て、「君たちに掘ってもらいたいのは、この石だ。これを原料にして爆弾を製造すれば、マッチ箱一つの大きさで、ニューヨークを一瞬にして破壊することができる。だから頑張れ」と激励された。

その時は、「お国のためだ。一生懸命やらなければ」と思った。当時はそういう教育だったし、日本全体が決戦に向けて頑張らなければという風潮で、当然やらなければいけないと思っていた。

８月になると、毎日のように石川町に米軍グラマン機が来襲、民家を機銃掃射し、小型爆弾を落として、太平洋上の航空母艦に戻って行った。いつ空襲されるか、不安な日が続いた。

8月６日、ラジオは「広島に大型の特殊爆弾が投下され多数の死傷者が出た」と報じた。私はその放送を聞いて、「あのマッチ箱の爆弾のことだな」と直感した。

この日で原爆の原料掘りは終わった。日本製の原爆製造が、人口２万人余りのわが町で幻に終わったのは幸いだった。

8月15日、天皇陛下の玉音放送を聴き、敗戦を知った。戦中は、ひたすら勝利を信じていたが、負けてしまった。だから、私は「お上」の言うことは素直に聞かない、疑ってかかる体質になった。私だけではなく、多くの人が国に不信感を持った。

国の政策で行われた、原爆開発の研究の一端に参加させられたのは、日本では石川の私たちだけだろう。石川でも、若い人はここで原爆がつくられようとしていたのは知らないので、事実を知って欲しい思いから、自分が関わった原爆開発の話を後世に伝えようと努力している。

戦争や原発について事実をきちんと学ぶことが、大人も子どもも必要で、疑問を持つ能力や考える力を養うことが大切である。学力競争ばかりではなく、連帯して人間を大切にする教育も必要である。

これからの社会は、本当のことを言い、本当のことを行う人を大切にしていかなければいけないのではないか。

美術散歩　管理人　とら

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