太田記念美術館 で「妖怪百物語」展を見てきた。

「
和漢百物語」と「
新形三十六怪撰」は全点展示されていた。これらは、それぞれ別ブログ記事とし、ここではそれ以外の作品について述べることとする。
【展覧会の構成】
第一章 初期の妖怪画 No.1-16 主会場=一階
第二章 和漢百物語 No.17-42 主会場=二階
第三章 円熟期の妖怪画 No.43-66 主会場=二階
第四章 新形三十六怪撰 No.67-102 主会場=地下
【第一章】《桃太郎豆蒔之図》恵比寿と大黒が酒を飲む中、桃太郎が豆まきして鬼たちを追い出そうとしている。背後には暗闇の中に異形の妖怪たちが浮かびあがっているが、こちらも桃太郎の投げた豆にあわてふためいている。

《楠多門丸古狸退治之図》楠正行が庭に怪しい妖火を目撃したため、小姓の竹童丸とともに仕留めたところ、正体は大狸であった。

《和漢獣物大合戦之図》日本軍と中国軍の動物の戦争。兵士はそれぞれの国でおなじみの動物数種類。

日本軍の大将は黒熊で、中国軍の大将は白象。黒熊は源氏の笹竜胆の紋付を着ている。

《通俗西遊記 混世魔王 孫悟空》悟空が仙術の修行のために留守にしていたすきに、水簾洞を占拠しようとしていた混世魔王に悟空が戦いを挑む。悟空は引き抜いた自分の毛に、息を吹きかけて沢山の子猿を作るという「身外見の法」によって、魔王の身動きを止め、魔王から奪った刀で一刀両断に斬り捨てた。

《岩見重太郎兼亮 怪を伺う図》豊臣秀吉に仕えた戦国時代の武将「岩見重太郎」が若い頃に武者修行として肥後国宇土を訪れた際、邪神の「狒々」を倒して、生贄になろうとしていた女性を救い出したという逸話を描いている。

《於吹島之館直之古狸退治図》番旦右衛門直之こと塙団衛門直之は戦国時代の武将で、加藤嘉明や小早川英秋、福島正則に仕えた。本図は、福島正則の屋敷に出た妖怪を退治したという逸話を絵画化したもので、禿や山伏らしき扮装の数多くの異形の妖怪が直之の目の前に現れるが、直之は動じることなく凝視している。画面右、小姓を従えて様子を窺いに来たのは「吹嶋左ェ門正則」こと福島正則である。

《美勇水滸伝 大蛇丸 高木午之助》(右)の大蛇丸は盗賊。更科家の田毎姫に懸想した大蛇丸が思いを遂げるため、龍王ヶ瀧で離魂の法を修行する場面。(左)の高木午之助は武芸に秀でた男。古寺に巨大な顔の妖怪が現れたが、午之助は全く動じるところがない。

《美勇水滸伝 高木虎之介忠勝 六本杉之助則房》(右)の高木虎之介忠勝は全国武者修行の中、さまざまな妖怪や怪物を退治する。図は、洞窟にいる山女を倒す場面。(左)の六本杉之助則房は邪魔の井翁から妖術を学ぶ。後に飛行が自由にできる盗賊の首領になり、天狗次郎苦羅松と称した。

《魁題百撰合相 金吾中納言秀秋》関ケ原の戦における小早川秀秋の寝返りについて、大谷刑部(上)の祟りに怯える小早川秀秋(下)。

《一魁随筆 托塔天王晁葢》晁葢は「水滸伝」の登場人物。妖怪を鎮めるための巨大な宝塔を一人で運ぶほどの怪力で知られるが、本図の主眼はその背部に描かれたユーモラスな妖怪たちである。
【第三章】《郵便 報知新聞 第六百六十三号》神田福田町の大工の棟梁の家に、毎晩十二時ごろになると、真っ黒な坊主が現れて寝ている女房の顔を嘗め回した。親戚の家に泊まると出てこないのだが、家に戻ると元のように現れたという。明治8年5月9日付の新聞記事に基づく。

《和漢奇談鑑 佐倉宗吾 酒呑童子》(上図)は、堀田氏の悪政を幕府に訴えたため磔刑に処された「佐倉宗吾」が堀田氏に祟ったという伝承に基づいている。血まみれになった佐倉宗吾が堀田氏の屋敷に現れて、女中たちを驚かせている。(下図)に描かれたのは、大江山に住む「酒呑童子」で、俎板に載った人間の生首を一人静かに楽しそうに眺めている。

《不知藪八幡之実怪新容六怪撰》下総国の八幡の藪は禁則地で、一度入ると出られなくなると伝えられていた。その真実を確かめるべく水戸黄門光圀が藪に入った。本図には、そこで光圀が出会った妖怪たちが描かれている。

《平清盛炎焼病之図》体が燃えるような熱病に苦しむ平清盛。水風呂に入っても、水がお湯になり、水をかけても蒸発してしまう。「平家物語」には「その様子は、法蔵僧都が閻魔大王に連れていかれた焦熱地獄以上のものであった」とされている。背景には閻魔や獄卒の鬼、小野篁の姿が浮かび上がる。

《芳年武者无類 相模守北條高時》北條高時は鎌倉時代末期の執権で、闘犬や田楽を好んだ暗君。「太平記」によれば、酒に酔って田楽に興じていた高時のところに、大勢の天狗たちが現れ、高時を愚弄した。本図では、山伏姿の天狗たちが、嘲り笑うようにして高時の周りを舞っている。

《芳年存画》邪鬼と窮鬼に怯え、袋の後ろに身を隠す恵比寿と大黒。教訓的意味を含んでいるとされる。

《祐天不動の長剣を呑む図》物覚えの悪かった祐天は、経典を暗記できなかったので、成田山新勝寺で断食修行をした。満願の前夜、夢に不動明王が現れ、英知を得るために「長剣を呑むか、短剣を呑むか」の選択を迫られる。長剣を呑むことを選んだ祐天は、翌朝血まみれで倒れているところを発見されたが、祐天の記憶力は見違えるほどに向上していた。図は、長剣を祐天の喉に突き刺そうとする不動明王。これを見守る両脇の矜羯羅童子と制多迦童子。背景は黒雲が漂う夢の中の空間。

《日蓮上人石和河にて鵜飼の迷魂を済度したまふ図》禁漁の罪により殺された鵜飼が、亡霊となって日蓮上人の前に現れる。日蓮の供養により鵜飼は無事成仏することができた。

《金太郎捕鯉魚》大版竪2枚続。巨大な鯉の背中にしがみついている金太郎。育ての母の美人の山姥が岩場から様子を窺っている。

《奥州安達がはらひとつ家の図》大版竪2枚続。再見。老女「岩手」の住むあばら家に、「生駒之助」と「恋絹」という夫婦が一夜の宿りを求めてやってきた。岩手は前九年の役で没落した安倍氏の生き残りで、幼い天皇の弟である「環の宮」の病気を治すために、胎児の血を必要としていた。そこで、岩手は生駒之助が家を離れた隙に、身重だった恋絹を殺害するのだが、この恋絹は岩手の実の娘だった。明治政府により風紀を乱す絵とみなされ発禁処分になった。

《袴垂保輔鬼童丸術競図》大版竪2枚続。袴垂保輔と妖術遣いがその技を競い合う場面。(上)が保輔、(下)が鬼童丸である。保輔が山を炎で包むと、鬼童丸は大水を起こして炎を消す。鬼童丸が巨大な毒蛇を呼んで保輔に襲いかからせると、保輔は妖鳥をそれに対抗させた。この図では、保輔は毒蛇に乗っているように描かれている。

《平維茂戸隠山鬼女退治之図》大版竪2枚続。戸隠山で平維茂は美女「紅葉」たちにもてなされた。しかし水に写った女の姿が鬼女だったので、それと気づき鬼女「紅葉」を退治した。【参照】
紅葉伝説
《羅城門渡辺綱鬼腕斬之図》大版竪2枚続。源頼光四天王の一人である「渡辺綱」は、鬼が棲むという羅生門に一人で赴く。豪雨の中を訪れた証拠として金札を立てようとしたところ、朱色に柱にしがみつく「茨木童子」という悪鬼が出現した。綱の兜を掴もうとする童子に対し、綱は刀を抜いてその右腕を切り落とした。

【参照1】
没後120年記念 月岡芳年(前期)@太田記念美術館 【参照2】
没後120年記念 月岡芳年(後期)@太田記念美術館美術散歩 管理人 とら