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これは2017年7月30日放送の日曜美術館「漆 ジャパン 一万二千年の物語~日本の漆文化をさぐる」のメモである。
【番組の前宣】 西欧を魅了した漆の美。漆器が「ジャパン」と呼ばれるほどだった。漆文化は日本でどのように育まれたのか?最近考古学の発見が相次いでいる。浮かび上がる意外な歴史とは?王妃マリー・アントワネットからも愛された日本の漆器。西欧の人々は陶磁器を「china」と呼ぶ一方で漆器を「japan」と呼んで親しんだ。今、漆を巡って、考古学、植物学などの新発見が相次いでいる。そこから解明される漆文化の姿とは?福井では最古の漆の木が発見され一万二千年前のものとわかった。また、京都の遺跡では漆器の意外な製法が明らかに。はるか縄文の昔から続く知られざる漆の物語を名品の数々と共にたどる。 (出演)国立歴史民俗博物館教授・日高薫、国立歴史民俗博物館准教授・工藤雄一郎、龍谷大学教授・北野信彦(司会)井浦新、高橋美鈴 【関連展覧会】URUSHIふしぎ物語-人と漆の12000年史-@国立歴史民俗博物館 2017年7月11日(火)~ 9月3日(日) 1.縄文時代 ![]() 以上が、今回の放送の説明である。 一方、この研究成果が発表された原著はこちらで読める。 短報 鈴木三男・能城修一・小林和貴・工藤雄一郎・鯵本眞友美・網谷克彦: 鳥浜貝塚から出土したウルシ材の年代: 植生史研究 21(2): 67-71, 2012(10). Abstract Urushi is the lacquer produced by Toxicodendron vernicifluum. In Japan, Urushi products is known since ca. 9000 years ago from a remain at the Kakinoshima B site and became common since the early Jomon period. Archaeological woods of T. vernicifluum, however, had not been reported until ca. 10 years ago, when identification of its woods from those of close allies was made possible. Since then, re-identificaiton of excavated woods revealed that T. vernicifluum was commonly grown around settelments since the early Jomon period, but also indicated the existence of a sample of the incipient Jomon period from the Torihama Shell Midden site, Fukui Prefecture, which is too old to be considered as an introduction from the Asian continent to Japan. Here, we measured the radiocarbon age of this sample as 10,615 ± 30C BP (12,600 calBP) in the incipient Jomon period, 3600 years before the oldest remain at the Kakinoshima B site. Most botanists consider that T. vernicifluum is not native and introduced to Japan by ancient people. Thus, the presence of T. vernicifluum wood in the incipient Jomon period seems to mean that Urushi was introduced from the Asian continent already in that period. 原著の「結論」を引用したいところであるが、原著には「結論」が記されていないので、原著の「最後の一節」を引用してこれに代える。 このように縄文時代早期の後半~前期初頭頃まではウルシ植物遺体と漆製品は確実に遡るが,鳥浜貝塚のウルシ材の14C 年代は飛び抜けて古い。中国で一番古い跨湖橋遺跡の河姆渡文化期の「木弓」は上下の包含層の木材の年代よりおよそ7500 ~ 7400 cal BP とされている(浙江省文物考古研究所・粛山博物館,2004)。元々日本列島にウルシが自生していたとすれば中国の漆製品よりどんなに古くても別に問題とするには当たらない。しかし,その「古さ」以外に「ウルシが元々自生していた」とする論拠となるものが何も無い中で,安易に自生説に組みするのは問題があると言わざるを得ない。今後の更なる探求が必要である。 この原著の本文を自分で読んで得た「結論」は、以下のようである。 1.木片は二つあった。 2.木片の一つはウルシ材で、他の一つはヤマウルシ材であった。 3.検査方法は、従来から行われている炭素同位元素(C14)法である。 4.ウルシ材片の年代は12,600年、ヤマウルシ材片の年代は13,000年であった。 5.当時日本でヤマウルシが自生していたという証拠はないことに留意すべきである。 いずれにしても、鳥浜貝塚から出土した史上最古とされるウルシ材は、ウルシと漆文化の起源を探るための貴重な資料であり、現在は福井県立若狭歴史博物館で保管されている。 ![]() 漆は樹液を採取するまでに10~20年の歳月がかかり、「ウルシ掻き」によって一本の樹からは200mlしか採取できない。また何度も塗り重ね、乾かす作業が必要なためとても手間がかかる。 ![]() ![]() ・《漆液容器》青森県亀ヶ岡遺跡出土 (国立歴史民俗博物館 縄文時代晩期) ![]() ![]() ![]() 遣隋使や遣唐使によって、大陸から洗練されたウルシの技術が輸入された。ウルシに貝殻を用いた「螺鈿」は正倉院にも所蔵されている。 ウルシは興福寺の阿修羅像などの「乾漆技法」にも使われた。X線CT検査で得られた阿修羅像の3次元画像(↓)を見ると、内部は木を組んだだけだが、外側には漆で固めた麻布の薄い層(↓)が見られる。 ![]() ・《乾漆伎楽面 酔胡従》(東京国立博物館 奈良時代) ![]() 金粉や銀粉を使う「蒔絵」は元来大陸から輸入された技法であったが、その後日本で大きく発展し、中国に輸出するまでになっていた。 ・《片輪車蒔絵螺鈿手箱》(東京国立博物館 平安時代):蒔絵と螺鈿とを組み合わせた技法が使われており、平安貴族の美意識を表す和様デザインの極致である。 ![]() 平蒔絵・高蒔絵・研出蒔絵という現代に伝わる蒔絵の手法は鎌倉時代に確立された。 室町時代には将軍の庇護のもとで多くの名工が活躍し、高蒔絵と研出蒔絵を併用したより豪奢な肉合蒔絵等の新技法が誕生し、数多くの名品が生まれた。 ・《紙胎漆塗彩絵華籠》(愛知・萬徳寺 鎌倉時代):径24cm、高3.9cm。この華籠は、木型に10枚前後の紙を貼り重ねて成形し、型抜きの後黒漆を全面に塗布して固めた紙胎黒漆塗製。内面のみは胡粉地にして緑青、紅などによる華麗な八葉蓮華文をあらわし、その花弁の間からは金箔押し墨線輪郭の力強い三鈷文をのぞかせる。なお成形後、縁と花弁と三鈷で形成される区割を切り透し、単調な形姿に変化を求めているのが興味深い。 ![]() 日本のウルシ製品がウルシの採れないヨーロッパに輸出された。宮廷などで好評を得て、磁器がchainaと呼ばれたように、漆器はjapanと呼ばれるまでになった。 とくに研出蒔絵や螺鈿の装飾が施された後、葉脈や人の表情といった微細な表現を平蒔絵であらわす「付描(つけがき)」という技法が好評であった。 また日本の貝殻を用いたウルシの「櫃」(↓)の場合、その台座にはカイガラムシを用いたヨーロッパ製のものが使われることもあった。 ![]() ![]() ![]() ・《タイ産四耳壷・同破片》(京都市考古資料館 17世紀前~中期頃):2004年、京都の中学校の工事の際に、平安京左京三条四坊十町跡遺跡から、黒くてつややかなウルシを塗った壺が出土し、その側からは、刷毛や箆のような道具も出てきた。 ![]() 7.江戸時代 ウルシ製品はオランダやイスラムへ輸出され、国内では蒔絵を用いた印籠などに使われた。 ・《鴨蒔絵螺鈿印籠 銘「観」》(国立歴史民俗博物館 江戸時代):1924年に行われたルイ・ゴンスのコレクションの売立目録に写真入りで掲載された印籠。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ウィーン万国博覧会に出品された「芝山細工」が有名であるが、これは角や貝などを染色し、各種の文様に切って彫刻を加え、漆器や漆塗りの屏風、額などの地板に象眼(ぞうがん) したもの。江戸時代末期に下総芝山の大野木専蔵 (のち芝山仙蔵と改名) が考案したといわれ、明治期には盛んに輸出された。 ![]() 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2017-07-31 11:13
| 国内アート
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