ボストン美術館の至宝展 ＠東京都美術館

東京都美術館で今日から開かれている「ボストン美術館の至宝展―東西の名品、珠玉のコレクション」を見てきた。上野動物園でのパンダ出産を記念した「うえのビジョン」のスクリーンにも、「ボストン美術館の至宝展」のPR画面が映っている。展覧会の構成　この展覧会の構成は、以下のような重複構成である。Ⅰ　異国を旅したボストニアンたち

１．古代エジプト美術：1905年から40年間、ボストン美術館はハーバード大学と共同で、ジョージ・ライスナ～博士（1867~1942)の指揮下に、エジプトと北スーダンで発掘調査を行い、4万点以上を米国に持ち帰った。現在は、古代エジプトの美術収集は、発掘ではなく、寄贈や購入で行っている。

２．中国美術：1894年、京都・大徳寺に伝来していた南宋時代の《五百羅漢図》が、寺の修復のためボストン美術館で展示されたのをきっかけとして、中国美術の収集集が本格化した。清朝末期の混乱の中で美術品が失われる恐れががあったため、顧問役としてボストン美術館に招かれた岡倉天心は、1905年に中国および日本美術収集のための特別基金設立を願い出ている。

３．日本美術：アーネスト・フェノロサ(1853~1908)やウィリアム・ビゲロー(1850~1926)の努力のお陰で、ボストン美術館の日本美術コレクションは約1万点に達している。

Ⅱ　「グランド・ツアー」－ヨーロッパ美術を集めたボストニアンたち

４．フランス絵画:ヨーロッパに渡ったボストンの富裕層が、当時評価の定まっていなかったモネ・ルノワール・ドが・ゴッホらの「前衛画家」に注目した。ボストンでは、とりわけモネの人気が高く、油彩・パステル・素描をあわせた38点が所蔵されている。

Ⅲ　アメリカン・ドリームー自国の美術を収集するボストニアンたち

５．アメリカ絵画

Ⅳ　同時代の美術へー未来に向かう美術館

６．版画・写真
７．現代美術


お気に入り作品　章別に挙げていく。

１．古代エジプト美術

・《ツタンカーメン頭部》新王国時代、第１８王朝：　個人からの寄付金で1911年に購入された。
２．中国美術

・徽宗《五色鸚鵡図巻》北宋：文字は痩金体で書かれている。　　　　　　　　　　　　　　　　　花は杏
・馬遠《柳岸遠山図》南宋：馬遠は、夏珪と同様に、山水を描く際に画の一角のみに風景を描いて、広い余白を設けた（「辺角の景」）。・夏珪《風雨舟行図》南宋・周季常《五百羅漢図・施財貧者図》南宋：林庭珪・周季常の《五百羅漢図》百幅本は、明兆筆の《五百羅漢図》東福寺45幅（うち20幅は京都国立美術館に寄託）・根津美術館2幅の原本である。・周季常《五百羅漢図・観舎利光図》南宋
・陳容《九龍図鑑》南宋： 長さ10メートルに近い画面に９匹の龍が舞う名品。かって清の乾隆帝が愛蔵していたが、国外に流出し、19017年に東洋美術愛好家による基金でボストン美術館に収蔵された。

（↓）湧きあがる雲の中から最初の龍が登場。4本爪である。（↓）流れる雲の中の龍は珠を掴んでいる。（↓）右側の老いた龍が、左の若い龍を特訓中。３．日本美術

・《鼠志野草文額皿》桃山～江戸時代：茶事に使われたと思われる優雅な皿。・野々村仁清《銹絵鳰形香合》江戸時代・尾形乾山・尾形光琳《銹絵観瀑図角皿》宝永７年・英一蝶《涅槃図》正徳3年 2.9m X 1.7m：フェノロサが収集。ボストン出身の彼の友人がフェノロサから買い取り、自分の死後にボストン美術館に渡るようにした。今回、約170年振りの本格的修理を経て里帰りしている。A:釈迦 　B: 仏鉢　C:錫杖　D:満月　 E: 沙羅双樹　F: 跋提河　 G: 摩耶夫人　H: 阿那律　I: 阿難　J:純陀　 K:阿修羅　１：ミミズク　2：スズメ　3：猿　4：迦陵頻伽　5：チョウ　６：コウモリ　７：犬　８：サイ・曽我蕭白《風仙図屏風》宝暦14年～明和9年頃　再見：巨大な蛸の脚のような怪物・蛟龍を道士・陳楠が退治しようとしているところ。・曽我蕭白《飲中八仙図》明和7年頃・酒井抱一《花魁図》江戸時代：この画を所蔵していた河鍋暁斎は、明治16年4月7日の日付けで「歌川豊寛の筆也　歌川家之元祖なり」との改文を書き込んでいる。
・喜多川歌麿《三味線を弾く美人図》文化元年～3年頃・司馬江漢《秋景芦雁図》江戸時代：長崎経由の西洋画から学んだと思われる作品で、近景を大きくして、遠くに地平線を描いている。雲も日本絵画のものではない。顔料には油を混ぜている。・与謝蕪村《柳堤渡水・丘辺行楽図屏風》江戸時代

柳堤渡水図↓丘辺行楽図↓
４．フランス絵画

・ミレー《編み物の稽古》1854年頃・モネ《睡蓮》1905年・モネ《くぼ地のヒナゲシ畑、ジヴェルニー郊外》1885年
・モネ《アンティーブ、午後の効果》1888年・ドガ《腕を組んだバレーの踊り子》1872年頃・ファンタン＝ラトゥ―ル《卓上の花と果物》1865年　再見・ルノワール《陶製ポットに生けられた花》1969年頃・シスレー《卓上のブドウとクルミ》1876年・セザンヌ《卓上の果物と水差し》1890～94年頃・ゴッホ《郵便配達人ジョセフ・ルーラン》1888年：1935年、アメリカ独立宣言署名者の子孫・ロバート・ペイン2世(1861~1943)が寄贈。ゴッホは同名の作品を6点描いている。・ゴッホ《子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人》1889年　再見：1948年に、砂糖製造業者・ジョン・スポルディング(1870~1948)か寄贈。ゴッホによる同名の作品が4点ある。

５．アメリカ絵画

・フィッツ・ヘンリー・レーン 《ニューヨーク港》 1855年頃 ・サージェント《ロベール・ド・セヴリュー》1879年・サージェント《フィスク・ウォレン夫人（グレッチェン・オズグッド）と娘レイチェル》1879年：夫人の右側に描かれたレイチェルが、のちに本作を相続し、彼女の協力によって、1965年ボストン美術館に収蔵された。
・オキーフ《グレーの上のカラー・リリー》1928年
・オキーフ《赤い木、黄色い空》1952年

６．版画・写真

・ウィンスロー・ホーマー《海難》1888年・エドワード・ホッパー《機関車》1923年・アンセル・アダムス《白い枝、モノ湖》1947年：アンセル・アダムスの作品は、ウィリアム・レーン（1914~1995)とその妻ソンドラ（1938~)が多数寄付している。【参考】アンセル・アダムス・ギャラリー

７．現代美術

・アンディ・ウォ―ホル《ジャッキー》1964年頃：ウォーホルは、1963年に起きたケネディ大統領の暗殺事件後に、広く配信された大統領夫人ジャクリーンの写真をもとに複数の肖像画を制作し、それらを組み合わせて作品にした。・デイヴィッド・ホックニー《ギャロビー・ヒル》1998年・村上隆《If the Double Helix Wakes Up...》2001年：《DNAの二重螺旋が覚醒したら...》という空想的作品。過去のボストン美術館展　今回の展覧会に再出品されている作品が少なくなかった。

・ボストン美術館　肉筆浮世絵展　江戸の誘惑　＠江戸東京博物館　⇒こちら

再出品作品：喜多川歌麿《三味線を弾く美人図》

・ボストン美術館 日本美術の至宝　＠東京国立博物館　⇒こちら

再出品作品：曽我蕭白《風仙図屏風》

・ボストン美術館 日本美術の至宝（再訪）　＠東京国立博物館　⇒こちら

・ボストン美術館　華麗なるジャポニスム展　＠世田谷美術館　⇒こちら

再出品作品：ゴッホ《子守唄・揺籠を揺らすルーラン夫人》

・ボストン美術館展Ⅰ　多彩なる肖像画　＠森アーツセンターギャラリー　⇒こちら

・ボストン美術館展Ⅱ　宗教画の運命　＠森アーツセンターギャラリー　⇒こちら

・ボストン美術館展Ⅲ　オランダの室内へ　＠森アーツセンターギャラリー　⇒こちら

・ボストン美術館展Ⅳ　描かれた日常生活　＠森アーツセンターギャラリー　⇒こちら

・ボストン美術館展Ⅴ　風景画の系譜へ　＠森アーツセンターギャラリー　⇒こちら

・ボストン美術館展Ⅵ　モネの冒険　＠森アーツセンターギャラリー　⇒こちら

・ボストン美術館展Ⅶ　印象画の風景画　＠森アーツセンターギャラリー　⇒こちら

・ボストン美術館展Ⅷ　静物と近代絵画　＠森アーツセンターギャラリー　⇒こちら

再出品作品：ファンタン=ラトゥール《卓上の花と果物》

・ボストン美術館　浮世絵名品展　＠江戸東京博物館　⇒こちら

・ボストン美術館浮世絵名品展ー錦絵の黄金時代　＠山種美術館　⇒こちら

美術散歩　管理人　とら