記事ランキング
ブログパーツ
最新のトラックバック
外部リンク
以前の記事
2021年 01月 2020年 11月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 more... カテゴリ
全体
国外アート 西洋中世美術 ルネサンス バロック 印象派 印象派後期 現代アート(国外) 東洋アート 仏像 国内アート 江戸絵画(浮世絵以外) 浮世絵 近代日本美術 戦争画 現代アート(国内) アート一般 書籍 音楽 映画・写真 講演会 北海道の鈴 東北の鈴 関東の鈴 中部の鈴 関西の鈴 中四国の鈴 九州の鈴 ヨーロッパのベル アジアのベル アメリカのベル オーストラリアのベル 未分類 フォロー中のブログ
検索
その他のジャンル
ファン
ブログジャンル
画像一覧
|
2017年6月27日の朝日新聞夕刊に、”歌麿「雪月花」140年ぶり競演-謎多き肉筆三部作 米で同時展示実現”という記事が載っていた。(↓)はその写真であるが、この「喜多川歌麿展」は、休館中の「フリーア美術館」に隣接する「アーサー・M・サックラー・ギャラリー」で、7月9日まで開催中とのことである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 展覧会「新しい歌麿の出現ー日本の傑作の再発見」(Inventing Utamaro - A Japanese Masterpiece Rediscovered)は、2017年4月8日 - 7月9日、サックラー 地下1階(Sackler sublevel 1)で開催される。 概説(Overview) 歌麿(1753‐1806)は、伝説的でありながら謎の多い画家である。 箱根・岡田美術館の2014年の発表は、世界の美術界を驚かせた。 この新しい美術館が、長らく失われていた喜多川歌磨の肉筆画「深川の雪」を発見したと発表したのである。 「深川の雪」という題の大きな作品は、有名な江戸の遊郭を理想化して表現した3点の画の一つである。 1903年、フリーア美術館創設者チャールズ・ラング・フリーアは「品川の月」を取得した。 ほぼ140年の空白期間を経て再発見されたこの歌麿3点は、そのすべてのオリジナルを展示することが可能なフリアー・サックラーで再会することとなった。 この展示は、20世紀末における収集と鑑識という文脈において、これらの画や歌麿自身をめぐる多くの疑問点を探るものとなっている。 展示について(About the Exhibition) 2014年に岡田美術館が「深川の雪」を再発見したと発表するや、数日内にワズワース美術館とフリアー・サックラー美術館が連絡を取り始めた。 「雪」が岡田に、「吉原の桜」がワズワースに、「品川の月」がフリアー・サックラーに分蔵されるという事態になったからである。 非常に短期間で、関係者間で合同展示の開催に向けて努力することが合意された。 ワズワースとフリアー・サックラーのスタッフが日本に赴き、再発見された画を観て、この合同展示実現の方策を探り始めた。 2015年12月には、3美術館のスタッフがフリアー・サックラーに集まって、合同展示計画をさらに進展させた。 「雪月花」のすべてを各美術館に集めるのが理想的なのであるが、フリアー・サックラーの創設者が所蔵作品の貸し出しを禁じていたので、「月」の高精細複写画を代役として作り、ワズワースと岡田で使用することとなった。 複雑なスケジュールや貸与条件の調整を行うため、各美術館がそれぞれの展覧会開催を進めていくこととなった。 【註】岡田美術館では「深川の雪と吉原の花」展(↓)を、2017.7.28~10.29に開催。「品川の月」は原寸大の高精細複製画を展示。 「新しい歌麿」の出現は一定の結論をもたらすものではないが、歌麿という日本の伝説的アーチストとその作品を再検討し、これらを取り巻く空想と現実についてさらに子細な検討を行う機会を与えてくれるものである。 歌麿とその作品の展示は、二つの重要な時点からスタートしている。 一つは「雪月花」が制作された1780年代後期~1800年代初期であり、他の一つは「雪月花」がパリに出現して熱狂的歓迎を受けた20世紀初頭である。 第一は、歌麿の生存中(1753–1806)の出来事である。今回のキュレーターの一人は歌麿作品の最新研究に基づいて、この時点では遊郭の楽しみに精通していた版元の蔦屋重三郎が歌麿の作品を売り出していて、歌麿の楽しい作品がすでに有名になっていたことを明らかにしている。 蔦屋は、遊郭の画をこの世界に精通した人間に描かせることによって、遊里の「美と官能」を正確に表現させた。このことによって「歌磨ブランド」が成立したのである。 第二は、20世紀末のパリである。展覧会で検討するように、1890年代初期のパリには歌麿作品への渇望があった。 歌麿没後ほほ1世紀後には、ディーラー・コレクター・アーチスト・専門家たちが、歌麿作品が日本の遊郭の実情を示す微妙な記録であると認めている。 今回の「新しい歌麿」の展示では、パリ市民が新しい美術様式や日本の作品販売にまとわる虚飾と遭遇していく状況が示されている。 「エキゾチックな幻想を求める日本とパリのマーケットとの出会い」の初めには、「雪月花」がなぜ制作されたか、どのような状況で100年過ぎてから再出現したのかを示した。 ギャラリーに続く展覧会の主会場には、今回の目玉の3作品を展示した。 最近の知識では、歌麿の信頼できる署名・捺印がある作品は約50点存在している。「雪月花」には署名や捺印はないが、歌麿の作風のものと認めるものが多い。 理想的な展覧会であれば、歌麿作であることが明らかな版画、版本、肉筆画をできるだけ多く集め、その中央に「雪月花」を置くこととしただろう。 これは実現不可能な企画だが、より少ない数の作品を使って類似の試みを行ったことはある。その際には「雪月花」と歌麿の版画に並べて、歌麿とその工房が新しいデザイン制作にモチーフを再利用していたことを示唆した。 最後のギャラリーでは、20世紀初頭の数年間におけるチャールス・ラング・フリアーの日本絵画収集について検討した。 歌麿の作品の他に、他の画家の美人画や誤って歌麿の画とされていたものを集めてみると、フリアーの収集の動機や難問についてヒントを得ることができる。 フリアーは、ホイッスラーの助力下に、あるいはもう一人のお気に入り米人アーチストのトーマス・デューイングに教唆されて、歌麿やその同僚が描いた日本婦人像を世界的な理想像につながるものと見なしていた。 二人のキュレーターは、展覧会プランを進めていくにしたがい、「幻想世界」と「現実世界」の両者を示すべきだという考えになってきた。そこでこの展覧会ではこの二つの動機を提示している。 美的な「幻想」だけに耽溺すれば、年季奉公による性的強制労働というより暗い「現実」を無視することになるので、「雪月花」の真の問題点についても言及するように留意したのである。 この展覧会の最後には二枚の写真を提示した。 一枚は、明治時代の写真で、吉原の女性が木枠の向こうにディスプレーされているもので、歌麿の版画ではもっと肉付き良く表現されている。写真の女性はポーズを取っているが、この女性の陰鬱な表情やこの企業全体の恥知らずさを隠蔽してはいない。 他の一枚は最近撮られたものであるが、数千の若くして(多くは21歳までに)この苛烈な「職業」で亡くなった女性に捧げられた大きな慰霊塔(モニュメント)の写真である。彼女たちの遺体について、家族からの返還要求はない。 【註】上記の写真に関する文章については、念のために元の英文を引用しておく。 We chose to close the exhibition with two photographs. One, from the Meiji era, shows women of the Yoshiwara “on display” behind the wood slats more glamorously depicted in Utamaro’s prints. The photograph, although surely posed, cannot disguise the women’s dour expressions and the wretchedness of the whole enterprise. The other image, taken recently, shows a large monument in Tokyo dedicated to thousands of women who died young (most by age twenty-one) in this harsh “trade.” Their remains were unclaimed by their families.【註】上述の朝日新聞夕刊の記事では、二枚目の写真については言及がなく、”一方で、「浮世絵で夢の世界のように描かれる」吉原の現実を示す解説や、明治になってからの写真(一枚目の写真のこと)も展示し、美化を抑制している”としている。 一般の歌麿芸術と同様、「新しい歌麿」も「美と悪徳」・「事実と虚構」・「幻想と残忍な現実」の混合である。 この展覧会が、ご覧になった方々の好奇心を刺激し、日本のこの伝説的芸術家とその世界、そしてわれわれの彼の作品への期待について再考していただければ幸甚である。 コ・キュレーター ジェームス・ユーラク(James Ulak, senior curator of Japanese art) ユリー・ネルソン・デービス (Julie Nelson Davis) 【参照】歌麿の最高傑作 深川の雪 @NHK歴史秘話ヒストリア 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2017-06-30 13:05
| 浮世絵
|
ファン申請 |
||