山口晃「ヘンな日本美術史」

山口晃「ヘンな日本美術史」を図書館で借りてきて読んだ。山口晃画伯については、今までに数多くのブログ記事やホームページ記事を書いている（文末参照）。

この書物には、沢山の画像が載せられているが、初見のものもあれば、再見のものもある。ということで、掲載画像を以下にまとめてアップすることとした。

第一章　日本の古い絵－絵と絵師の幸せな関係

【鳥獣戯画】再見。

　各巻に対する山口氏のまとめ（↓）

・甲巻＝動物の擬人化で人を描く
・乙巻＝動物をそのまま描きながら空想の世界に突入
・丙巻＝そのままの人間と擬人化された動物を一緒に描く
・丁巻＝人間をそのまま人間として描く

【白描画】

・《隆房卿艶詞絵巻》第一段「のどかに」国立歴史民俗博物館蔵：初見。木の幹を文字を使って表している。

・《尹大納言絵巻》女巻　福岡市美術館　初見。女性二人の会話の場面だが、人物の配置と文字の位置が独特。
・《枕草紙絵》個人蔵　初見。アラベスクな部分がまず目に入り、線に沿って見ていくと次第に有機的な人体のフォルムになり、御簾のたわみになる。
【一遍聖絵】清浄光寺蔵　別場面再見。絹本では、白の使い方が絵の成否を握る。
【伊勢物語絵巻】別場面再見。装飾的で、調度品的色彩が強い。【伝源頼朝像】再見。顔は実物を見ながら描いたが、顔以外は後で描いたのだろう。顔の部分は裏彩色されていて、白が浮き出るように見える。
第二章　こけつまろびつの画聖誕生－雪舟

《破墨山水図》再見。理想の風景と思っていたものが、中国では実景として存在することを知った雪舟は、実景を大掴みする荒ぶる筆法として破墨を選んだ。《秋冬山水図》再見。荒いが的確な筆致で、恐るべき絵画空間を生み出している。《慧可断臂図》再見。うねる洞窟の岩肌と平面的な人物を同一空間に描いてしまう雪舟の不思議な絵画意識が凄い。《益田兼堯像》益田市立雪舟の郷記念館　初見。顔は非常に緻密に描かれているが、手の表現は手抜きされている。《天橋立図》再見。空間の捉え方が面白い。
第三章　絵の空間に入り込む　洛中洛外図

・《舟木本》再見（部分↓）描かれた2700人以上の人物がすべて岩佐又兵衛の「下ぶくれ」。
・《上杉本》再見（部分↓） 狩野永徳の王者の貫禄を示す洛中洛外図だが、3cmもない人物が見事な筆致で描かれていることに驚く。
・《高津本》初見（部分↓）：明らかに「下手」。

第四章　日本のヘンな絵－デッサンなんかクソくらえ

【松姫物語絵巻】初見。「下手うま」ではなく「下手くそ」。
【彦根屏風】再見。デッサンとは違う写実の味。

【岩佐又兵衛】
・《山中常盤物語絵巻》再見。暑苦しく、クドク、人物が異様に「キャラ立ち」している。

【円山応挙と伊藤若冲】
・《孔雀図》再見。応挙は「写生の人」。

【光明本尊と六道絵】
・《光明本尊》正巌寺蔵　初見。阿弥陀仏を文字にすることによって、信仰の対象とそれへの祈りが同時に表される。

・《六道絵》長徳寺蔵　再見。アウトサイダー・アートの先駆。第四章　やがて悲しき明治画壇－美術史なんかクソくらえ

【河鍋暁斎】
・《龍頭観音像》再見。暁斎は運筆の勢いを重要視していた。・《大和美人図》再見。袖口をこちらに見せた左手で、自分より後ろにある柱に触れている。【月岡芳年】
・《芳涼閣両雄動》再見。捩じったポーズで二人の八剣士を描いている。・《当勢西優妓　桐野利秋》初見
【川村清雄】
・《梅に雀》別版再見。梅の幹や枝の描写を部分的に省略し、絵具の物質性を見せる塗り方をしている。

【参考】　山口晃関係のブログ記事

1. 会田誠・小沢剛・山口晃ー2005年春 @大原美術館・有隣荘　2006-06-24 （ブログ）

2. 山口晃と歩く本郷東大界隈　2006-11-05 （ブログ）

3. 山口晃　ラグランジュポイント　＠ミヅマアートギャラリー　2006-12-15 （ブログ、HP）

4. アートで候。会田誠・山口晃展　@上野の森美術館　2007-05-27 （ブログ）

5. 山口晃展　今度は武者絵だ　＠練馬区立美術館　2007-08-19 （ブログ）

6. 山口晃トークショー　＠練馬区立美術館　2007-09-02 （ブログ）

7. 山口晃《巨匠　肖像画》　＠東京国立博物館　2008-07-12 （ブログ）

8. 山口晃トークライブ「年忘れ!山愚痴屋感謝祭」 @紀伊国屋サザンシアター2007-12-16 （ブログ）

9. 山口晃トークライブ「全部見てはいけないルーヴル」 @ルーヴル–DNPミュージアムラボ　 2008-01-13 （ブログ）

10. 課外授業　ようこそ先輩ー山口晃　＠桐生市立昭和小学校　2009-10-25（ブログ）

11. 山口晃展　老若男女ご覧あれ　＠そごう美術館　2013-05-07（ブログ）

12. 山口晃展　前に下がる　下を仰ぐ　＠水戸芸術館 2015-04-28（ブログ）

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