記事ランキング
ブログパーツ
最新のトラックバック
外部リンク
以前の記事
2021年 01月 2020年 11月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 more... カテゴリ
全体
国外アート 西洋中世美術 ルネサンス バロック 印象派 印象派後期 現代アート(国外) 東洋アート 仏像 国内アート 江戸絵画(浮世絵以外) 浮世絵 近代日本美術 戦争画 現代アート(国内) アート一般 書籍 音楽 映画・写真 講演会 北海道の鈴 東北の鈴 関東の鈴 中部の鈴 関西の鈴 中四国の鈴 九州の鈴 ヨーロッパのベル アジアのベル アメリカのベル オーストラリアのベル 未分類 フォロー中のブログ
検索
その他のジャンル
ファン
ブログジャンル
画像一覧
|
第2章 21世紀の国芳~何が私たちの心をつかむのか
1.「綺麗なもの」と「かわいいもの」の復権 ・団扇絵にみるデザインと情感 《花鳥風月 ふねで見る月》「花鳥風月」の「月」がテーマだが、夜の川での月見である。簾と舟縁の二つの直線が交差する構図が素晴らしい。 《当盛江戸鹿子 茅場町薬師》:じゃれつく犬に、思わず身を引く女性。犬は女性が手にする「ほおずき」が目当てなのだが。当時「ほおずき」は「十差」と呼ばれていたが、この画中の「ほおずき」も10個ある。 《列猛伝 足柄金太郎》「列猛伝」シリーズには、ほかに宮本三四、近江おかねなど勇猛な人が登場する。 ・おかしなもの 《道外化粧のたわむれ 花火》花火見物を描いた団扇絵だが、「両国くし」「はなび簪」「御すき油」などの化粧道具の世界としている。 《金魚づくし いかだのり》手前は尾びれをまくり上げた二匹の金魚が漕ぐ経木の筏、その向こうは蛙が漕ぐ小舟、その向こうには盆栽のような中州に鶴が描かれている。 2.特撮ファンタスティック ・怪異のモチーフ 《大物之浦海底之図》壇の浦の戦いで果てた平家の武将たちが「霊」として海中に描かれている。「新中納言知盛公霊」・「平内左ェ門霊」・「源太夫判官季方霊」である。種々の魚・蛸・海老・蟹・貝や藤壺が書き込まれているが、特段に大きな「平家蟹」が連なって海面に浮上しつつある。 ・《相馬の古内裏》再見。山東京伝による読本『忠義伝」に取材した作品で、源頼信の家老大宅光国と平将門の遺児で妖術を操る滝夜叉姫との対決の場面である。解剖学的にもかなり正確であるとの指摘もある生々しい骸骨が御簾を破って大きく半身を乗り出している。三枚続は、一図ずつでも構図が独立するように作画するのが通常であるが、その慣例をまったく意にとめない大胆さは国芳ならではの作品である。同様に三枚にわたって題材を大きく扱う構図法を取る作品には《讃岐院眷属をして為朝をすくふ図》《宮本武蔵と巨鯨》《鬼若丸と大緋鯉》が挙げられる。 《讃岐院眷属をして為朝をすくふ図》再見。曲亭馬琴の小説「椿説弓張月」に取材した作品。平清盛討伐のため舟で都に向かう源為朝一行を嵐が襲う。妻の白縫が海神に身を捧げても嵐は収まらない。その時、かって為朝が仕えたことのある「讃岐院」の使者の「烏天狗」たちが現れて船を立て直した。一方、「ワニ鮫」は「舜天丸」を抱えて泳いでいた「紀平治」を背に乗せて見知らぬ島に送り届けた。 この画には「①身を投げた白縫、②自害を天狗に押し止められる為朝、③舜天丸を抱く紀平治を乗せたワニ鮫」という異なる三つの光景が描かれているのである。 ・水を使った演出 《鬼若丸と大緋鯉》再見。岩の上で水中の巨大な緋鯉の激しい動きを見つめているのは鬼若丸。右側の女性は鬼若丸の伯母・飛鳥で、傍には「鰐口」という仏具が置かれている。これは寺院や神社に掛けられていて、参拝者が縄で打ち鳴らすものであるが、飛鳥がこれを鳴らして鯉を呼び出したのだろう。 ・合戦に煙は欠かせない 《信州川中島武田の正兵西条山を引かえし雨宮のわたりをこへ越後方甘粕近江守と戦ふ図》川中島の戦いの一場面。上杉軍は妻女(画面では西条山)に陣を構え、武田軍は二手に分かれて、一方が山の後方から攻め、上杉軍が山を下りとところを本陣が待ち受ける作戦をとった。事前にこれを察した上杉軍はひそかに山を下り、「雨宮の渡りを超え」て、武田軍本陣を急襲した。山に回ってていた武田軍は、急ぎ「雨宮の渡りを超え」、本隊に加勢しようとしたが、上杉軍に阻まれた。 興奮する馬を引き留めて戦況を見守っている武将は上杉方の「甘粕近江守景持」(画中では景時)で、馬上で刀を振り上げている武将は「金津伊豆守」である。国芳が描いた画面は、甘粕近江守が見ているのと同じ光景である。 ・写真のように作る風景 《八犬伝之内芳流閣》再見。曲亭馬琴「南総里見八犬伝」の一場面。「考」の玉を持つ犬塚信乃と「信」の玉を持つ犬飼現八が、まだお互いのことを知らずに戦う場面である。 《頼朝公蔓ヶ岡の神前において静御前のまひを見給ふ図》鶴岡八幡宮における静御前の舞。遠くに頼朝の姿が見える。「遠近法」を心得ていた国芳の傑作である。 《和田合戦義秀惣門押破》主人公は和田義秀で、朝比奈三郎義秀の原形である。国芳はそれまでの《朝比奈門破り》の定型を破壊して、朝比奈の大袈裟な壊し振りを描いた。 ・波に貼り付けた鯨 《宮本武蔵と巨鯨》再見。宮本武蔵が、鯨の背に乗って剣で一突きにしようとしている。 ・江の島の裏へ回る 《相州江之島之図》左端に「稚児ヶ縁」その右に「岩屋」と書かれた奥の院が描かれているが、これらは三枚続の左の一枚に収められ、それより右は懸崖だけである。国芳のこの画は案内図でなく、島の意外な風景を見せるものだった。 《大物浦平家の亡霊》平家討伐後、都を追われて西国に逃げようとする義経主従を、摂津国・大物浦で待ち受けていた平家の亡霊が描かれている。 ・あり得ない派手さとリアリティ 《長門国赤間の浦に於て源平大合戦平家一門悉く亡びる図》部分↓。平氏の豪華絢爛な船が、潮のうねりに任せて揺蕩っている。画面左で跳ぶのは義経の「八艘飛び」。「笹竜胆」の紋は源氏、「揚羽蝶」は平氏である。大きな船の中央に、安徳天皇を抱く二位の尼が見える。 《摂州大物浦平家ノ怨霊顕るゝ図》前述の《大物浦平家の亡霊》にくらべ、船が立派で、武将や亡者の数が多くて、場面の壮大さと臨場感が増している。 ・自然現象と抽象的な形 《周易八卦絵 雷雨》風神・雷神の内の雷神。「周易」は古代中国の占いの書物。「八卦」は占いに現れる八つの象のこと。八卦のうち「巽」が象徴するのは「風」で、「震」のほうは「雷」である。国芳の雷神は、火炎の太鼓を背負い、口を開いて叫んでいる。稲妻も描かれている。下の疾走する動物は「雷獣」である。 ・みんなわらっているようだ 《白面笑壁のむだ書》再見。壁に描かれた役者の似顔絵。サインや芳桐印、版元印まで拙い手書き風である。「わらっているかを(顔)」・「なるほどめう(妙)だ」・「みんなわらっていりやうだ」などと書かれている。 4.猫が結ぶ国芳と現代人の心 ・猫で遊び、猫に遊ばれる 《風流六花撰 百合》抱かれた猫は後ろ足をバタバタさせ、下の猫は飛びかかりそうな勢いである。百合の花が活けられている。 《其のまゝ地口 猫飼五十三疋》再見。東海道の宿駅の名前と猫の仕草を表す言葉を掛けた「地口」、すなわち駄洒落になっている。 ・あやしさと紙一重の動物 《日本駄右ェ門猫之古箏》東海道「岡崎の宿」を舞台とした「猫石の精」である。真ん中の老猫が亡くなった女性に化けた「猫石の精」。その盆踊り唄に合わせて二匹の猫が立ち踊りするなど怪しい現象が次々と起こり、ついには大猫へと変身する。 ・集団演技《猫の当字 たこ》再見。題の枠の蛸も、猫に負けじと主張している。蛸にむしゃぶりつく猫が面白い。「こ」は「古」の崩しである。 《流行猫の曲手まり》「扇子留め」・「八重桜」・「ゆび廻し」など「曲鞠」の猫版である。 【註】その1、その2、その3 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2017-05-07 22:03
| 浮世絵
|
ファン申請 |
||