海北友松と亀井玆矩

今回の「海北友松展＠京都国立博物館」に《飲中八仙図屏風》（六曲一隻、右隻分が失われているため左隻のみ）↓と《楼閣山水図屏風》（六曲一双）↓↓・↓↓↓の2点の重要文化財が出展されている。この2点がいずれも亀井玆矩のために制作されたものであることはそれぞれに「為書」がされていることで分かる。此図之事任御好染形也因幡鹿野館可有翫見御消息一入振肘畢　慶長七年曜月哉明　江北海北友松書之　【註】慶長七年＝1602年、曜月＝10月、哉明＝3日・右隻為書：惟高亭之麻柳篷舟承御望穢白楮者也　晋奉　亀井武蔵守様
・左隻為書：進上亀井武蔵守様　是古寺之廊門縁樹図依御好染玄墨者也

海北友松が為書をしたのは上記の2点しかないことから、二人がきわめて親しい関係だったことが分かる。

亀井玆矩は尼子氏の家臣湯永綱の子。尼子氏再興を図る山中鹿之助幸盛に従い各地を転戦したが、尼子氏滅亡の後は、幸盛との緊密な関係から、幸盛の養女（亀井秀綱の次女）を娶り、亀井氏を名乗ってその名跡を継いだ。その後、織田信長や豊臣秀吉の配下で活躍し、秀吉からは天正9年（1581）に鹿野城を与えられ、文禄慶長の役にも参戦した。江戸幕府下では、農業や銀山の開発、用水路開発などに手腕を振るう一方、シャムと朱印船交易を行うなど世界的視野を有する実業家でもあった。

津和野亀井家の現在の当主（16代）亀井茲基氏は私の知人であり、高橋由一作《西周像》についての記事をこのブログに書いている。

【参考】亀井家
亀井永綱　湯惟宗の子
亀井安綱　亀井永綱の子
亀井秀綱　亀井安綱の子　延徳3年（1491） - 永禄9年（1566）
亀井利綱　亀井安綱の子
亀井茲矩　湯永綱の長男　亀井秀綱の養子　鹿野藩初代藩主　弘治3年（1557） - 慶長17年（1612年）
亀井政矩　亀井茲矩の次男　鹿野藩2代藩主　津和野藩初代藩主　天正18年（1590） - 元和5年（1619）
亀井経矩　亀井政矩の子
亀井茲政　亀井政矩の次男　津和野藩2代藩主　元和3年（1617） - 延宝8年（1681）
亀井政直　亀井茲政の長男　正保2年（1645年） - 延宝7年（1679年）
亀井茲親　亀井茲政の三男　津和野藩3代藩主　寛文9年（1669） - 享保16年（1731年）
亀井茲長　亀井茲親の長男　元禄元年（1688年） - 享保11年（1726）
亀井茲満　亀井茲親の六男　津和野藩4代藩主　正徳3年（1713年） - 享保21年（1736年）　没歳：24歳
亀井茲延　亀井茲長の長男　亀井矩致、茲満の養子　津和野藩5代藩主　享保7年（1722） - 宝暦6年（1756年）
亀井茲胤　松平頼明の五男　亀井茲延の養子　津和野藩6代藩主　享保11年（1726） - 宝暦2年（1752年）
亀井茲休　亀井茲胤の長男　亀井矩貞の養子　寛延3年（1750） - 明和3年（1767年）
菅沼定好　亀井茲親の子
亀井矩貞　菅沼定好の次男　亀井矩致、茲胤の養子　津和野藩7代藩主　元文4年（1739年） - 文化11年（1814年
亀井矩賢　亀井矩貞の長男　津和野藩8代藩主　明和3年6月（1766） - 文政4年（1821）
亀井茲尚　亀井矩貞の三男　亀井矩賢の養子　津和野藩9代藩主　天明6年（1786年） - 天保元年（1831年）
亀井茲方　亀井茲尚の三男　津和野藩10代藩主　文化14年（1817） - 弘化3年（1846）
阿部正身　亀井茲尚の四男　阿部正暠の養子　佐貫藩7代藩主　文政元年（1818年） - 慶応4年（1868年）
亀井茲監　有馬頼徳の六男　亀井茲方の養子　津和野藩11代藩主　津和野藩知事　亀井家12代当主（子爵：1884‐92、伯爵：1892‐96）文政8年（1825） - 明治18年（1885年）
亀井茲明　堤哲長の三男　亀井茲監の養子　亀井家13代当主　文久元年（1861） - 明治29年（1896年）
亀井茲常　亀井茲明の子　亀井家14代当主　明治17年（1884） - 昭和14年（1939）
亀井茲建　亀井茲常の子　亀井家15代当主　明治43年（1910） - 平成4年（1992）
亀井茲基　亀井茲建の長男　亀井家16代当主　昭和11年（1936）‐
亀井久興　亀井茲建の三男　昭和14年（1939） ‐
亀井亜紀子　亀井久興の長女　昭和40年（1965）-

美術散歩　管理人　とら