桃山孤高の巨匠 海北友松 ＠日曜美術館

今回の「海北友松展」は京都国立博物館で開かれていて、東京国立博物館には巡回しない。その点は「狩野永徳展」や「狩野山楽・山雪展」と同様であるが、今回は①自分の「海北友松関連ブログ記事」を整理し（ブログ）、②「海北友松の代表作」をまとめ（ブログ）、③「海北友松展図録」を宅急便で取って勉強し（ブログ）、④「日曜美術館：桃山 孤高の巨匠 海北友松」で知識を整理することとした。

番組は海北友松の到達点とされ、今回米国から”奇跡の帰還＝約60年ぶりの里帰り”を果たしている《月下渓流図屏風》（米国・ネルソン・アトキンス美術館蔵）からスタート。海北友松は、1533年、近江・湖北で誕生。
友松は、初め狩野永徳に師事した。《菊恵童図屏風》は友松の狩野派時代の作品。永徳の作品と比較すると岩の峻法などに類似が認められる。1573年、織田信長は浅井家を滅ぼしたが、この時兄・大膳は戦死し、41歳の友松の将来に大きな影響を与えた。「武家出身だった海北友松は間違って芸術家になった」とのこと。友松は建仁寺方丈に多数の襖絵を描く以前に、建仁寺塔頭に襖絵を描いている。番組中に登場したのは霊洞院の《花鳥図襖》と禅居庵の《松竹梅図襖》である。

《花鳥図襖》霊洞院《松竹梅図襖　松に叭々鳥図》1597年　禅居庵《松竹梅図襖　梅図》1597年　禅居庵
日本画家・山口晃と京都国立博物館学芸部長・山本英男の説明を聞く司会の井浦新と高橋美鈴。次に登場したのは、有名な「建仁寺方丈水墨障壁画」。

《竹林七賢図》部分《花鳥図》部分《雲龍図》山口晃の説明を聞く井浦新。室内を暗くしてみるともの凄い。画面上部からの墨の滴りも良く分かる。時の権力者・豊臣秀吉も海北友松のことは知っていたようで、「1594年、上杉景勝が秀吉を自邸に招待した際に、秀吉から友松筆の《濃彩松鳥画屏風一双》を賜ったとの記述が「歴代年譜　景勝公」に残っている。《浜松図屏風》宮内庁三の丸尚蔵館蔵　公家好みの洗練された画。《網干図屏風》宮内庁三の丸尚蔵館蔵　こちらも公家好み。次は、「友松の妙心寺屏風」3点。

《花卉図屏風》右隻↓、左隻↓↓、同拡大↓↓↓《寒山拾得・三酸図屏風》右隻↓、左隻↓↓《琴棋書画屏風》晩年の作品が出てくる。

《禅宗祖師図押絵貼屏風》京都国立博物館蔵《放馬図》奈良・松尾寺蔵:かわいい馬たち。《白鷺図》根津美術館蔵：珍しく正面から描いた鷺。最後に《月下渓流図屏風》に戻って仔細に見た。「蒲公英」が描かれている。「土筆」も描かれている。靄に煙る山深い渓谷には、豊かな雪解け水が流れ出す。左上の空には朧月が浮かび、その優しい光が渓流をはじめ、松や白梅、椿や土筆、蒲公英などを淡く照らし出している。河合正朝氏がコメントとして古今集の和歌を引用されたように、この画の詩情には感嘆せざるをえなかった。この屏風には、春が戻って来た歓びが表され、長く続いた戦乱から平和な世に戻って来た喜びが暗示されている。古今集の和歌が下敷きになっているところから、この屏風は若い公家から注文されたものなのだろう。古今集・巻1・春歌上・41 凡河内躬恒　春の夜、梅の花をよめる「春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる」美術散歩　管理人　とら