江戸の絶景～雪月花 後期 ＠太田記念美術館

大分暖かくなってきたので、後期（3月26日まで）を見に行った。ちなみに前期の記事はこちら。

床の間

蹄斎北馬《洲崎潮干狩の景》文政～天保。絹本一福。洲崎は潮干狩りの名所だったが、なぜか遠景に白い富士山が見える。

渓斎英泉《江都不忍弁財天光景》天保頃。絹本一福。不忍池の花の景だが、褐色の地は夜桜のような風情である。そぞろ歩きする六人の男女が描かれている。

歌川広重《上野中ノ嶽霧晴・上野妙義山雨中・上野榛名山雪中》嘉永2－4年頃。絹本三幅対。左：霧の中に屹立する山、中央：強い雨が降る村落、右：朱塗りの橋と楼閣。

歌川広重《東都高輪・東都隅田川》嘉永ー安政5年頃。絹本双福。右幅：空に燕、川岸に桜並木。左福：空に雁、海に船、岸に駕籠など。

「雪月花」の代表作品

・歌川広重《木曽路之山川》《武陽金沢八勝夜景》《阿波鳴門之風景》：「雪・月・花」をテーマにした三部作で、いずれも三枚続の横長の画面を生かした風景画である。前期にも出ていた。《木曽路之山川》↑＝「雪」、《武陽金沢八勝夜景》↑↑＝「月」、《阿波鳴門之風景》↑↑↑＝鳴門海峡のすさまじい渦潮の波頭を「花」に例えている。

「雪」のお気に入り

歌川広重《雪中富士川の景》画中に外題がなく、場所を特定できるランドマークもないが、富士川とする説が踏襲されている。天保12年の甲州旅行の成果。川には舟、橋を渡る笠を被った男、瀧、山間の家、雪山という構図が縦長の画面に活きている。

歌川広重《近江八景　比良暮雪》広重は20種近くの近江八景揃物を手掛けた。和歌は「雲はるゝ　ひらの高根の夕くれは　花のさかりに　過るころかな」。

歌川広重《六十余州名所図会　壱岐　志作》「志作」は壱岐にはなく長崎県松浦市志佐町であるという。伊万里湾、壱岐水道を越えて遠くに見えるのが壱岐の島影で、一面の雪景色として描かれている。

歌川広重《木曾海道六十九次之内　弐拾九　和田》和田と下諏訪の間にあった難所「和田峠」の雪景色。行く手に見える白い山は「御嶽山」。

「月」のお気に入り

歌川広重《甲陽猿橋之図》














天保12年の甲州旅行の成果で、谷を流れる川から、明るい満月、その上に架かる橋を馬や徒歩で渡る旅人、さらに天へと空間が広がっていく構図が縦長の画面に活きている。

歌川広重《江戸近郊八景之内　玉川秋月》広重の代表作といわれる「江戸近郊八景」（8枚連作）の一つ。初版は摺物で、狂歌が入っている。

歌川広重《近江八景之内　石山秋月》和歌は「石山や　にほのうみてる　月かげは　あかしも須磨も　外ならぬかは」。

歌川広重《六十余州　信濃　更科田毎月　鏡台山》「田毎の月」とは、傾斜地に作られた棚田に映る月のことで、長野盆地の「姨捨山」を中心とする更科の地がその名所となっている。「鏡台山」とは、姨捨山の向いにある山で、左右に尾根を引いた美しい山である。月を鏡に見立て、その台として鏡台山と名付けられた。

歌川広重《六十余州名所図会　備後　阿武門　観音堂》福山市の南方、沼隈町の「阿伏兎の瀬戸」は潮流が速く、航行の安全を祈って阿伏兎岬の突端に「盤台寺」、後に「観音堂」が建てられた。朧月夜の優しい光の中に風景が浮かび上がっている。

渓齋栄泉《江戸八景　愛宕山の秋の月》河鍋暁斎《東海道名所之内　比叡山》空には淡い三日月が描かれている。

花

歌川貞秀《神奈川横浜新湊港崎町遊郭花盛之図真景》俯瞰的な構図の横浜絵。「空飛ぶ絵師・貞秀」の面目躍如である。

歌川広重《東都名所　海案寺紅葉ノ図》歌川広重《江戸近郊名所　海案寺紅葉》摺物

渓齋栄泉《江戸八景　上野の晩鐘》「山と水辺」のお気に入り

葛飾北斎《諸国名橋奇覧　飛越の堺つりはし》飛越とは岐阜県北部（飛騨）と富山県越中との国境あたりのこと。切り立つ山々を結ぶのは手すりのない吊り橋。木々や鳥、霞さえも足もとにして樵の夫婦と思われる男女が荷物を持ち平然と渡っています。その姿はあたかも空中を歩いているかのよう。女性の後ろからピンと張った橋の形状は、自然が織りなす幻想的な絶景のなかに強い緊張感を与えている。

歌川広重《六十余洲名所図会　飛騨　篭わたし》向かって右（下流に向かって左岸）が宮川（神通川）の飛騨側で、対岸（下流に向かって右岸）が越中側ある。越中側に杭を立て、野葡萄の蔓縄を杭に結びつけて、命綱として両岸に張る。 藤籠を命綱に掛け、籠の前後の綱を両岸に渡し、渡る人は籠の中に立って、身体をブランコのように前後に振り動かして進んでゆく。

歌川広重《六十余州名所図会　肥後　五かの庄》「五家荘」とは、現在の熊本県八代市泉町にあった椎原・仁田尾・樅木・葉木・久連子の5集落をいう。本図では、崖に生えた木をそのまま橋とし使っており、谷底深くから白雲が沸き上がる景が描かれている。

歌川広重《六十余州名所図会　対馬　海岸夕晴》雨上がりの空に大きな虹が色どりを添えている。遠くに見えるのが朝鮮半島とされているが、真景図とは言えない。

昇亭北寿《上総銚子浦　鰹釣舟之図》雲の表現は西洋画風。犬吠埼の海蝕（食）洞「胎内くぐり」の入口が描かれている。

歌川国芳《東都名所　するがだひ》大きな虹が印象的で、駿河台を行く人々も空を見上げている。

「寺社」のお気に入り

歌川広重《相州江之嶋弁財天開帳参詣群衆之図》江の島の弁財天は、技芸の神として信仰を集めた。特に音曲の世界では講中を組んで江戸から参詣することが多く、六年に一度の開帳の時は、多数の参詣人で賑わったといわれる。ここでも江の島参詣に向かう四組の女講中を揃いの日傘で描き分けている。画面では、江戸長唄の杵屋、清元節、常磐津節などの人々である。

歌川広重《東都名所　五百羅漢さゞゐ堂》歌川広重《東都名所　神田明神東阪》歌川広重《六十余州名所図会　三河　鳳来寺山巌》鳳来寺は、愛知県新城市の鳳来寺山の山腹にある古寺。朱色の仁王門から1425段の石段を登らラなければ、頂上に達することはできない。また、下方の瀧に続く水流はかなりの勾配を有している。

河鍋暁斎《東海道名所之内　那智ノ瀧》美術散歩　管理人　とら