華麗なるミュシャ 祖国への旅路～パリ・プラハ・二都物語

2017年3月16日(木) 午後10:25～午後11:15、NHK [総合]TVで、この番組を見た。

番組の前宣は以下のようである。

幻の大作とされた20点の絵画が日本で公開された。壮大でリアルな歴史劇。作者はパリで活躍したミュシャ。華麗な女性のポスターで名高い画家が、なぜ別人のような作品を？

ミュシャの謎を探る旅に出るのは女優の多部未華子。画家の足跡をたどってパリへ。19世紀末、艶やかな女性のポスターでいかに人気だったかを体感。

しかし、ミュシャは50歳で祖国チェコに帰国。大作「スラヴ叙事詩」に挑む。多部もプラハで対面。絵の中からこっちを見る不思議な人たちを見つけた。

ミュシャがこもった中世の城や驚きの資料から、大作に込められた感動のメッセージが浮かび上がる。

【出演】多部未華子、【語り】黒沢保裕

ちなみに「スラヴ叙事詩　全点図解」はこちら。ミュシャがパリで有名になったのは、このようなアール・ヌーボーのポスターを制作したためだが、このミュシャを応援したのは女優サラ・ベルナールだった。ミュシャは、草花のスケッチブックを作っていたが、ポスター制作にはこれを利用した。
ミュシャは齢50にして故郷チェコに帰り、プラハ市民会館の天井画などを制作した。

次いで、ミュシャはスビロフ城で「スラヴ叙事詩」の制作に取り掛かった。スビロフ城の広間は、大きな画を描くために十分な広さがあり、しかも天井から自然光が入っていたからである。ミュシャの「スラブ叙事詩」では、中心人物（例↓：ヤン・フス師）が画面の中央に描かれていないことが多い。大勢の一般大衆の方が画の主役なのである。ミュシャは、村人に衣装を着せ、それを写真撮影したものを「スラヴ叙事詩」のモデルとした。云いかえれば、村人たちを「スラブ叙事詩」の主役としたのである。1939年3月、ナチスドイツによってチェコスロヴァキア共和国は解体された。プラハに入城したドイツ軍によりミュシャは逮捕された。「ミュシャの絵画は、国民の愛国心を刺激するものである」という理由からだった。ゲシュタポはミュシャを厳しく尋問たが、それは78歳の老体には耐えられないものだった。その後ミュシャは釈放されたが、4ヶ月後に体調を崩し、祖国の解放を知らないまま生涯を閉じた。（↓）はゲシュタポの記録で、Alfons Muchaの文字が見える。「スラヴ叙事詩」のうち、未完という理由で、ミュシャ生存中に公開されなかった画はこの《スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い》（↓）だけである。ミュシャの意図とは異なり、この画にはナチを想起させるモティーフが含まれていたからである。美術散歩　管理人　とら