ユダを探せ ＠最後の晩餐

（↓）は、レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》のCG復元画像　(NHK制作)で、クリックでかなり拡大します。レオナルドは、イエスが「弟子たちの1人が彼を裏切るであろう」と言った時に、十二使徒の間で起こった驚きを描いたのである。

その詳細については、以前のブログ（レオナルド・ダ・ヴィンチ－驚異の技を解剖する＠NHK日曜美術館）こちらに書いている。

「この中に裏切り者がいる」というイエスの言葉に対して各使徒がどのような言葉を発したかということを俳優のジョヴァンニ・ニコリが考えて実演した映像。各使途（カッコ内はイエスを中央とした頭の順番）の言葉は下記のとおりである。
R2－大ヤコブ（右２）：　ありえない！
R3－ピリポ（右３）：　主よ、わたしではありません！
R1－トマス（右１）：　（質問するように指を立てながら）神が望んでいるのですか？
L2－ペテロ（左２）：　（ヨハネに対して）誰のことを言われたのか教えてくれ！
L1－ヨハネ（左１）：　御心がおこなわれますように！
L3－ユダ（左３）：　すべて知っているのか？
L456－（左端の3人）：　わたしではありませんetc
R456－（右端の3人）：　わたしが言ったとおりだetc

《最後の晩餐》の画像は、ローマ時代のラヴェンナのモザイク（6世紀初期）以来、多数残っているが、その中にユダの姿を見出すことは必ずしも容易ではない。例えば、↑の現存する最古の晩餐図では、左のイエスが片手を挙げて説教し、馬蹄形のテーブルの周りに寄りかかる弟子たちは、食卓の左端に坐るユダを見つめている。このことからイエスが直前に、これから起こる裏切りを予告したところと推測できる。

このため、ユダの姿を示すヒントを探してみた。

・ヒント1：ユダがイエスと共に同じ鉢にパンを浸している。イエスは「マタイによる福音書」で、「私と共に同じ鉢にパンを浸しているものが裏切り者である」と指摘している。（参照）

彩飾写本、1007年または1012年　バイエルン州図書館　ミュンヘン・ヒント2：ユダの口に小さな悪魔が入り込もうとしている。ユダがキリストからパンを拝領している時に、悪魔が入り込もうとしている。

彩飾写本、1007年または1012年　バイエルン州図書館　ミュンヘン・ヒント3：ユダはイエスからパンを受けながら、後手に魚を隠し持っている。これはキリスト受難劇の一場面で、ユダが食卓から魚を盗むというさらなる裏切りを描いたものである。

ニコラ・ド・ヴェルダン　エマーユ　1181年　クロスターノイブルグ修道院・ヒント4：ユダの頭部には光輪が描かれていない。

ピエトロ・ロレンツェッティ　フレスコ　1315年頃　サン・フランチェスコ聖堂　アッシジ・ヒント5：ユダの光輪が黒い。

フレスコ　1317年頃　ポンポサ修道院　フェラーラ・ヒント6：逃げ出すユダには光輪ががない。こっそり逃げ出そうとするユダが十二使徒の一人に呼び止められている。

タッデオ・ガッティ　板にテンペラ　1330年代　アッカデミア美術館　フィレンツェ
・ヒント7：黒い光背のユダは銀貨30枚が入った財布を持っている。良く目立つ財布はユダの最も顕著な持ち物である。

ステファノ・ディ・アントニオ・ヴァンに　フレスコ　1434年頃　サンタンドレア教会　フィレンツェ
・ヒント8：16世紀から17世紀にかけて、ユダが赤毛で描かれることが多い。赤毛は「邪悪」の象徴。

ハンス・ホルバイン（子）　板にテンペラ　1520－24年頃　バーゼル美術館　バーゼル・ヒント9：ユダと犬。ユダが犬の頭を撫でている。「忠誠」の象徴の犬を描くことによって、ユダのずる賢さや不誠実さを際立たせている。

ヤーコブ・ヨルダーンス　カンヴァスに油彩　1654‐55年　アントワープ王立美術館　アントワープ　美術散歩　管理人　とら