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今日は1月7日。自宅の茶道教室は「初釜」で、11人の着物の女性が揃って賑やかである。
お茶と関係のない「とら」は、外の暖かい日和に誘われて、原宿の太田記念美術館に一人で行ってきた。 「お笑い江戸名所 歌川広景(うたがわ・ひろかげ)の全貌展」が 1月5日から始まっている。 歌川広景の代表作《江戸名所道戯尽(えど めいしょ どうけ ずくし )》は、幕末の江戸の名所を舞台に、騒いだり転んだりする人々をユーモラスに描いた作品群である。本展は、今回の展覧会は全50点からなるこのシリーズを一挙に見られる貴重な機会となっている。 連休初日とあって、会場は若い世代でかなり混んでいたが、他の浮世絵では味わうことのできない、笑いと馬鹿馬鹿しさに溢れた江戸っ子たちの姿を楽しんでいるようだった。 歌川広景については、歌川広重の弟子という程度のことしか明らかになっておらず、その正体はほとんど謎に包まれている。画姓として歌川を称し、広景と号した。別号に一葉斎。 広重の画系に連なる絵師で、大判錦絵《江戸名所道化(戯)尽》全50点に目録1点をつけた51枚揃いなどの作を残している。 現在確認されている作品は65点。いずれも大判錦絵。実作品の改印を見ると、作画期は安政6年(1859年)正月から文久元年(1861年)8月までの僅か2年8ヶ月(1859年=36、1960年=9、1961年=5)である。 ・歌川広景《江戸名所道化尽 九 湯嶋天神の台》 左から、犬に足を噛まれた蕎麦屋⇒出前の蕎麦を頭からかぶってしまったお侍⇒囃し立てる侍のお供。 橋の上から飛び込む褌一丁の男たち。スイカを積んだ小舟に激突。 突然の夕立。一つの傘しかなかった三人の男たちの解決方法。 漆喰の盛り板が頭に命中。ひっくり返って箱の中にすってんころりん。 会場では、北斎や広重の作品も合わせて展示することで、広景のアイデアの源泉、さらには、北斎や広重が次世代に与えた影響力について掘り下げていた。 ・歌川広景《江戸名所道外尽 廿八 妻恋こみ坂の景》vs 葛飾北斎「北斎漫画」十二編 鼻をつままずにはいられない、お侍さんの発する強烈な臭い。北斎の作品をそっくりそのまま模写している。 透視図法を使って、坂の上から江戸湾を眺める独特の構図。広景は、広重の作品の構図を取り入れている。 大名行列ごっこを楽しんでいるキツネたち。挟み箱の代わりにカボチャを担ぎ、毛槍の代わりにトウモロコシをくくり付けた竹を掲げている。大きなザルに座って御満悦な男は、狐に化かされて、すっかりお殿様になった気持ちでいるようだ。場所は王子稲荷社付近。大晦日の夜になると狐たちが王子稲荷社に集まり、近隣の農民たちは、この時に狐が発する狐火の数によって翌年の農作物の豊凶を占ったと伝えられている。歌川広重の《名所江戸百景 王子装束ゑの木大晦日の狐火》を参照しているようである。 歌川広景《青物魚軍勢大合戦之図》は、擬人化された魚と野菜の軍勢が大激突である。(↓)の図をクリックし、さらに⊕印をクリックすると拡大します。 彼らは「広景が安政6年に発表した《青物魚軍勢大合戦之図》は、前年に流行したコレラと将軍継嗣問題を題材とした世相を示しており、更にこの図や諸国の城の絵などを横浜の異人に送った不穏なものである」として広景を糾弾し、江戸市中の家主に対し「広景の住所を知らせるよう訴え、隠せば同罪だ」と云うのである。前述のような広景の短い画業も、このような身の危険を感じての行動とも取れる。すなわち文久3年頃には筆を擱いて江戸を離れた可能性が高いのである。 この《青物魚軍勢大合戦之図》は、擬人化された「青物(野菜)」と「魚」の合戦を描いたもので、安政6年(1859)に板行されている。安政5年には、致死率の高い疫病のコレラが長崎から侵入して日本中に伝染し、3年間にわたって流行し「安政コレラ」と呼ばれた。 この絵の「青物」はコレラを予防する食物、「魚」はこれらを伝染する食物で、絵では両者の戦いをを示しているとされているが、実際にはこれは青物と魚の戦争に見立てた江戸幕府内の「南紀派」と「一ツ橋派」の争いの風刺画である。この絵の詳細な「絵解き」は別報に譲り、以下には青物軍と魚軍のラインアップを記しておく。 右側の青物軍は上から藤唐士之助(とうもろこしのすけ)(トウモロコシ)、蜜柑太夫(ミカン)、唐辛四郎(トウガラシ)、芋山十八(ヤマノイモ)、松田茸長(マツタケ)、砂村元成(カボチャ)、藤顔次郎直高(トウガン)、大根之助二股(ダイコン)。 右下から空豆之進(ソラマメ)、茄子三郎(ナス)、桑井永之進(クワイ)、甲斐武道之助(ブドウ)、宇利三郎(マクワウリ)、水瓜赤種(スイカ)、百合根十郎(ユリネ)。 左側の魚軍は、右の方から鰈平太(カレイ)、ほうぼう小次郎(ホウボウ)、海底泡之助(カニ)、初鰹之進(カツオ)、佐々井壷八郎(サザエ)、蛸入道八足(タコ)、戸尾魚次郎(トビウオ)、鯰太郎(ナマズ)、味物鯛見(タイ)、しやち太子(シャチ)、大鰭鮪之助(マグロ)、ふぐ三郎腹高(フグ)。 もちろん青物軍(vegetarian)優勢の合戦である。 なお、明治3年(1870年)から同7年(1874年)に活動した昇斎一景と同一人物とする説もある。実際、広景の《江戸名所道化尽》と一景の《東京名所三十六戯撰》(↓)は画風が共通しているので、同一人物でもおかしくはないが、これを裏付ける資料はなく判断は難しい。 図録は作られていないが、「太田記念美術館紀陽 浮世絵研究 第6号」に日野原健司氏の資料紹介「歌川広景 江戸名所道戯尽」が載っており、そこには歌川広景制作の《江戸名所道戯尽》51点・《青物魚軍勢大合戦之図》1点・《東都冨士三十六景》11点・《豹の見世物》2点がフルカラーで収載されていた。 ということで、金1,800円也でこの「浮世絵研究」を購入してきた。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2017-01-07 20:15
| 浮世絵
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