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これは昨日の文化の日のこと。久しぶりに晴れたので、10月23日の日曜美術館・アートシーンで刷り込まれていた「月」展を観にに行ってきた。
正味90分の講義は面白く、その後の鑑賞に役立ったので、ここでその概略を紹介したい。 ・花鳥風月・雪月花:景物ー四季絵・月次絵・名所絵において季節感を表し、象徴するモチーフ (例1)尾形乾山《定家詠十二ケ月和歌花鳥図角皿》MOA美術館 再見 (例)嵐吹く三室の山のもみぢ葉は龍田の川の錦なりけり(能因法師、後拾遺集)の龍田川は紅葉の名所。 ・中国の名所=瀟湘八景: 画題の前半二文字は漠然とした地理的特徴で、後半二文字は気象や時刻的特徴 (例1)王洪《瀟湘八景図巻》南宋時代、プリンストン大学 (例3)玉潤《瀟湘八景断簡》 (例4)是庵《瀟湘八景図》 (例5)久隅守景《瀟湘八景図》:横100cmの大画面の右側近景に「山市晴嵐」「漁村夕照」「洞庭秋月》、中央に「煙寺晩鐘」を、左側に「平沙落雁」「遠浦帰帆」「瀟湘夜雨」を巧みに配している。再見 近江八景では、前半二文字が土地名を明記し、特定の場所には特定の自然物や建築物といったランドマークが存在する。 (例1)《近江名所図屏風》滋賀県立近代美術館:近江八景のすべてが入っていないので、近江八景が固定化される前の姿である。 (例2)歌川広重《近江八景図》有田屋版 (例3)喜多川歌麿《浮絵近江八景 石山ノ秋月》:画面右側の松林が奥に行くにしたがって徐々にに小さくなるように描いていることから、透視図法を用いていることが分かる。夜空に浮かぶ満月の情景は、落ち着きある静寂さををより深いものとしている。近江八景図としての型が決まってきているといえる。 (例4)歌川広重《近江八景之内 石山秋月》 「石山秋月」に描かれるモチーフは、①石山寺硅灰石の上に建つ石山寺、②琵琶湖、③月 「石山寺縁起絵巻」全7巻中、第4巻第1段に「源氏物語」起筆譚が記されている。 (例1)土佐光起《紫式部図》石山寺 (例2)月岡芳年《月百姿 石山月》 ・月下美人図 (例1)《柴門新月図》藤田美術館 vs 司馬江漢《月下柴門美人図》月が描かれている前者の影響を受けて描かれた後者には月が描かれていないが、女性の着物は月光を受け、衣紋線の間の影は月の存在を暗示している。ちなみに、「柴門」とは「侘び住い」のこと。 (例4)狩野寛信《紫式部吉野龍田川》佐野美術館:中幅は紫式部が石山寺に参籠した際に、八月十五日の月が琵琶湖に映えるのを見て「源氏物語」の構想を得たところ、左幅は紅葉の名所「竜田川」、右幅は桜の名所「吉野川」の景。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2016-11-04 19:19
| 国内アート
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