松島 瑞巌寺と伊達政宗 ＠三井記念美術館

これは昨日のことである。

朝の日曜美術館で、現在サントリー美術館で開催中の「鈴木其一」の展覧会の紹介があった（参照）。

天気は上々、風もない絶好のお出掛け日和なので、大混雑が予想されるサントリー美術館やその周辺の六本木界隈を避けて、日本橋の三井記念美術館で開かれている「松島 瑞巌寺と伊達政宗」展を見てきた。昨年6月に、「瑞巌寺」を訪れる機会があったが（参照）、瑞巌寺全体が平成大修理（平成20年11月～平成30年）の最中のために十分に見られず、さらに時間の制約があって瑞巌寺から少し離れた「五大堂」まで足を延ばすことができなかった。今回の三井記念美術館の展覧会では、東日本大震災復興を祈念して、33年に一度しか開帳されない五大堂の秘仏「五大明王像」が特別に出品されていた。下掲のフライヤーの中央が「不動明王」、右下から時計回りに「降三世明王」、「軍荼利明王」、「大威徳明王」、「金剛夜叉明王」である。参照：ぶらぶら美術館・博物館＠2016/10/21（↓）
さらに、瑞巌寺本堂の平成大修理完成と伊達政宗生誕450年を記念して、瑞巌寺本堂の障壁画や仙台市博物館の伊達政宗関係の美術品・歴史資料が展観されるというまたとない機会であった。

例によって、展示期間が何期にも分かれているため、図録を買ってきたが、これが良くできている。

展覧会HP

ここでは、フライヤーの裏面に載っている画像を、若干の説明を加えて載せることとする。私の場合、運良くすべての実物を鑑賞することができた。

・重文ー狩野左京筆《瑞巌寺本堂障壁画　松孔雀図》部分　展示室4　瑞巌寺（仙台市保管）前期展示この障壁画が飾られている室中孔雀の間は、奥に続く仏間とともに、宗教儀式が営まれる本堂の中心部である（参照）。

↑の部分画像は、室中孔雀の間の右手、鷹の間との境界をなす６面中の右4面である。襖絵は冬から春、秋へと季節が移ろい、大きく枝を広げた松の古木に紅葉や梅の大樹を添え、四季折々の草花が咲き乱れる中に番の孔雀を遊ばせている。

・重文ー伊達政宗着用《黒羅紗地裾緋山形文様陣羽織》仙台市博物館　展示室７　中期展示黒と金と赤の大胆な色合いとデザインの陣羽織で、慶長遣欧使節を送った政宗の南蛮文化好みの陣羽織である。

・伊達政宗筆《道の記》仙台市博物館　展示室7　通期展示元和元年3月、京都から江戸へ下る途中の伊達政宗が、京都での近衛信尋らと交わした和歌や、道中で詠んだ和歌をまとめた紀行文である。

画像（↑）に掲載した部分の画像を半分に分けると（↓および↓↓）のようになり、ぞれの文は以下（↓および↓↓）となる。都北野於松梅院酒　宴乃折しもある御方　盛なる桜御詠覧の砌
　皆人爛酔の餘春の　夕部と題を給て
花や花それともあかぬ詠して　なかき日かけも夕くれの空
　御返し　近衛様
花や花それともあかぬ詠とは　かすむ夕乃月にや有らん　とかくしてさかちきちか　つきたれは又たてまつる
龝（あき）ならぬ露乃袂を世の人の　いかにととはゝいかゝこたへん　ほとふるまゝに田舎くたり　乃折にもなりぬれは此ハ　いつそ二月すゑ
やよいの　はしめつかた九重の花も　やうやうゝゝさきほむるほとにて　都乃名こりハよのつねさへ　あるへきに一かたならぬ　事を思ひつゝけ　かくてて　おもいきや八重九重の春にあいて　はな乃さかり別へしとは　かくて都をたゝとての二日

・伊達政宗筆《梅小禽図》個人蔵　展示室７　通期展示2015年末に、塩釜市の旧家から伊達政宗の真筆の絵が現れて、政宗の教養に対する新たな評価が付け加わった。

ちなみに、この画は家臣・馬場出雲親成(1570-1631)の拝領品であるとされている。

鳥の羽に僅かに薄茶系の色を指す以外のすべて墨によった本図には、咲き匂う白梅の枝に憩う二羽の小鳥が描かれている。

日本野鳥の会によると、この小鳥は、箱書に書かれている「雀」ではなく、「ゴシキヒワ」とのこと。

・県文《伊達政宗甲冑倚像》瑞巌寺　展示室７　通期展示極彩色の文様が施された袴の上に黒漆五枚胴具足で身を固め、毛沓を履く。大きな弦月様の前立を付した兜を被り、太刀を佩き、右手に軍配を持ち、床几に座す。文禄の朝鮮出兵時の雄姿を再現している。

遺言により両眼が付けられているが、右目は半眼になっていた。

政宗のこの等身大の木像は、二代藩主忠宗および政宗正室陽徳院愛姫の発願で制作されたものである。

・重美ー詩歌伊達政宗筆《菊花図屏風》展示７　前期展示金地の画面に白い菊の花が大きく描かれている。散らし書きされた和歌は政宗の自筆で、新古今和歌集や和漢朗詠集などから選ばれている。

絵の筆者は狩野左京らによるものと考えられており、もとは政宗が晩年を過ごした仙台・若林城の襖であったと考えられている。

【追記】瑞鳳殿舞納品：　瑞鳳殿は政宗の霊屋で、政宗の墓屋の上に建てられたものであるが、昭和20年戦災によって焼失した。唱和49年に再建のために墓室調査が行われ、政宗の遺骨とともに、多数の埋納品が出土した。今回の展覧会には、「太刀拵」（↓）と「金製ブローチ」（↓）が出ていた。ちなみに、政宗の身長は遺骨から154.9cm、血液型は遺髪のDNA鑑定により「B型」と判明したとのことである。


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