江戸の悪 ＠太田記念美術館

【畳の間の特別展示】

三代歌川豊国《東海道四谷怪談》：　民谷伊右衛門は、産後の肥立ちの悪い妻お岩を厭い、隣家の伊東喜兵衛と結託してお岩に容貌の醜くなる毒薬を飲ませ、伊右衛門に惚れる喜兵衛の娘との結婚を画策。お岩は悶え苦しんだのちに亡くなり、伊右衛門は家宝の薬を盗んだ咎で殺した小仏小平とお岩を一枚の戸板の両側に縛り付けて川に流した。これは、川に流したはずの戸板が、伊右衛門のところに偶然流れ着く「戸板返し」という場面で、舞台では戸板の両側に括りつけられた小仏小平とお岩が一人の役者の早替りで演じられるのであるが、本図では紙をめくると実際の戸板返しのように小仏小平とお岩が交互に顔を出すという「仕掛け絵」になっている。民谷伊右衛門の悪人度＝★★★★★月岡芳年《英名二十八衆句　福岡貢》：　「伊勢音頭恋寝刃」より。妖刀の青江下坂があまりにも切れるので、福岡貢は思わず殺人を重ねていく。　福岡貢の悪人度＝★★【1階・2階の一般展示】

1．盗賊・侠客・浪人：　

月岡芳年《芳年武者旡類　源牛若丸　熊坂長範》：　盗賊・熊坂長範の悪人度=★★★三代歌川豊国《東海道五十三次之内 京 石川五右衛門》：　大盗賊・石川五右衛門の悪人度＝★★★★★月岡芳年《東錦浮世稿談 神田伯勇 幡随院長兵衛》：　侠客。悪人度＝★三代歌川豊国《近世水滸伝 笠川髭造 中村福助》：　侠客・笹川繁造の悪人度＝★★渓斎英泉《仮名手本忠臣蔵　五段目》：　浪人・斧定九郎の悪人度＝★★★2．悪の権力者：　

歌川豊国《菅原伝授手習鑑 （車引）》：　右から松王、菅原道真を陥れた左大臣・藤原時平、梅王、桜王。藤原時平の悪人度＝★★★★★月岡芳年《平清盛炎焼病之図》：　熱病に苦しむ平清盛。中央に閻魔大王。平清盛の悪人度＝★★歌川広重《忠臣蔵 夜打三 本望》：　高師直（吉良上野介）の悪人度＝★★★★月岡芳年《つき百姿　垣間見の月》：　高師直（吉良上野介）の悪人度＝★★★★3．悪女と女伊達：　

三代歌川豊国《梨園侠客伝 女伊達 団七じまのおかち》：　女団七の悪人度＝★楊洲周延《東錦昼夜競　吉田御殿》：　徳川秀忠と江の娘・千姫。豊臣秀頼・本多忠刻の正室。出家して天樹院。千姫は吉田御殿の表役花井壱岐という侍を寵愛していたが、その花井が千姫お側の侍女竹尾と人目を忍ぶ仲となったので、花井を薙刀で追いかけて斬り殺し御殿の古井戸に投げ込んだ。千姫の悪人度＝★★★月岡芳年《新撰東錦絵　鬼神於松四郎三郎を害す図》：　お松の悪人度＝★★★★月岡芳年《英名二十八衆句　妲妃の於百》：　殺人や強盗を平気で行い、さらに武家のお家騒動まで引き起こした毒婦・お百は、仮名垣魯文の詞書によると、その素性は白面九尾の狐。お百の悪人度＝★★★月岡芳年《新撰東錦絵　白木屋於駒の話》：　髪結がお駒に呼ばれて振り返ると、髪を結ってもらっていた男性が髪ごと引っ張られている。中央の男性の後に｢諸国状差｣という文字が見えるが、状差とは柱や壁にかけて、郵便など書状を差し入れておく書状差しの意味である。白木屋於駒の悪人度＝★歌川国芳《浅茅原一ツ家之図》：　一ツ屋の老婆の悪人度＝★★★★★4．恋と悪:

月岡芳年《東錦浮世稿談　向疵与三　蝙蝠安》：　蝙蝠安を殺した与三郎の悪人度＝★★三代歌川豊国《東都贔屓競 二 清玄 桜姫》：　ストーカー・清玄の悪人度＝★★月岡芳年《新形三十六怪撰　清玄の霊　桜姫を慕ふ乃図》：　ストーカー・清玄の悪人度＝★★5．善と悪のはざま

月岡芳年《英名二十八衆句　古手屋八郎兵衛》：　古手屋八郎兵衛は紛失した主君の宝刀の捜索を命じられるが、捜査費用の工面に難渋する。見かねた女房・お妻は香具屋弥兵衛炉祝言を挙げて持参金を手に入れようとするが、事情を知らない八郎兵衛は恨みに思い、お妻を切り殺した。古手屋八郎兵衛の悪人度＝★★6．悪の妖術使い:

楊洲周延《東錦昼夜競　玉藻前》：　九尾の狐・玉藻前の悪人度＝★★★★　なかなか面白い企画展だった。特に「悪人度」の5段階表示がユニーク。

美術散歩　管理人　とら