東日本大震災で長らく一部不通となっていた「仙石線」が昨日全線再開し、東北線の枝線を使う「東北仙石ライン」が走るようになった。
というわけで、翌日の6月1日(日)には早起きして、早速「仙石線」に乗りに出かけた。「松島海岸」駅で降りて、復旧の状態を見て、帰りは塩釜で旨い寿司を食べて、仙台に戻って東北新幹線で帰京するという予定だったが、瑞巌寺をゆっくりと拝観したため、塩竈の亀喜寿司は次回のお楽しみということになってしまった。
車両は真新しいカラフルなもので、「塩竈」とか「松島」とかいうネーム入りである。
天気は上々、風も爽やかである。
まずは、今日の目的の「瑞巌寺」へ向かう。途中、「萩の月」で有名な「菓匠三全」と「阿部蒲鉾店」が並んでいた。
ここを左折して、突き当りを右折して瑞巌寺の前に出た。
あいにく本堂は工事中で見られなかったが、①庫裡、②仮本堂、③御霊殿、④宝物館を、④→③→①→②の順番で見て回った。
1.宝物館(青龍殿) 第1室には、入口に鉈彫りの円空仏があり、大勢の人が手で触ったからか、顔がすべすべになっていた。
この第1室の奥には、鎌倉時代円福寺開山法身・2代大覚像、伊達家歴代藩主図像、各種の茶碗が展示されていた。
この部屋の圧巻は、《
伊達政宗甲冑倚像》で、朝鮮出兵時27歳の甲冑姿を再現した等身大の木造で、遺言により両眼が付けられているが、右目は半眼になっていた。この像は、左右に配置された政宗の正室・
陽徳院愛姫寿像と長女・
天鹿院五郎八姫木像で囲まれていた。
これらの他に、北条政子が見仏上人に寄進したという水晶の舎利と舎利容器も出ていた。
第2室に入ったところには、現在工事中の本殿内部の大きな「唐戸」が出ていたので、前に置いてあった椅子に座ってじっくりと眺めてきた。本来は見られない反対側の面を見たらしい。一部に欠損した部位があったが、これは修復せずに現状保存するとのことだった。
第2室の大部分は企画展「松島名所図・真景図展」で、松島を描いた屏風・絵巻・版本などが多数並んでいた。
2.陽徳院御霊屋(寶華殿): 結構な坂道を登ると、丘の上に豪華絢爛たる墓堂が見えてくる。この寶華殿の公開は平成27年度で終了ということだから、ラストチャンスを生かすことができた。
これは、伊達政宗の正室・陽徳院田村氏愛姫(1568-1653)の墓堂で、1660年孫の綱宗によって造営されたものである。宝形造・銅板葺、2.72mの勾欄つきの回廊を廻らし、正面に向拝と木階を備えている。外面は黒漆で塗られ、桟唐戸や蟇股は金で極彩色に彩られ、飾金具が付いている。残念ながら、内部は公開されていなかった。
坂を下った先には、陽徳院が政宗の死後に住んでいた建物があったが、これは非公開だった。
係員に頼んでこの建物にに通じる道から写真を撮らせてもらった。左手には有名な「陽徳院のコウヤマキ」があった。
3.庫裡:
庫裡とは庫裏とも書かれ、禅宗寺院の台所である。ここへは、靴を脱いで上がる。すぐ前に、カラフルな観音菩薩像が立っていた。
畳の間には、位牌の中央に不動明王(当山101世鵬雲東搏の作)。奥二基一対の位牌には藩祖・政宗に殉死した20名の法名、手前二基一対の位牌には2代・忠宗に殉死した16名の法名が刻まれている。
(↓と↓↓)は伊達家歴代藩主の位牌である。
4.仮本堂(大書院): ここには工事中の本堂から移された宝物を、真近かで拝観することができた。
まずは、瑞巌寺の三代開山像。
中央は、瑞巌寺が圓福寺という天台宗のお寺から禅宗になったときの住職、法身性西(ほっしんしょうさい)。右は瑞巌寺と名を改め臨済宗妙心寺派となった折の住職・雲居希膺(うんごきょう)、左はその弟子で瑞巌寺の諸相を整えた住職・洞水東初(とうすいとうしょ)である。
次は瑞巌寺の御本尊「聖観世音菩薩」。
そして大位牌(右:瑞巌寺殿=藩祖・政宗、左:大慈院殿=2代・忠宗)。
さらに「扁額」。
部屋の側面には、得明筆の《豊干虎図》
部屋の反対側には、「鷹の間」の写真復元襖。
ここのパネルの説明が面白かった。
仮本堂(大書院)の外面には、墨絵の間の「写真複製襖」がギッチリ。
・《龍虎図》写真復元襖(↓、↓↓)雲に龍 竹風に虎
・《猪頭和尚》写真復元襖
・《寒山拾得図》写真復元襖
5.工事中の本堂:
通常は見ることのできない裏側の鬼瓦が、工事中なので見えている。
工事中の本堂内の杉戸絵・襖絵のパネルが出口への通路にズラリと並んでいた。
・(杉戸絵)
・(鷹の間)
・(菊の間)
・(墨絵の間)
・(文王の間)
・(上段の間)
帰りは山門から参道へ抜けたが、津波はここまで来たとのことで、現在、その修復工事が進行中だった。
お昼は、「白石温麺 @宗房庵」(↓左)と「牡蠣饂飩 @きくや」(↓右)。それぞれに良い味だった。
瑞巌寺でゆっくりしすぎたので、塩竈は時間切れとなり、JR松島海岸駅で仙台からの東北新幹線を1時間遅いものに変更してもらい、仙石線に飛び乗った。
良い美術散歩だった。
美術散歩 管理人 とら
【参考】
仙台・福島美術館 @仙台美術散歩 2015その1