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前回の「第七章」はこちら。
75.明治41年11月16日 三四郎(第七十五回)八の一: 広田先生から預かって野々宮さんに返すはずの20円を使ってしまった与次郎が弱っている。三四郎が用立てることになり、二人は雨の中を追分の蕎麦屋に行って愉快に酒を飲んだ。 長い間外国を旅行して歩いた兄妹の絵がたくさんある。双方とも同じ姓で、しかも一つ所に並べてかけてある。美禰子はその一枚の前にとまった。 「ベニスでしょう」 これは三四郎にもわかった。なんだかベニスらしい。ゴンドラにでも乗ってみたい心持ちがする。三四郎は高等学校にいる時分ゴンドラという字を覚えた。それからこの字が好きになった。ゴンドラというと、女といっしょに乗らなければすまないような気がする。黙って青い水と、水と左右の高い家と、さかさに映る家の影と、影の中にちらちらする赤い片きれとをながめていた。すると、 「兄さんのほうがよほどうまいようですね」と美禰子が言った。三四郎にはこの意味が通じなかった。 「兄さんとは……」 「この絵は兄さんのほうでしょう」 「だれの?」 美禰子は不思議そうな顔をして、三四郎を見た。 「だって、あっちのほうが妹さんので、こっちのほうが兄さんのじゃありませんか 三四郎は一歩退いて、今通って来た道の片側を振り返って見た。同じように外国の景色をかいたものが幾点となくかかっている。 「違うんですか」 「一人と思っていらしったの」 「ええ」と言って、ぼんやりしている。やがて二人が顔を見合わした。そうして一度に笑いだした。美禰子は、驚いたように、わざと大きな目をして、しかもいちだんと調子を落とした小声になって、 「ずいぶんね」と言いながら、一間ばかり、ずんずん先へ行ってしまった。三四郎は立ちどまったまま、もう一ぺんベニスの掘割りをながめだした。先へ抜けた女は、この時振り返った。三四郎は自分の方を見ていない。女は先へ行く足をぴたりと留めた。向こうから三四郎の横顔を熟視していた。83.明治41年11月25日 三四郎(第八十三回)八の九: 展覧会場で話す原口画工と美禰子、そして野々宮と三四郎。文中に出てくる三井画工のヴェラスケス模写作品は、和田英作の《マリアナ公女》。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2015-03-12 21:38
| 近代日本美術
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