図解 名取春仙の三四郎 第一章

　有名な夏目漱石の小説「三四郎」は、1908年9月から12月まで、東京朝日新聞に117回にわたって連載されたものである。今回、106年ぶりに朝日新聞に再掲載されたのを機会に、名取春仙が描いた挿絵について、本文と照合しながら、それぞれの図解を試みた。

1．明治41年9月1日　三四郎（第一回）一の一：　車中で寝ている三四郎の前の席では、京都から乗った女と背中に灸のあとのある老人が話している。挿絵右下の子供の玩具は、女が京都の蛸薬師のそばで買ってきたもの。2．明治41年9月2日　三四郎（第二回）一の二：　汽車は名古屋止り。女は三四郎に名古屋へ着いたら宿屋へ案内してくれと言いだした。三四郎には断る勇気が出なかった。挿絵は二人が乗った列車が名古屋駅に着くところ。3．明治41年9月3日　三四郎（第三回）一の三：　三四郎と同宿した女が、浴室の入口で「流しましょうか」と帯を解きだしたので、三四郎は湯槽を飛び出した。宿帳には、自分のことは正直に、女のところにはでたらめを書いた。4．明治41年9月4日　三四郎（第四回）一の四：　名古屋駅で別れた際に、同室で寝た女は三四郎に「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と言って笑った。車掌の鳴らす口笛が響き渡り、三四郎が乗った東京行き列車は動きだした。5．明治41年9月5日　三四郎（第五回）一の五：　筋向こうに座っている男（広田先生）は髭を濃くはやし、面長で鼻筋がまっすぐに通っている。白地の絣の下に、白い襦袢を重ね、紺足袋をはいていた。年齢は四十ぐらい。6．明治41年9月6日　三四郎（第六回）一の六：　髭の男は豊橋駅で窓から水蜜桃を買い、三四郎にも勧めた。二人は水蜜桃を食べているうちに親密になっていろいろな話をした。7．明治41年9月7日　三四郎（第七回）一の七：　広田先生は「豚を縛って動けないようにしておいて、その鼻の先へごちそうを並べて置くと、動けないものだから、鼻の先がごちそうに届くまでは延びてくる」という話をした。8．明治41年9月8日　三四郎（第八回）一の八：　挿絵は、浜松駅の窓から見た西洋人夫婦。まっ白な着物の女はたいへん美しい。広田先生は「こんな顔をしてこんなに弱っていては、日本は滅びるね」と予言された。【参照1】青空文庫「三四郎」

【参照2】図解　名取春仙の三四郎　第二章

美術散歩　管理人　とら