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この展覧会のアーティスティックディレクターは独創的なアーティストとして有名な森村泰昌。企画者としては自他ともに素人であることを認めているが、それだけに従来異なる一本筋の通ったヨコトリとなっているのではないかと思って見に行った。
![]() 今回の展覧会のテーマは“すべての人々と共に「芸術」という名の舟に乗り込み「忘却」という名の大海へと冒険の旅に出ること”となっている。簡単にいえば「忘却」と「再発見」がテーマである。そのことを忘れずに各会場を回っていくこととした。 [横浜美術館前] 序章1:アンモニュメンタルなモニュメント ・ヴィム・デルボア《低床トレーラー》2007年: ![]() [横浜美術館グランドギャラリー] 序章2:世界の中心にはなにがある? ・マイケル・ランディ《アート・ビン》2014年: ![]() 案内の女性から、今日制作者が自ら階段を登って「芸術ゴミ」を捨てるという。もちろん、このようなバカバカしいパフォーマンスにつき合っているほどもの好きではない。 折角のゴミ箱だから「燃えるゴミ」と「燃えないゴミ」に分別して、環境保護へのメッセージを発信してもらいたかった。それでなければこの作品自体がゴミであり、環境破壊の役割を果たす反社会的作品であると云われかねない。 [横浜美術館] 第1話:沈黙とささやきに耳をかたむける ・マレーヴィチ《シュプレマティズムの素描(断片)》 : マレーヴィチはロシア革命支持に回っているが、彼の神秘的で精神主義的な芸術観は、社会主義の唯物論や実用主義思想と折り合うはずもなく、厚遇されなかった。 展示されていた彼のモノクロの小作品などは「忘却の海」に沈んでいったということなのだろう。 ・木村浩《言葉》4枚組: ![]() ・フェリックス・ゴンザレス=トレス《無題(NRA-全米ライフル協会)、無題(青い鏡)》: ![]() 会場にドンと置かれた二つの紙の山は、一つは赤地の紙に黒枠が印刷されたもので、ライフルに血と死を暗示している。これに対する青地の紙は銃のない安全な社会の暗示なのだろう。 「銃規制」に反対する米国社会を意味しているということになれば、これは開拓史時代を「忘却」できない遅れた米国社会にたいする皮肉ということになる。 [横浜美術館] 第2話:漂流する教室にであう ・釜ヶ崎芸術大学: ![]() 時間が少し先に飛ぶが、横浜美術館を出ると、その前の広場には長い行列ができていた。 ![]() パンフレットを配っていた若い関西弁の女性が、「親子丼300食が無料で振る舞われるのでドーゾ」と勧められたのでので、ちょっと心が動いたが、家内同伴だったし、小雨もぱらついてきたので、「釜ヶ崎芸術大学はもう卒業したので・・・」と冗談めかしてそのミューズに答えると、敬意をこめて「釜芸のご出身ですか」ということばが帰ってきた。「釜芸のミューズ」の方、ゴメンナサイ! [横浜美術館] 第3話:華氏451はいかに芸術にあらわれたか ・ドラ・ガルシア《華氏451度(1957年度版)》2002年 ブルゴーニュ現代美術館: ![]() レオナルド・ダ・ヴィンチが鏡文字で手稿を記録したのは、他人に読み取られないようにするためだった。実際、会場で隣にいた若いカップルの男性が「これはロシア語だ」とのウンチクをたれていたので、同行の女房の手鏡を借りて見てみると、チャントした「英語」だった。 ちなみに、この小説は、人々は「考える」ことが許されず、本の所持や読書が禁じられ、享楽的で表面的な快楽にのみ身をやつすことを強いられながら、それを不幸とも不自由とも感じておらずむしろ幸福であると思っている架空の社会における人間模様を描いた作品。 題名は本の素材の紙が燃え始める温度(451 °F≒233℃)を意味している。公式[F=32+9/5×C]を忘れていた人は、今回の「忘却」をテーマにしたヨコトリ2014に出演できるかも・・・。 焚書ということになれば、秦の始皇帝やナチスドイツの例がすぐに思いだれるが、旧日本軍も精華大学で行ったといわれている。 ・大谷芳久コレクション「大日本帝国時代の詩歌」1938-1944年: 現代美術画廊「かんらん舎」のオーナー・大谷芳久の書籍コレクションの展示。戦中に出版された詩文の多くは戦争や軍への讃歌であり、ベストセラーとなったが、戦後はその多くが消えることとなった。 しかし関係者によって「忘却」され、忌避されたはずの右翼的傾向が、最近の戦争を知らない政治家たちによって復活されているのことは、多くの犠牲のもとに獲得したわが国の「平和主義」さえも「忘却」されつつあることを如実に示している。人間は「忘却」能力に優れた動物なのである。 #北原白秋「大東亜戦争 小国民詩集:アジヤの青雲」1943年、朝日新聞社(参照) ![]() 一、仰げよ、この空 アジヤの青雲 今こそ輝け、御稜威は涯なく アジヤ、アジヤ、すなはち日本、正義をかざせば 立ちたり十億、挙つて奮はん。 アジヤ、アジヤ、アジヤの青雲。#高村光太郎「特別攻撃隊の方々に」1944年、竜星閣(参照) ![]() ・エドワード&ナンシー・キーンホルツの「ビッグ・ダブル・クロス」1987-1989年 個人蔵: ![]() [横浜美術館] 第4話:たった独りで世界と格闘する重労働 ・福岡道雄《飛ばねばよかった》1966年: ![]() ・福岡道雄 《何もすることがない》: ![]() ・毛利悠子《アイ・オー ある作曲家の部屋》2014年: ![]() ・吉村増信《豚;pig’Lib;》↓左: お尻から下で環切りとなっており、その断面はロースハムとなっている。動物愛護の精神を意図的に「忘却」して、ハムを製造し、それを食べる人間の矛盾。「いただきます」という言葉は「他の命を頂きます」だということを若い人に教え続けていかなければならない。 ![]() 最近の人間が粒粒辛苦の結果であることを「忘却」して、農家の方々が精魂込めて作られた米を「いただきます」とも言わないで食べ始めるのと同様に・・・。 [横浜美術館] 第5話:非人称の漂流 ・《法と星座・Turn Coat / Turn Court》: ![]() 角をまがったところの「青いテニスコート」の小窓からは「赤い法廷」が覗ける(↑左上)。テニスコート(↑右上)を出ると、そこは刑務所の出口(↑右下)。ここで初めてすべてが刑務所内だったことに気付く。 刑務所内には、法廷(court)もあれば、テニスコート(court)もある。 英語のTurn Coat とは立場を変えることであり、Turn Court とは裁判をひっくり返すという意味である。 「刑務所では、裁判の判決もテニスの審判の結果も簡単にひっくり返る」というこことを「忘却」してはならないと学んで出所してくるのである。 [横浜美術館] 第6話:おそるべき子供たちの独り芝居 この章とテーマ「忘却」との関係は今一つ理解することができなかったが、ひとまず旧来の方法を「忘却」した独創的な作品群としておく。 ・ジョセフ・コーネル 《カシオペア #1》など ・ウォーホルの「絶頂絵画」シリーズ ・グレゴール・シュナイダー《ジャーマン・アンクスト》: ![]() 重い扉をあけて入った蒸し暑い部屋の中は、泥で一杯。作者の制作意図は「自分がどこにいるのかすら忘れてしまうような制御不能の状態、認識不能な状態に陥らせること」だという。 換気が悪くて気持ち悪くなって出てきてしまった。ここでは観客に健康被害が発生する可能性が高い。「忘却」してしまいたい部屋である。 [横浜美術館 カフェ] 第7話:光にむかって消滅する ![]() 作品たちは、外からの光を一杯に浴びていたが、「光に向かっての消滅」というイメージは大げさすぎるような気がするし、「消滅」と「忘却」を混同するわけにもいかず、これらの展示と「忘却」との関係に首をひねった。 このカフェの横扉から、外に出た。最後の「第6話」や「第7話」では、展覧会の意図をくみ取るように考えながら見てきたため、すっかり疲れてしまった。 第8話のトヨダヒトシと高山明の作品は、[市内各所】で期間限定で展示されている。また第9話は、1Fのレクチャーホールと札幌国際最芸術祭(10月開催予定)と書いてあり、番外のようである。 また、第11話「忘却の海に漂う」の内外アーティスト16名の作品と、第12話「洪水の後」の福岡トリエンナーレ出展アーティスト6名の作品はバスで連絡している[新港ピア】に展示されているとのことである。 こういう主催者側の都合に基づく分散開催は、きわめてcustomer-unfriendlyである。 私は、横浜美術館だけで今回の展覧会の内容と限界を十分に確認したので、「第8~11話」はすべてパスすることとした。 食事はマーフイズ4Fのフードコートで簡単に済ませた。 ![]() 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2014-09-21 14:34
| 現代アート(国内)
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