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2014年3月5日(水)22時からのこの番組のキャッチフレーズは、「名画の秘められた驚きの真実が明らかに」である。
3月2日の「日曜美術館・アートシーン」や19時のニュースで流されたこの衝撃的ニュースは、実は以前からNHKが「独占取材」してまとめ上げていたこの番組の前触れに過ぎなかったのである。 この番組の進行役は、いつものように渡辺あゆみさんであるが、実際のストーリーは浮世絵の専門家である小林忠氏と浅野秀剛氏で作られたものだった。 この巨大肉筆美人画には、27人の群像が描かれているが、子供以外はすべて女性である。場所は深川の料亭の2階。女性が「通い夜具」を運ぶところが描かれているのは、当時の料亭では遊女が客をとったからである。 左下の子供はネコを指さしているが、そのネコはすぐ右の女性の着物の裾にじゃれている。廊下を左に曲がったところに描かれている青い着物の女性の左手は、観る者の眼を右側の火鉢を囲む女性たちへと誘っていく。絵の左上方の女性たちは「拳あそび」をしており、左端の青い着物の女性は下のスズメを指差している。 このようにこの絵ではいくつかの人物群に分けて描かれているが、それらは互いに呼応する素晴らしい構成となっている。それぞれの女性の大きさは、歌麿の肉筆美人画の大きさとほぼ等大で、細密に描写されている。 この絵の制作時期は、「笹紅」が描かれていることから、これが流行した享和2年(1802)-文化3年(1806)頃と推定される。 次は、この絵の流転の物語。 まず、明治12年に栃木市の寺で鑑賞された「書画骨董」の目録の中に、「雪月花圖 三幅対」が載っている。また、栃木市の旧家には、明治時代に個別に撮られた《深川の雪》↓・《品川の月》・《吉原の花》の写真が残っている。 《品川の月》↓は、1903年に、アメリカの大富豪チャールズ・ランク・フリーアが競売で落札し、現在はワシントンのフリーア美術館にある。 3点の肉筆画のスペックを比較すると、以下のようである。 ・《品川の月》147 x 319 cm、天明8年(1788)制作栃木市では、2007年に歌麿の《女達磨図》、2010年には《三福神の相撲図》と《鍾馗図》が発見されているが↓、これらは《吉原の花》と同時期に制作されたものである。 また、有名な狂歌師・四方赤良が「雪月花」を詠みこんだ狂歌↓が、歌麿の《品川の月》の右上の欄間に掛けられている。 江戸に戻った歌麿を待ち受けていたのは、松平定信による寛政の改革で、贅沢は禁止され、出版についても制限を加えられていた。蔦屋は身上半減、山東京伝は手鎖50日をいいわたされ、歌麿にも危険が及びそうになってきた。 このため、寛政3-4年頃に、歌麿の2回目の栃木滞在が実現し、《吉原の花》を描いたと思われる。この絵には「歌麿のたくらみ」が隠されている。この掛軸を開いてくると、まず上部が目につくが、ここに描かれているのは、髷を「片外し」に結った御殿女中の宴会である↓。 画中画も細密に描かれている。2階の床の掛軸は、人気絵師・英一蝶の実在の絵(↓)。一蝶は幕府の怒りを買って、島流しを経験したこともある。 これに対して、歌麿は名前を絵文字で表して対抗したが、寛政8年にはこれも禁止されたため、歌麿は名もなき市井の女性たちの働く姿を描き続けた。 歌麿の3度目の栃木滞在は、《吉原の花》を描いた13年後である。その理由は、130年前のパリに居たゴンクールが書いた書物から知ることができる。「歌麿は投獄を恐れて地方都市に滞在し、そのお礼に《深川の雪》を描いた」というのである。 歌麿がこのように「雪月花」を完成できたのは、自己の人生の骨格を造り上げたことになり、本人にとっては、まことに幸せなことだった。これは「人間賛歌」であり、歌麿のラスト・メッセージでもあった。 歌麿は、文化元年(1904)5月に入牢3日、手鎖50日の刑を受け、文化3年9月に死去した。 歌麿は今でも栃木に生きている。一つには、3年前から歌麿が花魁を引き連れて舟に乗ってやってくる「歌麿祭り」であり、もう一つは市内に展示されている「月」と「花」の原寸大高精細複製画パネルである。私が栃木を訪れた際に、「月」のパネルを見たことを思い出しながら、この放送を視聴し終えた。 【参考】 栃木県教育委員会では、以前から「歌麿の肉筆画大作《深川の雪》を探しています!」という お尋ねサイトを作成していたが、今回の発見に合わせて、栃木市で3月8日から、 「品川の月」「吉原の花」高精細複製画土日祝日特別公開を行う予定とのことである。下野新聞には、今回の件に関する地元・栃木市民の反応が載っている。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2014-03-06 07:37
| 浮世絵
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