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木島櫻谷(このしまおうこく)という京都画壇の画家の名前は、東京藝術大学大学美術館で開催された「夏目漱石の美術世界展」に、《寒月》1912年↓という月下雪中の淋しい狐を描いた屏風絵が出ており、それに対して漱石が「写真屋の背景のようだ」と酷評していることとともに知った。
軸装の歴史画としては、孝行をしなかったことを悔いて机の上の巻物を涙で濡らしている山田古嗣を描いた《懐旧》と都から追放され北の荒野の羊飼いになっている蘇武を描いた《望郷》が出ていた。 額装の作品としては、海外に出品した《厩》1931年と《孔雀》20世紀が出ていたが、両方とも新しい感覚の作品で、好感が持てた。 第二展示室には、大きな6曲1双屏風がひしめき合っていた。 住友家のために描いた「四季の金屏風」は、《雪中梅花》・《柳桜図》・《燕子花図》・《菊花図》。このうち、芽吹いた柳と満開の山桜を描いた《柳桜図》↓がマイベスト。次は《菊花図》。 《秋草図》は屏風の左隻のみだったが、どこかで見たような作品だった。衝立《震威八荒図》は「松に鷹」のお定まりの構図。 孫娘のために描いたという《白羽二重金銀彩梅樹模様打掛》は素晴らしかった。白地に金泥で描かれた梅の木、銀を使って描いた蕊などをしばらく眺めていた。孫娘の結婚時には櫻谷は亡くなっていたとのことだが、今年も玄孫の晴れの日に使われるという。 置いてあった図録で、今期に出ていなかった作品について勉強した。 護長親王の家来が敵の頭を剣にさして舞い、それを矢が突き刺さったままの親王が盃を口にしながら眺めている《剣の舞》は迫力があった。武田勝頼の妻の最後の姿を描いた《一夜の夢》もナカナカだった。 動物画としては虎に追われる鹿を描いた《咆哮》、風俗画としては《行路難》、風景画としては《峡中の秋》、そして自画像と思われる《画三昧》が良いと思った。 この図録の中に泉屋博古館学芸課長・野地 耕一郎氏の「漱石先生、そんなに櫻谷の絵はお嫌いですかー明治後期の日本画における写実と色彩をめぐって」という論説があったので、読ませていただいた。 野地氏は、”漱石は日本画へのリアリズム導入による「わざとらしさ」が鼻についたのではないか”とされていた。 また、漱石自身が描いた南画風の絵が素朴な趣きのものであることや、漱石が横山大観の《瀟湘八景》を観て「気の利いたような間の抜けたような趣。大変に巧みな手際を見せると同時に、変に無粋で無頓着なところを備えている」と書いていることから、”漱石は「ヘタウマ」の作品が好きだったようだ”と述べておられた。 野地氏は、結論として、”櫻谷の絵は「ヘタウマ」の真逆の「ウマヘタ」である”と云いきっておられたが、これは「云い得て妙」であると感心した。 たしかに櫻谷の絵は上手いが、オリジナリティに乏しいという点が一番の問題である。 画家にとって独創的な絵を制作するということが最重要なことがらであり、他の画家と区別がつかないような絵をいくら上手く描いても、歴史の評価に耐えていくことはできないのだと思う。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2014-02-07 23:35
| 近代日本美術
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