増山雪斎《虫豸帖》と円山応挙《写生帖》 ＠東京国立博物館本館

　東博本館の総合文化展に、木村蒹葭堂や大田南畝などの文人との交流で知られる伊勢松山藩第6代藩主・増山雪斎（1745－1819）の描いた博物図譜が出ていたので、写真を撮ってきた。

　小動物のうち足のあるものを「虫」、足のないものを「豸（ち）」と呼ぶとのこと。《虫豸帖》は季節ごとに4帖に仕立てられ、種類ごとに分類されている。

　雪斎は、江戸時代の図解百科事典「和漢三才図絵」を参照して、同定していたらしい。

　雪斎が写生した虫の死骸は、小箱に入れられて上野寛永寺の「蟲塚」におさめられているとのことである。

　この《虫豸帖》は、2013年度の「東京都指定有形文化財」に指定された。

1．蝶2．馬大頭（オニヤンマ）、赤卒（アカトンボ）など3．天牛（カミキリムシ）など
4．蜘蛛　一方、写生を重視する写実画家といえば円山応挙である。雪斎の作品の隣りには、応挙の作品が陳列されていた。

　《写生帖　丁帖》には増山雪斎の《虫豸帖》と同じような小動物が描かれている。　一方、《写生帖　乙帖》には各種の動植物が幅広くスケッチされていた。　当然のことながら、精度を重んずる博物学者のスケッチと雰囲気を大切にする写実画家のスケッチとは、趣きが異なっている。応挙の《写生帖　乙帖》のサルのスケッチの毛描きを見れば、そのことは明らかである。
美術散歩　管理人　とら