上海博物館 中国絵画の至宝 後期@ 東京国立博物館東洋館

　後期だけに出てくる作品は13点なので、あまり時間をかけずに観ることができた。やはり双眼鏡・単眼鏡は必携アイテム。前期の記事はこちら。

第1章 五代・北宋─中国山水画の完成

・一級文物　郭熙《幽谷図軸》北宋時代・11世紀：　日本には請来されなかった郭熙の作品をじっと眺めた。山容全体が雲のように描かれている（雲頭皴）は納得。　五代・北宋初期絵画にも見られた山の頂きを仰ぐ「高遠」、山を前から後に窺う「平遠」に加えて、郭熙は対象の厚み、すなわち「深遠」まで表現していることについては、理解しようと努めてみた。

・《渓山図巻》南宋時代・13世紀：　↓の部分は前期に見た王詵《 煙江畳嶂図巻》の構図と似ており、北宋山水の到達した姿であるといえる。第2章 南宋─詩情と雅致

・一級文物《人物故事図巻》南宋時代・12世紀：　有名な歴史画。↓はその左半で、金に捕われていた徽宗と鄭皇后の霊柩の前には、南宋初代・高宗の母である韋氏大后の龍輿と金の護送使が描かれているのが分かる。なお、右半には南宋の迎えの儀礼使たちが描かれていた。・《西湖図巻》南宋時代・13世紀：　輪郭を淡墨でぼかしていく技法が使われており、夢幻的で抒情的な山水となっている。・《虞美人図頁》南宋時代・13世紀：　墨による輪郭を使わない没骨法によって「ひなげし」が描かれている。第3章 元─文人画の精華

・一級文物　王淵《竹石集禽図軸》元時代・1344：　渇墨（こすれ）による清楚な趣の表現、精妙な羽毛の描写が見どころ。・一級文物　張渥《九歌図巻》元時代・1346：　戦国時代の楚の歌謡を集めたもの。見事な線の白描画。歌謡をまとめた屈原の像をトップにして、最高位の神「東皇太一」、雲と雨を司る「雲中君」、湘水を統治する「湘君」↓・「湘夫人」、寿命を司る「大司命」・「小大司命」、日をたたえる「東君」、黄河の神「河伯」、山の精「山鬼」、国のために命を捧げた「国殤」、儀式の歌「礼魂」の11編からなっている。・一級文物　王蒙《青卞隠居図軸》元時代・1366：　渇筆（こすれ）、潤筆（水分を含んだ筆）、さまざまな皴法を使った複雑な画面である。・一級文物　盛懋《秋舸清嘯図軸》元時代・14世紀：　職業画家の作品であるが、南宋院体画に元代文人画を取り込んでいる。描かれているのは竹林の七賢の一人・魏の阮籍とのこと。・張遠《瀟湘八景図巻》元時代・14世紀：　瀟湘八景図の成立に関わる重要作品とのこと。↓の酒旗は「山市青嵐」を表している。第4章 明─浙派と呉派

・呉偉《秋江帰漁図軸》明時代・15-16世紀：　荒々しい筆致の浙派の作品。・陳淳《花卉図冊（12開中6開）》明時代・16世紀

第5章 明末清初─正統と異端

・朱耷《花鳥図冊（10開中5開）》清時代・1705

・龔賢《奇峰秋雲図軸》清時代・17世紀：　↓左。白黒がはっきりとした画面。西洋版画の影響が考えられるとのこと。

・王翬《嵩山草堂図軸》清時代・1694：　↓右。正統派。この画家が描いた《康熙帝南巡図巻》は、2012年に東博で開かれた「北京故宮博物院200選」で見ている。　前期・後期をしっかり見たので、中国絵画の流れをかなりつかむことができたと思う。

美術散歩　管理人　とら