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前回は初日の5月14日(火)に来訪。観客は少なかったが、とても良い内容だったので、青空文庫などで漱石の作品を読み直して、長大なブログ記事を書いた(こちら)。 今回の再訪は、6月30日(日)。前回とうって変わった多数の観客。しかし年配者が多いのは前回と同様である。最近の若者は漱石や鴎外の作品になじみがないのだろうか。
キャプションや説明のパネルに到達するのも大変な場内の混雑だったので、展示作品リストで、初日には展示されていなかったものや展示替えされている作品を確認して、それだけを見ていくことにした。 序章 「吾輩」が見た漱石と美術: ここでは、橋口五葉《吾輩ハ猫デアル 上編ジャケット画稿》が前回と別なものが出ていたが、前回の画稿を覚えていないので豚に真珠。展示替作品は以前の作品をパネル表示していただくとありがたいのだが・・・。 第1章 漱石文学と西洋美術: ここは展示替え皆無なので、素晴らしい作品を静かに眺めていくだけ。 第2章 漱石文学と古美術: この章は大分変わっていた。伝狩野元信《楼閣山水図》東京芸大蔵の漱石の批評は「禅味を帯びたる絵」とのこと(生きた絵と死んだ絵)。 狩野常信の《昇龍・妙見菩薩・降龍》は、虞美人草に出てくる《雲龍》の類似作品。小説では表装の藍が強調されていたが、出品作は穏やかな黄褐色。 俵屋宗達《禽獣梅竹図》は東博蔵ということだが、私自身は以前に見た記憶がない。4幅対の2幅ずつが入替えで展示されていることだったが、前半の「鷺図」と「兎図」は初日には出ていなくて見逃した。今期に出ていたのは「竹図」と「梅図」↓。左幅の竹の太さが印象的で、右幅の梅の枝の細さとの対照が際立っている。 酒井抱一《宇治蛍狩図》については、この書簡の中で「俗な絵」との厳しい評価だったらしい。この絵は私自身、2009年に東博で見ており、ブログに記事と写真をアップしているのでこれを引用する。 酒井抱一筆《宇治蛍狩図》↓が急に現れて驚いた。ちょっと派手過ぎますね~。現在、朝日新聞朝刊に連載中の乙川優三郎「麗しき花美」によると、「抱一筆」 の多くが其一らによって描かれたものであるという。この画を見ているうちに、なんとなく疑念が湧いてくるのを抑えきれなかった。浦上春琴の《墨菊》は、漱石が日記に書いている《菊竹》の類似作品としての展示。 瀧和亭の《修竹双鶴》東京芸大蔵は、やはり大正二年に漱石が「博物館」で見ており、「雅邦より上品な絵」と褒めている。金地の屏風絵で、竹林の中にいる鶴2羽と子鶴1羽が描かれていた。修竹とは長い竹のこと。 伝王淵《蓮鶺鴒図 唐絵手鑑:筆耕園のうち》東博蔵のセキレイは見事で眼を引く作品。 第3章 文学作品と美術 『草枕』『三四郎』『それから』『門』: 3‐1:「草枕」関連作品 与謝蕪村の《山林曳駒図》文化庁蔵は草枕のイメージそのもの。 平福百穂《田舎嫁入》東京芸大蔵には、那古井のお嬢さんが馬上の花嫁姿で峠の茶屋にさしかかったところが描かれている(↓部分)。ただし、この作品は1899年に描かれたもので漱石が見ている可能性は低いとのことだった。 横を向く。床にかかっている若冲の鶴の図が目につく。これは商売柄だけに、部屋に這入った時、すでに逸品と認めた。若冲の図は大抵精緻な彩色ものが多いが、この鶴は世間に気兼なしの一筆がきで、一本足ですらりと立った上に、卵形の胴がふわっと乗かっている様子は、はなはだ吾意を得て、飄逸の趣は、長い嘴のさきまで籠っている。池大雅の《富士十二景図》も展示替えされていたようだったが、DBのどれに相当するのかは? 前述のように入替え前の作品の写真をパネル表示しておいてほしかった。 漱石お気に入りの高泉性敦の墨書《副》は見事。 余は書においては皆無鑒識のない男だが、平生から、黄檗の高泉和尚の筆致を愛している。隠元も即非も木庵もそれぞれに面白味はあるが、高泉の字が一番蒼勁でしかも雅馴である。今この七字を見ると、筆のあたりから手の運び具合、どうしても高泉としか思われない。《草枕絵巻 巻一》は、山口逢春が描いた「那古井の温泉場」の絵に変っていた。 3-2:「三四郎」関連作品: 浅井忠の《べニス》は裏面に変っていたようだった。 3-3:「それから」関連作品: 特記すべき新作品なし。 3-4:「門」関連作品: ここにはやっと登場した酒井抱一の《月に秋草図屏風》東博寄託。「それから」に出てくる作品は、抱一の印が展示作品とは違うが、きわめて似た作品だとのことである。金地に、銀の月、青の桔梗が目立つ見事な屏風である。秋草としては、萩、芒、女郎花も描かれているようだ。絵葉書購入。 納戸から取り出して貰って、明るい所で眺めると、たしかに見覚のある二枚折であった。下に萩、桔梗、芒、葛、女郎花を隙間なく描いた上に、真丸な月を銀で出して、その横の空いた所へ、野路や空月の中なる女郎花、其一と題してある。宗助は膝を突いて銀の色の黒く焦げた辺から、葛の葉の風に裏を返している色の乾いた様から、大福ほどな大きな丸い朱の輪廓の中に、抱一と行書で書いた落款をつくづくと見て、父の生きている当時を憶い起さずにはいられなかった。渡辺崋山の《驟雨扇面図》は東京芸大蔵。 すると坂井は、用はもう済んだと云う風をして、店から出て来た。「何か御求めですか」と宗助が聞くと、「いえ、何」と答えたまま、宗助と並んで家の方へ歩き出した。六七間来たとき、「あの爺い、なかなか猾い奴ですよ。崋山の偽物を持って来て押付ようとしやがるから、今叱りつけてやったんです」と云い出した。宗助は始めて、この坂井も余裕ある人に共通な好事を道楽にしているのだと心づいた。そうしてこの間売り払った抱一の屏風も、最初からこう云う人に見せたら、好かったろうにと、腹の中で考えた。第4章 漱石と同時代美術: リストでは出ていないはずの佐野一星《ゆきぞら》↓に再会。漱石は「枝ダラケ、鳥ダラケが面白い」としていたあの絵である。私はあまり好きになれないのだが、漱石はその斬新さをかったのだろう。 木島桜谷の《寒月》に対する漱石評は「写真屋の背景」と厳しいが、私もこのキツネの絵はあまりいただけなかった。 今村紫紅の《近江八景》は、漱石は「自分の性に合わない」としているが、今季出ていた《比良暮雪》↓と《粟津晴嵐》は私の性にも合わない。 寺崎広業《瀟湘八景》: 漱石=子供のような大人の丹念さが重厚で好きや!; とら=お気に入り。今期出ていたのは《江天暮雪》・《漁村夕照》・《平沙落雁》・《瀟湘夜雨》。 赤城泰序《白い砂》は東博で見た記憶がある。記事と画像をこちらから引用する。 ・赤城泰舒《白い砂》 1912年平福百穂《アイヌの子供》東京芸大蔵や結城素明《無花果》東京芸大蔵は初見。 第5章 親交の画家たち: 浅井忠《元禄風俗(男装)》東京芸大蔵の他は、橋口五葉《ホトトギス第百号表紙画稿》だけ。 第6章 漱石自筆の作品: 今回出てきた漱石の書《人閑桂花落》と《得健堂先生白寿詩》はいずれも上手い。 第7章 装幀と挿絵: 橋口五葉の画稿2点が新出。 二回にわたって見たが、なかなかユニークな企画展であることを再確認した。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2013-07-04 22:57
| 国内アート
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