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この展覧会には二度行ってきたので(ブログ記事)、興味深く聴いた。
タピスリー《貴婦人と一角獣》の中世美術としての解説の主役は、木俣元一教授で、このタピスリーに関する小説を書き始めている原田スマ氏もフランスへの旅を通じてこの番組に参加されていた。 1. 制作者は? 「サンポ・シャペル教会」のステンドグラスは1248年に制作されたものだが、バラ窓だけは1500年頃に制作されている。このバラ窓のステンドグラスの制作者と「アンヌ・ド・ブルターニュのいとも小さな祈祷書」の制作者と《貴婦人と一角獣》の制作者が同一人物であるとされている。 その根拠としては、上記の祈祷書の中に《貴婦人と一角獣》の「味覚」に登場する侍女の逆転像が描かれていることがあげられた。番組では、実際に両者の画像が並べて提示されていたが、たしかに姿勢は似ているものの品格がかなり異なる女性像であるため、100%納得することはできなかった。 2.依頼主は? 中世のタペストリー職人は、依頼主の意図をどうやって表現するかに腐心していた。依頼主の同定については、《貴婦人と一角獣》の旗などに描かれた紋章が手掛かりとなる。 この紋章がトルコの国旗に似ているところから、フランスに亡命したオスマントルコの王子がフランス女性に恋したのだと考える説もあったが、これには具体的な根拠がない。 一方、「サン=ジェルマン・ローセーヌ教会」のバラ窓のステンドグラスにも同じ紋が描かれている。そして、このバラ窓はアントワーヌ・ル・ウィストが寄進したものである。このことから、タピスリー《貴婦人と一角獣》の依頼主はル・ウィスト家の関係者であると断定され、とりわけ当主のアントワーヌが依頼主だったのではないかと推定されている。 第6図に書きこまれた最初の文字「A」がAntoineの頭文字「A」であり、最後の文字「I」が婚約者Jacquelineの頭文字「J」=「I」であることがこの推定の裏付けとなっている。 3.第6面の「我が唯一の望み」の意味は? 一角獣は本来獰猛な仮想動物であるが、純潔の乙女の前にくると急におとなしくなり、膝に脚をかけて甘えるとされている。キリスト教では、このことから、一角獣をキリストに見立て、乙女を聖母マリアに見立てて、前者が後者の胎内に宿ることを暗示することがあった。 「五感」とは、版画《アホウ姫たちの舟》で個々に示されているように、次元の低い体性感覚である。さらに、外界との接触の程度の差によって、「五感」に序列が付けられている。最低が猥雑な知覚の「触覚」であり、次は「味覚」、「嗅覚」、「聴覚」の順であり、最高は聖書を読む知覚であることから「視覚」となっている。 これに加えて「第六感」があるが、これは「五感」を支配する内面の感覚、すなわち『心』である。 カーテンはマリアを象徴するモチーフであるが、愛のテーマでもある。「我が唯一の望み」という言葉は指輪にも刻まれる文でもある。このため「我が唯一の望み」とは「女性に対する愛」を表しているといえる。 タピストリーの「視覚」↑左では、貴婦人が一角獣のタテガミを撫でている。これは「一角獣狩り」=「女性の恋人狩り」に代表される「宮廷風の愛」の文脈で捉えることができる。 事実、このタピストリーで甘えた表情をしている一角獣は貴婦人のスカートの下に脚を入れている! ちなみに、本展覧会を二度も見にいった私は、番組で指摘されるまでこのことには気付いていなかった。中世美術の場合には、女性の下半身まで注視しなければならない。 5.「貴婦人と一角獣」への旅、関連小説の執筆、解釈の多様性 原田氏の旅は、クリニュー中世美術館やブザック城などこのタピスリーに関連する場所へもの。 書きかけの小説のテーマは、このタピスリーがブザック城からクリニュー中世美術館に移されたころの城主ポーリーヌとこのタピスリーを愛した小説家ジョルジュ・サンドが主役となり、何百年も守られてきたこのタピスリーを今後どのように伝えていくかという議論に焦点が当てられるとのこと。 最後に木俣教授は、このタピスリーには「愛のテーマ」以外の主題があるかもしれないと結ばれた。学者らしい慎重な発言だった。このタピスリーの物語を、会場で白昼夢のように思いついてブログに書いてしまった私にはちょっと耳の痛い言葉だった。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2013-05-26 13:03
| 西洋中世美術
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