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【追記】 2013.5.17 再見してきた。ここで気づいたことを赤字で追加する。 ・タピスリー「貴婦人と一角獣」の歴史: 1500年頃、ル・ヴィスト家の当主・アントワーヌ二世の注文により、「アンヌ・ド・ブルタニューの時祷書の画家」によって下絵が描かれ、南ネーデルランドでタピスリーが織られたものと考えられている。最初の妻・ジャックリーヌ・ラギエとの結婚がこの注文の動機となったものではないかとのことである。 このタピスリーはアントワーヌ二世没後に娘が相続し、その後の代々の所有者も分かっているようだが、一般に知られるようになったのは、19世紀初めに、小説家・プロスペル・メリメが歴史的建造物保護局視察官としてフランス・グルーズ県のブサック城にあることを見出し、小説家・ジョルジュ・サンドがその千花模様(ミル・フルール)の美しさに打たれて広く紹介したことによる。 その結果、1882年に、25,500フランで国家買い上げとなり、フランス国立クリニュー中世美術館に収蔵されるに至ったのである。 ・タピスリー「貴婦人と一角獣」の解釈: 6面のタピスリーが9角形の広いホールにグルリと掛けられているさまは壮観である。ホール全体が真っ赤に染まっているように感じられる。 まずは第一ラウンド。 第1面「触覚」、第2面「味覚」、第3面「嗅覚」、第4面「聴覚」、第5面「視覚」、そして第6面「我が唯一の望み」を順番にキャプションに書かれた「見どころ」に従って鑑賞した。特に、五感それぞれを示す直接的な表現↓に注意して見た。 貴婦人の衣装やしぐさ、獅子や一角獣のポーズ、彼らが捧げ持つ家紋旗や幟、彼らが身に着けた家紋入りのショールや楯、舞台回しらしき猿(模倣の象徴)や犬(忠誠の象徴)の動きなどを丹念に観た。 そうしているうちに、この6面全体を通しての一つのストーリーが頭の中に浮び上がってきた。 いうなれば「とら」の真昼の幻想である。 この場面は、持ち込まれた「ル・ヴィスト家との婚約話」に傾きつつも、「一角獣姿のお気に入りの臣下」にも未練が残っているという貴婦人の「心」を表す心象風景ではないかと考えてみた。 繋がれている猿の姿は、彼女の「心」がまだ決まっていないことの隠喩のような気がする。 第2面(味覚、↑右)の旗手は、後脚で立ち上がり「ル・ヴィスト家」のショールを肩にかけた獅子と一角獣となっており、本来貴婦人の臣下である獅子と一角獣は「ル・ヴィスト家」にも忠誠を誓っているようである。 そして貴婦人は侍女が捧げる器から取り上げた菓子を鸚鵡(好色の象徴)に与えている。 手前に描かれている猿は、鸚鵡と同様に菓子を味わっているが、この猿は好色な鸚鵡の模倣表現であるとともに、次第に節制心を失っていく貴婦人の「心」の模倣隠喩ともなっているようである。 この場合の嗅覚の主体は花の香りを嗅ぐ猿となっている。この猿は、ついに節制を失ってしまった貴婦人の「心」の表現のようである。 この面の獅子と一角獣は、休めの体勢ながら、相変わらずル・ヴィスト家の幟や旗を持ち、ル・ヴィスト家の楯まで身につけている。 第4面(聴覚、↑右)の貴婦人は、立ったままパイプオルガンを弾き、侍女はフイゴを操作している。 獅子と一角獣がこの音楽に魅了されている。 この場面には猿は描かれていない。「心」としては、貴婦人と猿とが一体化してしまったのだろう。 この場面の貴婦人の顔が、ひどく下品でイヤラシイことに気付いた。これは他の5面における高貴ともいえる上品な貴婦人の顔貌とまったく違っている。 一角獣は貴婦人の愛情を体感しつつ、ナルシストのように鏡に映る自分の姿に見入っている。一角獣はもはやル・ヴィスト家の幟や旗を持っていない。この場面では、ル・ヴィスト家に忠誠を尽くす理由がなくなっているのである。ナルシストの一角獣が貴婦人の「かりそめの愛」に応えたのかどうかは、当人たちしか知らない問題である。 やきもちを焼いた獅子はソッポを向いている。そして、獅子の手にはル・ヴィスト家の旗が残っている。 【追記】 他の面に4本描かれている樹もこの第5面ではフユナラとセイヨウヒイラギの2本だけで松とオレンジは描かれていない。 この面にも猿は登場していない。この有様は、猿の出る幕ではない。 【追記】 ところが、再見時に、第5面の最下部に猿の頭だけが描かれていることを見つけた。↑の画像では良く見えないが、Wikipediaの画像から切り出したものは、↓の左から3番目の画像である。この猿は、興味からこの情景を覗いているのだろう。 第5面でいったん貴婦人に愛されかかった一角獣も、この最終面ではもとの臣下に戻ってしまっており、素知らぬ顔でル・ヴィスト家の旗を奉じ、忠誠心を表している。 敷物を敷いた台に行儀よく坐っている忠誠な犬や草の上に珍しくおとなしく坐っている模倣好きの猿は、貴婦人の「心」がル・ヴィスト家に嫁ぐことに決まったことの暗喩なのだろう。 この猿は、第1面から第6面を通して、この貴婦人の揺れ動く「心」をわれわれに伝えてきてくれたのである。お疲れさまでした! 幕屋上部に書かれた「我が唯一の望み」という文字は大文字アルファベットの「A」と「I」で囲まれている。「A」はアントワーヌ2世、「I」はジャックリーヌのイニシャルらしいとの説明だった。 この第6面は「第六感」に相当する場面のようである。「第六感」とは、体性的な感覚を超越した「心の動き」であって、「道徳的意義=自己の欲望を抑える心の動き」と「世俗的意義=自己の願望に従う心の動き」を含む両義的なものである。 この貴婦人は、一角獣で象徴される臣下へのかりそめの愛情を道徳的な「心の動き」で制し、世俗的な「心の動き」に従って、アントワーヌ2世との結婚に臨んだのではないだろうか。 そうだとすると、アントワーヌ2世がジャックリーヌの臣下へのかりそめの愛を知っていて、このタピスリーの制作を依頼したということは考えにくいので、真の注文主はそのことを知っていたジャックリーヌの父親ということになる。 貴婦人は、侍女が捧げ持つ宝石箱から、豪華な首飾りを直接触らないように、白布を使って取り出そうとしている。この第6面の貴婦人は、他の面の貴婦人と異なって、首飾りを身につけていない。 会場の説明には、「これは、宝石を選んで身につけるところでしょうか。それとは逆に、貴婦人が身につけていた宝石を外して箱に戻すところかもしれません」と書かれていたが、「貴婦人が白布を使って宝石で飾られた首飾りを持ち上げており、直接手にとってはいない」ところにヒントがあるように思う。 私見では、この豪華な首飾りは婚約者から贈られたもので、まもなくこの幕屋に到着して、自分の首に掛けてくれるはずの婚約者を待ちかねて、箱の中の首飾りを直接手で触ることなく持ち上げて確かめてみた瞬間を描いたものであると思う。 忠臣の獅子が大声で吼えているのは、この貴婦人のフライングを諌めているのではあるまいか。 婚約者の到着を待てないで贈り物をチェックしてしまったこの貴婦人は、最後になって「節制という道徳的な心の動き」を失ってしまったのかもしれないが、一角獣との一件にくらべれば、カワイイ道徳的違反である。 ・関連展示: メイン会場の外周のスペースには、『高精細デジタルシアター:貴婦人と一角獣へのオマージュ(貴婦人と侍女、一角獣と獅子、タピスリーに潜む動物たち、五感と「我が唯一の望み」)』、『自然の表現:植物と動物』、『一角獣の図像学: 想像の動物誌』、『服飾と装身具』、『楯形紋章』、『中性における五感と第六感』、『1500年頃のタピスリー芸術の展示』、さらには『展示コーナー: 貴婦人と一角獣、美の謎に迫る』があり、十二分にエンジョイすることができた。 以下、関連展示品の画像をいくつかアップする。 1.《一角獣の形をした水差し》↓ 動物: 兎33、犬9、狐4、ジェネット3、仔羊4、山羊1、猿5、子獅子4、豹1、チータ1、幼い一角獣1外周スペースの途中からメイン会場を覗くと、そこは真っ赤な劇場空間であった。そして先ほど白昼夢で見たばかりのドラマ「貴婦人と一角獣」の各場面を回想した。そして、この夢を少しでも長く持続させるため、カラフルな図録は敢えて購入しないこととした。そこには、数々の専門的解釈が書かれているだろうと想像したからである。 連休には、バレーを習っている孫娘たちを連れてきたい。彼女たちなら、踊りながらタピストリーの中に入り込んで、鳥たちからこの物語の真相を聞きだしてきてくれるかもしれない。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2013-04-25 15:23
| 西洋中世美術
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