記事ランキング
ブログパーツ
最新のトラックバック
外部リンク
以前の記事
2021年 01月 2020年 11月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 more... カテゴリ
全体
国外アート 西洋中世美術 ルネサンス バロック 印象派 印象派後期 現代アート(国外) 東洋アート 仏像 国内アート 江戸絵画(浮世絵以外) 浮世絵 近代日本美術 戦争画 現代アート(国内) アート一般 書籍 音楽 映画・写真 講演会 北海道の鈴 東北の鈴 関東の鈴 中部の鈴 関西の鈴 中四国の鈴 九州の鈴 ヨーロッパのベル アジアのベル アメリカのベル オーストラリアのベル 未分類 フォロー中のブログ
検索
その他のジャンル
ファン
ブログジャンル
画像一覧
|
その1とその2からの続き。
第5章 山雪の造形実験 II - 山水・名所・人物 ・山雪《瀑布図》: 左上隅から落ち始めた水は、いったん岩に隠れながら、洞窟の中に現れ、合わせて三段の滝となって、一気に崖を落ちて行くという奇景である。 このような奇妙な滝は山雪のいろいろな風景画の一部として登場しているので、この造形は「山雪の実験」の一つだったのだろう。 下部の岩場に生えている屈曲する松の木は、後述する《雪汀水禽図屏風》にも描かれているが、これ自体は京狩野の伝統的造形である。 ・山雪《武家相撲絵巻》: 平安時代と鎌倉時代の相撲を描いた珍しい絵巻である。 ストーリーは3話。 ①平安初期の皇位継承相撲: 文徳天皇の後継を相撲で決着させた古き良き時代の相撲。惟喬親王方・紀名虎 vs 惟仁親王方・伴能雄(善男)。後者の勝ち。相撲の組手の名前とし書きこまれているのは、内搦、外搦、大渡懸、小渡懸といった現在の四十八手のどれに相当するのか分からないものばかりだが、絵巻の図を見て↓のように名付けてみた。 一番右の河津三郎の相撲には、有名な「河津掛け」が使われておらず、むしろ右から三番目の伴能雄(善男)の足が「河津掛け」のように見える。 第6章 山雪と儒教・仏教 ・山雪《観音天夜叉図》: ・山雪《観音天大将軍身図》: いずれも明兆の図とは全く異なるオリジナリティの高い見事な作品となっている。 右図は、かたわらに楊柳を挿した水瓶が描かれている楊柳観音、左図は滝が描かれた滝見観音。それぞれが頭光と身光の二重の光輪で囲まれ、これが雲の下端から地上の天龍夜叉や天大将軍身に繋がっている。 観音は地上のありとあらゆるものに身を現じて救済してくれるものであるが、そのことを以下の三十三身として表現したのが《三十三観音図》であり、この補作図では「楊柳観音⇒天龍夜叉」、「滝見観音⇒天大将軍身」という変身(普門示現)を表している。 仏身、辟支仏身、声聞身、梵王身、帝釈身、自在天身、大自在天身、天大将軍身、毘沙門身、小王身、長者身、居士身、宰官身、婆羅門身、比丘身、比丘尼身、優婆塞身、優婆夷身、長者婦女身、居士婦女身、宰官婦女身、婆羅門婦女身、童男身、童女身、天身、竜身、夜叉身、乾闥婆身、阿修羅身、迦楼羅身、緊那羅身、摩候羅迦身、執金剛一身この図によって山雪は法橋に叙任されたとのこと。さもありなんと思わせる名品である。 ・山雪《維摩居士図》: 伸びた爪、毛深い手背、耳毛など、ちょっとグロテスクな維摩居士である。眉毛、髭、払子の線は、薄墨と胡粉の波線を幾重にも引いている。このしつこさは、後記する《雪汀水禽図屏風》の波の描写に通じる。全体としての迫力は、蕭白の先駆けであると云える。 ・山雪《四季耕作図》: 江戸狩野の「耕作図」は余白が多く、農具・農法が不自然なものが多いのに対し、京狩野の「耕作図」は細部までゆるがせにしないとのことである。 人物が141人も描きこまれている。描かれた子供たちを見ているだけでも楽しい。 第8章 極みの山雪ワールド ・山雪《楼閣山水図屏風》: ・山雪《龍虎図屏風》: 左隻左端の滝の水が、右隻に流れ込み、右端では波頭が上に飛び散っている。この水の激しい動きは山楽の激しい風の動きと同様である。 虎は、一応龍を睨んでいるが、龍は虎から目を離してしまっている。この龍のだらしなさは山楽の龍と正反対である。虎の毛描きは上手いが、その迫力は山楽の虎にはるかに及ばない。永徳から山楽に伝わった桃山美術の豪快さは、ここに至って失われ、技巧だけが上滑りしているようにも思われる。 ・山雪《寒山拾得図》: ・山雪《盤谷図》: 滝からの水流は、海に達し、三角形の岩や盤状の岩、垂直に屹立する岩、さらには髑髏のような巻貝形の岩に波しぶきを浴びせている。 盤谷とは、中國に実在する土地の名だが、隠棲するのにふさわしい仙境のイメージとのことである。上述の《楼閣山水図屏風》も、これと類似した雰囲気であるが、この時期の山雪にはこういった気分になっていたのだろうか。 山雪は、義弟の不始末の責を負わされて、入牢したことがあったとのことだが、あるいは、その事件と関係があるのかも知れない。 ・山雪《蘭亭曲水図屏風》: 有名な画題であるが、金地濃彩の派手な屏風にまとめ上げている。全長14mを超える八曲二双の大作。《長恨歌絵巻》同様、ゆっくり時間をかけて見た。 曲リくねって流れる水には雲母が使われているため、輝いて見える。 豪華な柵、柳・竹・蘇鉄・棕櫚という種類の異なる植物、酒を注ぐ場所、茶を点てる場所、終点の橋、杯を回収する童子などを描き、単調になりかねない図に変化を与えている。 王羲之は、↓図に2度登場する。最初は、水亭の先端に坐している人物で、水面を泳ぐ鵞鳥に視線をやっている。次は、↓図の左端で、虎皮の上に坐し、二人の童子にかしずかれている。 左隻の千鳥や曲がりくねった松は、山楽から引き継いだ京狩野のエネルギーを象徴し、右隻の鴎や髑髏岩は、山雪自身の隠棲的な気分を表象しているのではないだろうか。 歴史に残る大展覧会。期間も短く、巡回なしの展覧会です。お見逃しなきように。 【註】 その1、その2 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2013-04-12 14:06
| 江戸絵画(浮世絵以外)
|
ファン申請 |
||