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永井荷風の小説は今までに読んだことがなかった。今回、ステーションギャラリーで「木村荘八」の展覧会(ブログ記事はこちら)を見て、荘八が荷風の「濹東綺譚」に挿絵を描いていたことを知って、初めて荷風に興味を持った次第である。
この展覧会には東京国立近代美術館蔵の「濹東綺譚 挿絵」が34点出ていたが、下記の点が気になった。 1.「挿絵」の中に、明らかに銀座をテーマにしたと思われる絵が混ざっていた。 2.出展されていたのは「濹東綺譚 挿絵」35点のうち34点で、「挿絵17」がなかった。 ということで、当初、ネットの青空文庫で「濹東綺譚」の文だけを読んで、それぞれの挿絵が収まるべき場所を考えてみた。 これによって、この小説が荷風が描きつつあった小説「失踪」と荷風自身の私小説「濹東綺譚」がミックスされたものであることが分かり、大部分の挿絵の位置も判明したが、どうもシックリとこないものもあった。 そこで、近所の区立図書館で角川「文庫濹東綺譚」改版初版(2009.3.25)を借りてきて、以上のことをチェックしてみた。 その結果、この小説の図版は次の順になっていることが判明した。 ・表紙: (荷風は、浅草から山谷掘の古本屋へ行き、帰途巡査に誰何され、派出所に連れ込まれる。) (小説「失踪」の腹案。教職を辞め、家出した51歳の種田順平が以前の女中で現在は浅草のカフェーの女給となっているすみ子と出会う。) (お雪の家に付いていった荷風は、お雪を馴染みにしてしまった。住所は寺島町七丁目六十一番地(二部)安藤まさ方。↑の地図に六十二番地が描きこまれている。) (小説「失踪」 の続き: 種田はすみ子が住んでいる玉の井近くのアパートに行って泊まる。) (銀座にうっかり行けない事態が起こった荷風は、頻繁にお雪の家に通いだした。) (荷風は、お雪が歯医者に行っている間、蚊の多いお雪の家で、留守番をしたりしている。) (お雪が、借金を返したら、かみさんにしてほしいと云い出したが、荷風は齢だからと断る。実際に荷風が通っていた理由は、小説「失踪」の実地観察、うるさい近隣のラジオからの逃避、銀座のような繁華街に対する嫌悪からだった。) (荷風の玉の井散策の描写。小説「失踪」のその後: 種田とすみ子の関係が深まり、すみ子がおでん屋を開くことになる。) (秋になり三日ばかり外へ出なかったが、結局またお雪のところに出かけた。お雪が一緒に浅草に行こうというのを断り、買いたがっている袷代を渡して、お雪の家を出た。) (荷風は、数日後にお雪を再訪したが、家の様子が全くちがっていて、長居できず、短時間で戸口を出た。 九月の十五夜にお雪が入院したことを知った。) (小説のタイトルの説明や以前の銀座の想い出↓など。) A. 荘八は挿絵を描く前に全文を読んでいたとのことであるが、挿絵がないことから考えると、第五章は書き直されたのではなかろうか。 B. 銀座がテーマの挿絵15、16が「作後贅言」に載っているが、これは当初第五章に載せるはずのものでなかったのだろうか。事実、第五章の文には銀座の話も残っている。挿絵17が欠落している理由も、この第五章の書き直しと関係があるのかもしれない。 なお、この文庫本には、詳細な注釈がついており、文の理解には役立ったが、地図や挿絵については一言も触れられていなかった。 荷風の年譜も付いていたが、留学などで父親から多大の世話を受けながら、遊蕩にはしり、家族とも義絶し、母親の葬儀にも出席しなかった荷風の人生を尊敬する気にはなれなかった。こういう人間に文化勲章授与した戦後の日本自体が正常でなかったのかもしれない。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2013-03-28 23:53
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