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![]() 若い方には、「木村荘八」という画家の名前になじみがないかもしれない。しかし、ちょっと年配の方なら、岸田劉生や萬鉄五郎との交流、春陽会における活躍、さらには「濹東綺譚」などの挿絵を通してこの画家の名前を知っておられるのではないかと思う。 ここでは内覧会で拝見した荘八の代表作のいくつかについての簡単な感想を章別に述べることにする。 Ⅰ.西洋美術への憧憬: エレベーターを下りたところに展示されている2点の家族の画↓は、明らかにゴッホやマティスの影響を受けている。 ![]() Ⅱ.劉生とともにーフュウザン会から草土社へ: 白馬会葵橋洋画研究所に通っていた荘八は、岸田劉生と知リあい、その影響を受けて北方ルネサンス的な絵画を描いている。 ![]() Ⅲ.春陽会の時代―前衛から懐旧へ: 劉生と袂を分かってからの荘八の作品には、変わりつつある東京をテーマにした大作の風俗画が目立ってくる。 ![]() その雰囲気を同席していた兄・壮太から聞いて、この画に再現したのである。しかし、画の右側で三味線を弾きながら唄っている人物は、小唄や三味線を得意とした荘八の姿のような気がする。荘八自身はこの会に出席していないのだが、自分自身をこのデカダンスの中に置きたかったのではあるまいか。 ![]() 会場のパネルには、描かれている人物についての詳細な説明があったが、奥の帳場に坐っているのが荘八本人、一番手前の下足番のモデルは画家仲間の横堀角次郎である。 階段の途中で行き違う二人の女性の足さばきがとても色っぽい。足袋裏の汚れもリアルに描かれている。 見るものの視線を階段の女性から、番台の荘八、その前の荘八お気に入りの女性、そして手前の二人の男性へと回転させていく画全体の構成は素晴らしい。木材の描写に仕掛けられている遠近法も見事である。 このチェーン店は、初代経営者の父・木村宗平の死後、次第に傾いて、大正の初めごろには「いろは牛肉店」は消失していており、荘八はこの画を懐旧の想いで描いたのである。 ![]() ![]() 今回は、その中でもっとも有名な1937年に永井荷風の新聞連載小説「濹東綺譚」(青空文庫はこちらをクリック)の挿絵35点中34点(画像は文化遺産オンライン:木村荘八で検索)が出展されており、ストーリーを追いながら、東京の下町風俗を独特のタッチで情緒深く表現した挿絵を楽しむことができた。また、この挿絵については、別報を書いた。 ![]() ![]() また画文集ともいえる明治から昭和にわたる「東京繁昌記」数十点(1955頃)の挿絵原画も出ており、その洒脱な絵と文に感心しながら見た。 「東京繁昌記」は《隅田川両岸一覧》、《佃島》、《東京の民家》、《芝浦》、《築地‐銀座》、《東西南北》、《戦後十年東京風俗》という章別になっており、さらに「続・東京繁盛記」である「師走風俗帖」の挿絵も沢山出ていた。 ↓は、「東京繁昌記」の扉絵、↓↓は環境汚染の進む神田川。 ![]() ![]() ![]() 岸田劉生、森田恒友、小杉放菴、萬鉄五郎といった画家たちは、いずれも修業時代には西洋風のリアリズムを学習しているが、次第に日本や東洋の伝統美に目覚め、画風を大きく展開させている。 木村荘八の場合には、こういった伝統美への回帰は、演劇の舞台を描いた油彩画や東京周辺を描いた挿絵によって、比較的早く達成されていたのであるが、彼はそれを土台にして新たな跳躍を模索していたのではあるまいか。 Ⅵ.周辺の画家たち: 荘八と交流のあった岸田劉生、中川一政、高須光治、椿貞雄、横堀各次郎、河野通勢、宮崎丈二のリアリズム作品が一点ずつ出ていた。それぞれ見ごたえのある作品だった。 ![]() 所要時間は、油彩画だけなら1時間、挿絵も見るなら2時間といったところだろうか。東京駅での待ち合わせ時間を利用したりして、ご覧になることを強くお勧めする。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2013-03-25 20:40
| 国内アート
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