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これは日本テレビ開局60年特別美術展。六本木の後は新潟県、愛媛県、宮城県、北海道に巡回する。
PRでは「これまでより一歩踏み込んだミュシャ展」となっているが、本当にそうなのだろうか。チラシ裏面のビジュアル↓は、1927-35年にチェコで描かれた《花を持つ娘ヤロスラヴァの肖像》である。 今回は映像で「スラヴ叙事詩」全20面が紹介されるということで、これを見るのが六本木に出かけた主たる目的であった。 まず展覧会の章立てと目立った作品を紹介するが、六本木商法の常として展示作品リストがないので、メモを取ることに多大の時間とエネルギーを取られた。 第1章 チェコ人 ミュシャ: 1907年頃の《パレットを持った自画像》、1885年の《妹アンナの肖像》、1880年の《妹アンジェラの肖像》、1920年の《息子ジリの肖像》、1917年の《人形を抱く娘ヤロスラヴァ》などの油彩ポートレイトは家族に対する愛情は感じられるものの、いずれもやや暗い色彩でチェコ人ミュシャの本質を表しているように思われた。 第2章 サラ・ベルナールとの出会い: アテネ公姫に扮するサラを描いた有名なカラーリトグラフ《ジスモンダ》をはじめとし、《椿姫》、《ロレンザッチョ》、《メディア》、《トスカ》などの演劇ポスター、ラ・プリュム誌用のカラーリトグラフ《サラ・ベルナール》には何回もお目にかかっているが、派手でミュシャ絶好調の作品群である。この辺には若い女性観客がひしめいていた。 第3章 ミュシャ様式とアール・ヌーヴォー: 花や植物などのモチーフや流麗な曲線の組み合わせを特徴とする有機的な装飾様式「アール・ヌーヴォー」と並行して、ポスターという新たなジャンルで優美な女性のイメージにエキゾティックな花の装飾モチーフをあしらったデザインは「ミュシャ様式」というニックネームで大衆に親しまれた。 このセクションには、主にミュシャの広告ポスターやパッケージなど商業デザインが沢山出ていた。ビスケット、香水、ショコラ、乳児食、ビール、自転車、印刷所などの宣伝である。以前に見たものが多かった。 ここで気になったのは1892年制作の大きな《ビクトリア女王即位60周年記念 ネスレ社奉祝ポスター》くらいである。 ミュシャは写真をたくさん撮っており、今回の展覧会ではたくさん展示されていた。その中でこの章に出ていたものに《ハーモニウムを弾くゴーギャン》が可笑しかった。ミュシャと親しかったゴーギャンがオルガンのような楽器を弾いているのであるが、彼の下半身はズボンもはいていない姿だった。 またここには有名な「装飾資料集」の図が10点も出ていた。2、3、33、43、52、54,60、63,67、71図である。舌を巻く巧さである。 途中に、映像があり、「市民会館市長ホール」、「プラハ城聖ヴィート大聖堂」、「ズビロフ城」などミュシャゆかりの場所が紹介されていた。 第4章 美の探求: 観賞用のポスターとしてデザインされた装飾パネル画がいくつも出ていた。大量生産されたミュシャのパネル画は買い求めやすく、人気があった。 さらに油彩画としては、1903年制作の《裸婦》と《バラ色の布をまとった裸婦》、1916年の《花に囲まれた女性:春》、1920年の《花に囲まれた理想郷の二人》が出ていたが、これらのミュシャ様式の軸となる女性のイメージには意識的に「スラヴ的要素」が取り込まれているように思われた。 第5章 パリ万博と世紀末: 1900年のパリ万国博覧会に際し、ミュシャはオーストリア政府の依頼で、ボスニアーヘルツェゴヴィナ館の内装を担当した。この準備のためにバルカン諸国を旅行したミュシャは、スラヴ民族の置かれた複雑な問題を実感した。祖国がオーストリアの植民地政策に苦しんでいる時に、この仕事を請け負う矛盾に苦悩したミュシャは、祖国とスラヴの同胞のために働く決意を新たにした。これが後に《スラヴ叙事詩》の構想となっていく。 ほぼ同時期、ミュシャは長年追求してきた神智学的な思想を極めるため、パリでフリーメイソンに入団、人類へのビジョンを構想した最初の作品として、「主の祈り」を出版した。この「主の祈り」については、表紙や何点かの挿絵下絵が出ていた。 ミュシャはチェコにフリーメイソン組織を発足させ、1923年にはその「最高大総覧」となっている。彼が1923年にデザインした《ゴブレット》もフリーメイソンに関係したものである。1925年の《入団証》も出ていた。 この時代はミュシャが自らの精神世界と向き合い、模索する時期でもあり、画には光と影の部分が現れ始めている。光の部分は、《宝石:トパーズ、ルビー、アメジスト、エメラルド》 1900年、ほの暗い1902年の《月と星:月、明けの明星、宵の明星、北極星》下絵、1905年の《百合の聖母》などで代表されるが、これらにも変化の兆しが表れている。 この章には、フーケと協同した宝飾品もいくつか出ていたが、ちょっと時代錯誤のように感じられた。 第6章 ミュシャの祈り: この章のトップには、1928-30年制作の《スラヴ叙事詩展ポスター》。 続いて《スラヴ叙事詩》の習作が多数出てきた。 #1(現故郷のスラヴ民族)、#2(スヴァントヴィットの祝祭)、#7(クロミジャージュのヤン・ミリーチ)、#8(ベツレヘム教会で説教するヤン・フス)、 #14(クロアチア総督ミクラージュ・シュビッチ・ズリンスキー総督によるシゲットの防衛)、 #17(聖アトス山)、 # 18(スラヴ菩提樹の下で宣誓するオムランディーナの若者たち)、#19(ロシアにおける農奴制廃止)で、#7の習作には小さいものと中ぐらいの大きさのものの二種類が出ていた。 #9(クジージュキの集会)の下半部の下絵が出てきたが、その上部は展示室の天井に達する大きさだった。 「スラヴ叙事詩」については、パネルや映像で研究してきたので、別報とする(その1、その2)。 ここに油彩画《スラヴィア》1920年、《リプシェ》1915-17年が出ていた。 市民会館市長ホール関係のものとしては、天井画《スラヴ民族の連帯》下絵の他、壁画習作《自力でⅠ》、《自力でⅡ》、《自力でⅢ》、《自由を夢見て》、《征服されたプラハ》が出ていた。 ヴィート大聖堂のステンドグラスの最終下絵が5点出ていた。中央の上から3枚と最下部左右の2点である。中央最上段は《聖キュリロスと聖メトディオス》、中央第2段は《聖ルミドラ》、中央第3段は《聖ルミドラの前で跪く聖ヴァーラフ》。最下段左は《聖キュロリスの死》、最下段右は《聖メトディオスの死》との説明があったので、理解できた。 《独立10周年第8回ソコル祭》、《脅威》習作、《南西モラヴィア挙国一致宝くじ》、《ロシア復興》などスラヴ色の強い作品の多くは再見。 三部作《三つの時代》は未完成作品であるが、その構図が出ていた。中央に叡智の時代、左に理性の時代、右に愛の時代と並べる予定だったとのこと。 未完成作品《創世記シリーズ》の<はじめに>や《ハーモニー》習作、《荒野の女》習作もあった。 総括すれば、これまでより半歩だけは踏み込んだミュシャ展だった。「スラブヴ叙事詩」の原画は、以前にBunkamuraや郡山市立美術館で《アトス山》を見ているが、今回はそれが一面も出ていないのが淋しい。 「スラヴ叙事詩」の原画は、少なくとも2013年12月31日まではプラハ市内のプラハ国立美術館・ヴェレトルジュニー宮殿大ホールで20面揃って見られるという(参照)。 とはいえ、そのためだけにチェコにでかけるのも大変である。なんとか、「スラヴ叙事詩」の原画を数面ずつ日本で見られるようにならないものだろうか。 今回の展覧会の映像では、モラスキー・クルム城に20点の「スラブ叙事詩」の原画が並んでいるところを見た。その映像で気づいたことだが、《アトス山》の縦の長さ4.05 mは、その左右にある画よりも小さく、天井との距離は十分にあった。 それにくらべ、前述のBunkamuraや郡山市立美術館では、《アトス山》が天井一杯になっていたように記憶している。 ちなみに「スラヴ叙事詩」で一番高いのは6.20 mである。 そうすると「スラヴ叙事詩」の原画を展示するには新国立美術館のような天井の高い施設でなければなるまい。 【ミュシャ関連記事】 ・ミュシャ「生涯と芸術」展: Bunkamura 1995.10、 郡山市立美術館 1996.11 .アルフォンス・ミュシャ展ー憧れのパリと祖国モラヴィア: 日本橋高島屋 2007.01 ・ミュシャ美術館: プラハ 2007.03 ・アルフォンソ・ミュシャ館: 堺市文化館 2007.04 ・生誕150年 アルフォンソ・ミュシャ展: 三鷹市美術ギャラリー 2010.05 ・スラブ叙事詩 その1、その2 2013.03 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2013-03-22 13:06
| 国外アート
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