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![]() ![]() ちょうど学芸員・橋秀文氏のギャラリー・トークに間に合ったのは幸いだった。というのは、氏のトークは専門家としての見識がこもっているのみならず、館蔵の美術品に対する情熱があふれ出んばかりのものだったからである。 最初の部屋には、上記の2点の他に、これら高橋由一に描かせた、美学美術史、写真術に精通した旧津和野藩当主・亀井茲明(これあき)や高橋由一の息子・高橋(柳)源吉さらに肖像画の主・西周に関連するパネル、絵画、資料が展示されている。 説明の橋さんは、「額縁が違うのは当然だが・・・」とさらりと流されたが、私と同行の家内は、神社蔵の額縁には亀井家の家紋↓がしっかりと刻まれていくことを確認した。 ![]() 展示されていたロンドン・ナショナルギャラリーの《ラファエロ作「ユリウス二世」模写》↓や《デューラー作「四人の使徒」模写》には、亀井の並々ならぬ技量が示されている。 ![]() 今回発見されたものは亀井家から神社に奉納されたものであり、従来からのものは西家から博物館に寄贈されたものとのことであった。橋さんは、「本人も1枚欲しかったのではなかろうか」という分かりやすい説明をされた。 亀井茲明撮影の写真を基に制作された高橋源吉の水彩画《東京市街景況油絵草稿》28点(世田谷美術館蔵)が並んでいたのは壮観だった。同じく亀井茲明の写真に基づく高橋源吉の油彩画《大婚二十五年奉祝景況図》25点は、現在は宮内庁尚蔵館に保管されているとのこと。 資料として出ていた亀井茲明撮影の写真帖「大婚二十五年祝典景況之図」(亀井温故館蔵)がその写真を集めたものなのだろう。亀井茲明の写真プリント・高橋源吉の水彩画と油彩画を並べたところを見てみたいものである。 次の部屋には、美術学校に西洋画科が置かれなかったために結成された明治美術会の画家たちの作品が並んでいた。浅井忠や高橋源吉らがそのメンバーであり、脂派とよばれるだけあって、確かに暗い画が並んでいた。 説明はなかったが、最近話題になった川村清雄の《三河武士騎馬突撃之図》や《筍と水仙》には思わず目が行った。 続いて、美術学校や白馬会で活躍した黒田清輝ら外光派の画が並んでいた。確かに、黒田の《逗子五景》の中には、明るい色彩の波が描かれていた。 次の部屋は大正時代の画家。萬鉄五郎は《日傘の裸婦》のようなフォーブの画に始まり、《山水図》のような南画風の文人画に移行していることが展示で示されていた。これは松濤美術館の「素朴美の系譜」展でも示されていた日本人洋画家の日本画への回帰である。 珍しい高村光太郎の油彩《上高地風景》が出ていた。学生時代に山岳部にいた私は描かれている山名を同定しようと一瞬がんばったが・・・。 佐伯祐三の作品が6点も並んでいた。この画家は再渡仏した後、結核と精神疾患で亡くなっているが、彼の鋭いタッチの画にはそういった病的な陰があるため、私個人はあまり好きではないが、逆にファンも多いようである。 次の部屋には、岸田劉生の油彩《古屋君の肖像》、《野童女》、《童女図》、《近藤医学博士之像》が並んでいた。これらの展示ができて「涙が出るほど嬉しい」と橋さんが云われたのには、ちょっと驚いたが、このような学芸員の情熱はわれわれにも十分に伝わってくる。 横に展示されていた屏風《寒山拾得》は岸田劉生にも存在した日本画回帰であるが、上述の《野童女》が顔輝の《寒山拾得》の影響を受けていることを考えると、東洋画回帰というほうが正確である。 関根正二が伊東深水と小学校の同級生であり、一緒に描いた画があるということは、今回初めて知った。これはこの展覧会での個人的な収穫。 ![]() 玉村方久斗は日本画出身の前衛画家で、《衣装》↓という軸は金泥と墨で描かれた経典の見返し絵のような技法なのに、テーマはきわめて抽象的・象徴的であり、そのミスマッチが面白かった。同じ画家の《葡萄図》は即興的であり、席画ではなかろうかとのことだった。 ![]() 次は、昭和。有名な古賀春江の《サーカスの景》と《窓外の化粧》はともに川端康成の寄贈品。この美術館には寄贈が多く、助かっているとの正直な話だった。 昭和といえば、安井曽太郎と梅原龍三郎が一つの時代を画しているが、ここには同じテーマを扱った神奈川県近美の《熱海野島別荘》と三重県美の《山荘夏日》が並置されていた。後者の方には人物も描きこまれていた。 次の部屋は学芸員氏曰く「贅沢な部屋」。多数の藤田嗣治と松本竣介の作品が連続して展示されている。今までこの二人の画家を並べることはなかったそうである。色彩は藤田の乳白色(後期には肌色)と松本の青色とは異なるものの、松本の陶器あるいは青磁のようなマチエールは藤田に触発されているものであることが分かる。ただし描かれたモチーフがまったく異なっていることは一目瞭然だった。戦争に対する二人の画家の相違については触れられなかった。 最後の部屋は、「石巻文化センター所蔵作品の東日本大震災による被災美術品の修復報告」だった。現地においては、美術品が無残な姿になっただけでなく、学芸員の中には被災された方もあったという。 ![]() この展覧会は、「修復に始まって修復に終わる」一見地味な展覧会だが、その間に挟まれている珠玉のような作品をこれほど多数展示された作品群も印象深かかった。明治から昭和前期までの約60名の画家の約170点の作品群は「神奈川版・美術にぶるっ!」展と云ってもおかしくない。 終わって、学芸員の橋秀文氏と修復士の伊藤由美氏とロビーで少しお話する機会があった。 その後、沢山の作品や資料を一点ずつ、時間をかけて観た。展示リストについて伺うと、「図録に載っている作品目録のコピー」を頂戴した。 ネットにも展示リストは載っていないという。御礼の気持ちで、頂いたコピーをスキャンして自分のHPの【美術アーカイブ】にアップした。こちらを開いて、「西周リスト」というバナーをクリックすると、今回の展示リスト(pdf)をダウンロードできます。 この素晴らしい展覧会は始まったばかりだが、お見逃しなきように。私はゆっくり見過ぎて、バスで帰るころには日没となっていた。 ![]() 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2013-02-04 20:08
| 国内アート
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