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![]() しかし、この画家の回顧展は、今回が初めてである。ということで、「エル・グレコ」の画集で十分に予習して、初日に、それも開館とほぼ同時に会場に入った。 同じ画題の画が、いろいろな美術館に所蔵されているので、すこし戸惑う。キャプションでオリジナルの作品はどこにあるのか、出品作が画家本人が描いたヴァリエーションなのか、それとも工房作なのかを明示しておいてほしかった。もっとも十分わかっていないものがあることは承知だが、今まで見てきたものとの関係が分かるだけでも消化不良が解消する。 以上の点は、図録には書いてあるようだが、いちいち図録を参照しながら見ていくと、時間がかかって仕方がない。 会場は、さすがにまだ空いていて快適な鑑賞が出来た。この展覧会のHPやフライヤーに載っているのは、その一部だけで、今まで見たいと念じていた作品にいくつも対面することができて、本当に良かった。 特に、マドリードまでは美術散歩の足を伸ばしていたが、エル・エスコリアルやトレドには行き損ねていたので、そこからの作品については、穴が空くほどに凝視してきた。 書き出せばきりがないので、まず画像をいくつかあげておく。 1.ティッセン=ボルネミッサ美術館蔵の《受胎告知》2点。 これは現地で見たので、再見ということになる。 イタリア時代の作品とスペイン時代の作品の色彩ならびに画面構成の見事な対照を楽しんだ。 いずれも精霊の象徴である鳩からの光がマリアに届いているが、↓左の画の鳩の下降速度が右の画の鳩にくらべて速い。 そして、これに対抗するかのように、画面下方には「燃える柴」が上に向かい、ケルビムたちも上昇している。 画面全体が縦長になり、マリア自身が10等身以上に伸びた姿になっているのも、この上下のダイナミズムに対応させたものなのだろう。 ![]() ![]() ![]() そうなると、この画は、単なる《最後の審判》だということになってしまう。確かに、【註】↓のエル・ エスコリアル修道院のTV番組でも、この画は《最後の審判》であるとされていた。 この画で一番おもしろいのは、地獄が巨大な魚「レヴァイアタン」の中に描かれている点である。 3.トレドのサン・ニコラス教区聖堂(サンタ・クルス美術館寄託)の《無原罪のお宿り》。 この画は礼拝堂の高い窓の下に配置して、窓からの自然光と画中の神聖な光とが一致するようにしたということだが、天井の低いこの美術館ではどうしようもない。 フロアに坐って見上げたが、見回すとそのようにしている人が少なくなかった。この画の前に、座布団を置いたら良いのではなかろうか。下から見上げると、聖母の顔も少し丸みを帯びてくる。 聖母の曲がった姿や極度な短縮法で描かれた天使の羽根の視覚効果で、全体が三次元動画のようにも感じられた。 挿入された画面左のトレドの風景、中央の純潔の象徴の花、そして右の蛇や鏡などの宗教的象徴の描写も見事だった。これらを仔細に観る際には、双眼鏡が有効だった。 ![]() Ⅰ-1.肖像画家エル・グレコ:(画像↓は記載順) ・54歳ごろの《芸術家の自画像》 ・イコンを描きこんだ《聖母を描く聖ルカ》 ・70歳時の傑作《修道士オルテンシオ・フェリス・パラピシーノの肖像》 ・光の劇的な効果が印象的な《燃え木で蝋燭を灯す少年》(【註】↓のカポディモンテ美術館展で別ヴァージョンを見た) ・内縁の妻・ヘロニマとも考えられている《白貂の毛皮をまとう貴婦人》 ![]() ・持物の表現が巧い洞窟内の《聖ヒエロニムス》 ・美しい12使徒連作内の《福音書書記聖ヨハネ》・《聖パウロ》・《聖ペテロ》 ![]() ・美しい聖母に別れを告げている《聖母の前に現れるキリスト》 ・聖母の美貌に目が行ってしまう《聖アンナのいる聖家族》 ・火刑の焼網に手を掛けながらの幻視を描いた《聖ラウレンティウスの前に現れる聖母》 ・珠玉の作品と高く評価されている《悔悛するマグダラのマリア》 ![]() ・画面右に救世主の誕生を天から告げられる場面を挿入した《羊飼いの礼拝》 ・ユダヤ教・キリスト教の聖地を描いた《シナイ山の眺め》 ・パルミジャニーノなどの版画を参考にしたヴェネチア時代の《キリストの埋葬》 ![]() ・同名の作品(イタリア時代2点、スペイン時代4点)の中の最晩年の作である《神殿の商人を追い払うキリスト》 ![]() ・《瞑想する聖フランチェスコと修道士レオン》: 画家のオリジナル、工房作、模写を含めると40点以上伝わっている人気作であるが、展示作はその最初の作品である。 ・トレド大聖堂の作品の後に制作されたレプリカの《聖衣剥奪》(画面左下に聖母・マグダラのマリア・小ヤコブの母の3人を描きこんだことと群衆の頭がキリストより上に画かれているため教会側の評価は低かった) ・ブタペストの作品に基づく工房作の《オリーヴ山のキリスト》 ・多数の同一ヴァージョンの中、工房の手が入っていると考えられる西美蔵の《十字架のキリスト》 ・プラド作品に基づいた画家と工房による再制作と考えられる《キリストの復活》 ![]() ・サン・ニコラス教区聖堂に由来する《聖アウグスティヌス》・《巡礼者としての聖ヤコブ》・《聖フランチェスコ》 ![]() ・サンタ・レオカディア・イ・サン・ロマン教区聖堂の《福音書記者聖ヨハネのいる無原罪のお宿り》 ・サン・ニコラス教区聖堂祭壇丸天井中央に置かれた《聖母のエリザベツ訪問》 ![]() ![]() これは絶対の「お勧め展覧会」である。そして画家のみならず当時のトレド市民のサポートにも感謝しなければならないだろう。 Copyright ©2013 * 美術散歩 管理人 とら * All rights resered 【註】 1992‐10 大原美術館 1993‐11 スコットランド国立美術館展 @伊勢丹美術館 1994-04 ブタペスト美術館展 @東武美術館 1995-06 ルーマニア美術館展 @三越美術館 2006‐04 プラド美術館展: 東京都美術館 2008-05 サンディエゴ美術館 2008-05 レジョン・オブ・オーナー美術館 2009-10 The ハプスブルク@国立新美術館 2010-05 ボストン美術館展 @森アーツセンターギャラリー 2010-06 カポディモンテ美術館展 @国立西洋美術館 2012-05 エル・ エスコリアル修道院 @欧州 美の浪漫紀行 2012-05 ティッセン=ボルネミッサ美術館 @欧州美の浪漫紀行 2012-06 カーディフ国立美術館 @欧州美の浪漫紀行
by cardiacsurgery
| 2013-01-20 16:36
| ルネサンス
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