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アートブロガーのTakさんのお世話・司会で開かれた本展監修者・山下裕二先生X本展主催者・広瀬麻美氏のスライドトークと鑑賞・撮影会。
![]() トーク会場は達磨さんが集合している部屋の真中に座布団を敷いて、70人ぐらいの聴衆が話を伺うという趣向。昨年2月にNHKで放送された「白隠 気迫みなぎる禅画」も 芳澤勝弘花園大学教授、山下裕二明治学院大学教授、臨済宗僧侶・作家の玄侑宗久氏が座布団に坐っての対談だったので、それを真似たのだろう。靴をぬいて坐れば、特にunconfortableということはない。 トークの最初は、山下先生: 2000年に松濤美術館等で開かれた「ZENGA展 帰ってきたギッターコレクション」を監修したこと、一昨年、千葉市美術館で「ギッターコレクション展」が開かれたこと、大分・萬壽寺の朱達磨への思い入れ、2009年に芳澤教授が大著「白隠禅画墨蹟」に1050点もの書画を収載し、これらの作品の所在を明らかにし、さらに賛の解読をされたという業績について、イントロ的な説明をされた。 ![]() ![]() この展覧会は「白隠研究会」の集大成である。いまや渋谷のパワースポットになっている。 白隠の書画に国宝や重文がないことが、Bunkamuraでの本展開催にプラスであった(これに関連しては、現在の国宝・重文指定の問題点についてのディスカッションもあり)。 この美術館が壁のないスペースで出来ていることを利用して、六角形のハニカム構造を基本とした。 ![]() ![]() 搬送業者の役割が大きく、輸送時には、セキュリティのためクロネコマークを使い、展示作業も含めて4日という短期間で仕上げてくれた。 目立つ湿度調整ボックスを省き、絵の裏に設置した湿度調整シートを使って、今回は湿度を60%に設定している。 替わって、山下先生が作品の展示依頼の際の苦労話を披露された。今回は、全国の45か所から集められているが、断られたところもあった。OKになったところでも、寺の檀家を説得するのに苦労した。ただ「萬壽寺の朱達磨も出る」ということは殺し文句になったし、花園大学の臨済禅ネットワークも役立った。 司会のTakさんの「なぜ巡回しないのか」という質問への答は、「寺宝なので檀家が長期貸与を許さない」ということだった。その代り、今回の展覧会は、今年別の展覧会を準備中の永青文庫の所蔵品以外は展示換えなく2か月観られるようになっている。 山下先生は、続いて《布袋吹於福》は、愛媛・法華寺が大洲市立博物館に寄託していたものであるが、傷みが激しく、檀家の好意で修復されて今回展示されたことや箱の中から書付が出てきて、制作年代が判明した作品もあったことを明らかにされた。 ![]() 1.白隠は絵を習っていない。 2.驚くほど多作である。 3.美術家として説明できない突出した存在で、仙厓とも「在り様」が異なる。 4.賛が難しい。 5.作品が散在している。 ということで、「今後、若い研究者がしっかりと取り組んでほしい」と結ばれた。 山下先生は、作品のスライドを出しながら、書体が頭でっかちであり、人物の頭も目も大きく、目は斜視であることを指摘された。白隠は自画像を10点以上描いているが、それまでは明兆や雪舟が各1点の模本、雪村が1点を残しているだけであり、白隠の数はきわだっている。 その他、《出山釈迦》では足の皮膚が鱗のようになっていること、中性であるはずの《蓮池観音像》に母性を感じること(脱線: ここで広瀬氏が山下先生はマザコンとのつぶやき。山下先生は、マザコンにはマザコンの気持ちが分かると応じられたが・・・)、《地獄極楽変相図》の釈迦如来の顔が怖いこと、「老いの坂」が面白いこと、地獄の短冊の中身を書き忘れていることなどについて話された。また《鍾馗鬼味噌》については、鍾馗やその息子の言葉(賛)を逐語訳しながら、詳細に説明された。 さらに上述の《蓮池観音》の浮遊感のある蓮が若冲の画に取り込まれた可能性があることや大雅・蕭白・蘆雪と白隠との関係についても言及された。 また《南無地獄大菩薩》における地獄と菩薩が「表裏一体」であるとの考え方は、白隠の達磨を所蔵していたジョン・レノンの「イマジン」の「天国も地獄もなく、僕らの上には空があるだけ」という歌詞に影響を与えた可能性があること、米国では鈴木大拙の英文書に影響を受けて、禅ブームといわれるヒッピー文化が生じたことも話された。 最後にベストの1点はという司会の質問でトークは終わった。 それぞれの答えは、 1.広瀬氏: 《朱達磨》 2.山下先生: 《すたすた坊主》 3.Takさん: 《横向き半身達磨》永青文庫 トークが終わってから、旧知の方々といろいろな話をしながら、短時間で展示室の構造を確認したり、展示室の写真を撮ったりした。 ![]() 要は、「満」の字をどこととるかということだけなのだが、近くにおられた山下先生に伺ったところ、「いろいろな考えがあるようですね」と流されてしまった。 Takさんへのお礼の意味で、白隠の面白い絵のコピーを持参した。NYの白隠展図録で見つけたものだが、画像はこちらで見ることができる。 このブログ記事では、©を考慮に入れて、私「とら」が原図を模写して賛を現代仮名にした拙い作品を↓にアップします。 ![]() ただ、「辺鄙似知吾」(へびいちご、発禁書)で、過酷な年貢と大名の浪費を鋭く批判していた白隠さんならば、今回、渋谷に降臨してきているのだから、禅画《五位鷺と泥鰌》を何枚か描いて、しかるべき人に渡してほしかったとは思う。 泥鰌の骨は、「土性骨」との掛け言葉。今回の総選挙で惨敗した民主党の土性骨によるカムバックに期待する向きもあろう。 一方、泥鰌に大勝した自民党の現首相は得意げであるが、五位鷺の「五位」とは禅哲学の「相対と絶対」あるいは「見かけと実体」の関係の理解の程度を示す5段階。 現総理は一旦その地位を投げだした元首相でもあることから考えれば、今のところは「五位」の第1段階に過ぎず、描かれた五位鷺のように得意がっている状況ではなかろう。 ちなみに英文図録の説明では、この「五位」Five Ranks の各段階(境位)Rank は次のように記述されており(【 】内はそれぞれの日本語)、いずれにも深い意味がある。詳細についてはこちらを参照されたい。 ・The First Rank: The Relative Absolute (The Apparent within the Real) 【正中偏】山下先生に、この《五位鷺と泥鰌》の絵を見てもらうと、国内にも同じ図柄のものがいくつか残っていると教えていただいた。 トークに使用したプロジェクターやスクリーンが片づけられてから、達磨部屋の写真を何枚か撮って帰宅した。 ![]() ![]() ![]() Takさん、今回は大変お世話になり、ありがとうございました。 Copyright ©2013 * 美術散歩 管理人 とら * All rights reserved 【追記1】 ネットで曹洞宗・市堀正宗師の句集「雪安居」の中に次の句があるのを見つけた。白隠の《五位鷺と泥鰌》の分かりやすい解釈である。 五位鷺や いかに偉くも 餌は泥鰌【追記2】 「五位鷺」の名の由来: 平家物語(巻第五 朝敵揃)に、醍醐天皇の宣旨に従い捕らえられたため正五位を与えられたという故事が載っている。白隠もおそらくこの故事を知っていたのだろう。 延喜御門、神泉苑に行幸あッて、池のみぎはに鷺のゐたりけるを、六位をめして、「あの鷺とッて参らせよ」と仰ければ、いかでか取らんと思ひけれども、 綸言なればあゆみむかふ。鷺、羽繕ひして立たんとす。「宣旨ぞ」と仰すれば、ひらんで飛びさらず。これを取ッて参りたり。 「なんぢが宣旨にしたがッて参りたるこそ神妙なれ。やがて五位になせ」とて、鷺を五位にぞなされける。まッたく鷺の御料にはあらず、ただ王威の程を知ろし召さんがためなり。
by cardiacsurgery
| 2013-01-08 20:15
| 江戸絵画(浮世絵以外)
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