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学士會会報の新年号(No898, 2013-1)に高階秀爾先生の「歌の心・絵の心‐芸術に見る日本文化の系譜」が載っている。これは、2012年7月20日の午餐会講演の内容であるが、2006年5月13日にブリジストン美術館土曜講座で聞いた同氏の講演(ホームページ記事はこちら)の延長のような部分(画と文字の統合)が含まれていたので、非常に興味深く読ませていただいた。 その「要旨」は、和歌は誕生当初から、絵とどのように響き合うかを重視しながら、日本独自の曲線文字(平仮名)によって「散らし書き」という技法で書かれてきた。秩序が無いようで有る「散らし」のデザイン感覚や、絵と文字と和歌を一体のものとする美意識は、日本の建築・庭・工芸・絵画などにも見られ、現代にも受け継がれている となっている。 ここでは、文中に取り上げられた具体例を中心にして、その内容の一部を紹介したい。 ・《古今和歌集》: 唐風の漢文文化一辺倒の時代から、国風文化が花開く時代に移り変わったことを象徴的に示すもの。平仮名で人の心を歌い上げた大和歌(和歌)が初めて公認された。 ・《貼り混ぜ屏風》: 平仮名が持つ曲線の造形美は日本人の心を歌にあげるのに適している。詠った和歌を色紙に書いて貼りつけた「貼り混ぜ屏風」は平安以降、江戸時代まで続く。 ・《聖徳大子像》↓: 太子は中国風の直刀を佩いているが、御付きの人は「そり」のある剣を付けている。この「そり」は「真っすぐなものが自然に僅かに曲線に移っていく」という日本的美意識。 ![]() ・院政期の装飾経《扇面法華経冊子》 東京国立博物館: これでも、文字と絵が一体化。 ・藤原行成《升色紙》 東京国立博物館: 古今集収載の清原深養父の和歌「人を思ふ 心は雁にあらねども 雲居にのみも 鳴きわたるかな」では、「返し書き」や「散らし書き」のデザイン的手法がとられている。 ![]() ![]() ![]() ・尾形光琳《桜狩蒔絵硯箱》藤田美術館: 造形的な文字が豪華な絵と一体となって和歌の世界を表している。 ・本阿弥光悦《舟橋蒔絵硯箱》東京国立博物館: 散らされた文字の中に「舟橋」の字はないが、硯箱全体が舟橋になっている。 ・尾形光琳《八橋蒔絵螺鈿硯箱》東京国立博物館: 和歌と工芸の関係が明らかな例。人々に「伊勢物語」の和歌を想起させる。 ・《燕子花図屏風》根津美術館: すべてを切り捨て杜若しか描いていないが、日本人には「伊勢物語」の歌を表していると認識される。 ・庶民向け版画 《百人一首 小のゝ小町》 東京国立博物館: 狂歌は「花のころは さかりにけりな うえの山 わが身べんとを ひらきせいまに」で、上野山で弁当を開いているところが描かれている。 ![]() ・竹内栖鳳《うな辺》京都市美術館: 鯛の絵を俳句の一部として読むようになっている。 ・棟方志功《流離抄板画柵三一図》大原美術館: 和歌から想像される情景が描かれ、大胆な文字で書かれた和歌と一つになっている。 会誌には、カラー口絵(扇面法華経冊子、桜狩蒔絵硯箱、流離抄板画柵三一図)も載っていたが、実際の講演では沢山のスライドを使用されたとのことである。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2013-01-05 15:35
| 国内アート
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