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前期の記事はこちらだが、かなりの数の血みどろ絵の画像をあげてしまい、後から見ると折角の記事をスポイルしてしまっているような気がする。
後期では、展示品が全点取り替えされていて、なかなか良かったが、構成は前期と同様だった。 第1章 国芳一門としての若き日々 ・《那智山大滝にての荒行図》1859-60年: 平安時代の北面の武士・遠藤盛遠は袈裟御前に横恋慕して、誤って殺害した。このため、出家して文覚と改名。寒中、那智の滝で荒行をするが、七日目に意識喪失。これを矜羯羅(こんがら)童子と制多迦(せいたか)童子が助ける。矜羯羅童子の身体は白く、制多迦童子の身体は赤色。飛沫のため文覚の顔と手しか見えない。 ![]() ![]() ![]() ![]() ・《源平壇之浦大合戦之図》1865年: 潜って敵船に近づく伊勢三郎義盛と伊勢小京太武邦の描写が見事。 ![]() 第2章 幕末の混迷と血みどろ絵の流行 ・《東錦浮世稿談 若嶋権右ヱ門》1867年: 沈んだ梵鐘を引き上げる権右衛門。鐘の放つ光が目印。毛綱の先に紐を結び付け、それをくわえている。 ![]() ![]() 第3章 新たな活路―新聞と西南戦争 ・《徳川十五代記 十五代徳川慶喜公》1875年: 鳥羽伏見の戦いから、船で江戸に逃げ帰る慶喜。すでに大政奉還を行った慶喜は朝廷に楯突く愚を避けたということになっているが、置いてきぼりにされた会津藩・桑名藩の心中は・・・。 ・《鹿児島征討内 隈川官軍賊軍戦》1877年: 球磨川から崖を攀じ登って官軍の背後を衝く薩摩軍。結局は敗けたのだが、よくぞ頑張ったという気持ちが入っている画。 第4章 新時代の歴史画―リアリズムと国民教化 ・《日本略史之内 素戔鳴尊出雲の簸川上に八頭蛇を退治したまふ図》1887年: 奇稲田姫を八岐大蛇から救う素戔鳴尊。 ![]() ![]() ・《和漢奇談鑑 佐倉宗吾 酒呑童子》1880年: (上図)堀田氏の悪政を幕府に訴えて磔にされた佐倉宗吾が、毎晩堀田家に現れ、女中を驚かせている。(下図)俎板にのった人間の生首をながめている酒呑童子。 ![]() ・《不知藪八幡之実怪》1881年: 水戸黄門が藪に入って妖怪に出会う場面。 第5章 最後の浮世絵師―江戸への回帰 ・《曾我時到る乗裸馬駆大磯》1885年: 曾我五郎、兄・十郎の危機を知り、急ぎ大磯に駆けつける。この画の下絵↓も出ていた。これも水野年方の旧蔵。 ![]() さて、今回の展覧会は芳年の回顧展ともいうべきものであった。これを見ていて、芳年が「最後の浮世絵師」と呼ばれることの妥当性やわが国の美術界における芳年の評価の不当性などについて感じるところがあったので述べてみたい。 1.歌川国芳の伝統は、月岡芳年ー水野年方ー鏑木清方ー伊東深水ー岩田専太郎と続いていることは事実である。今回の展覧会で出品されていた芳年の下絵はすべて水野年方が所蔵していたことは、この連結の強さを物語っている。また川瀬巴水らの新版画もこの線上にあることは疑いがない。したがって、月岡芳年が最後の浮世絵師であるというのは云いすぎのような気がする。 2.平和を謳歌する江戸時代において歌舞伎や遊郭での遊興が「浮世=憂き世」の象徴的存在として「浮世絵」が大衆に受け入れられていたと同様に、幕末維新の「憂き世=浮世」を象徴するものが戦争であり殺戮である。この時代には、「血みどろ絵」も版画や新聞を通じて民衆に受け入れられてきているのであるから、これも「浮世絵」の範疇に入ると考えるほうが妥当なのではあるまいか。 3.明治以降に「木版画」を無視し、「美術」の範疇から除外したのは、美術学校の卒業生を中心とする「美術界」の偏見である。「油彩画・水彩画=洋画」 vs 「岩彩画=日本画」なるガラパゴス的分類の中に入ってこない版画の存在は無視され、とくに浮世絵は一段低い存在として蚊帳の外に追いやってしまったのは狭量な美術界の学者や評論家たちであった。 4.北斎や写楽ほどに国際的に有名な近代日本画家の名前を挙げることは困難である。今回の展覧会にも大勢の外国人の観客が目立った。明治初期に貴重な日本の美術品が海外に流出したように、この平成の不況下において、浮世絵の海外流出が再発しつつあるのではないかとを憂えている。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2012-11-03 23:42
| 浮世絵
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