竹内栖鳳―京都画壇の画家たち ＠山種美術館

　近代日本画の西方を代表する竹内栖鳳の画は大分見てきている。HPやBlogの記事を順番に並べると、文末の【参考】のよう。

　東京の大観と京都の栖鳳の関係は、これらの展覧会の中で、2007年という同じ年に開かれた2つの展覧会が象徴的である。

　都美の「日展100年」には竹内栖鳳の出展作は1点のみであり、これに対抗する形で京都市美で開かれた「京都と近代日本画」には、竹内栖鳳の作品が多数出展されていたのである。

　この京都市美の展覧会は、京都画壇と官展の関係、京都の画塾と美術学校の関連といった複雑な問題を抱えた京都から、この100年をとらえなおしてみようという企画であり、そのチラシには、「従来の官展という中央だけからの視点では見えてこない、京都画壇の栄光と研鑽、自負と反旗を当時の展覧会出品作品でお楽しみください」と書かれていた。

　こういった背景が示すように、大きな竹内栖鳳の回顧展は、東京では近年開かれていない。

　今回の展覧会も、竹内栖鳳のみでなく、その関連画家の作品も含まれており、それほど広くない私的な美術館で開かれるものなので、チラシを見ただけで、パスしようと思っていた。

　ところが、昨日、新美で開かれている「リヒテンシュタイン展」を再訪して、小春日和のテラスでランチをとっている間に、この天気を利用して山種美術館に急遽足を延ばすことにした。わたしの美術散歩はこのように、いつも計画性がない。　見たのは後期であるが、竹内栖鳳の作品のみを一気に見せてほしかった。先人や後人の作品を省けば、あのスペースでも十分に展示できたように思う。そのようにできなかった理由はあるのだろうが、これからの美術館はなによりもcustomer-friendlyでなければならないと思う。　以下、章立てに沿って「お気に入り」を挙げていく。ちなみに、括弧内の赤数字は、チラシ↑の画像番号、茶アルファベットは↑↑の画像番号である。これらの画像を通観すると、動物画が多いことに気付く。

第1章：　先人たちに学ぶ：

　写意（精神性）を尊ぶ四条派では、呉春《落葉詩客図》(A)、写実を重んじる円山派では、円山応挙《龍唫起雲図》東博蔵(D)と《竹雀図小襖》(B)、伝長沢蘆雪《唐子遊び図》山種美、後に四条派風にも転じた森派では、森狙仙《春風猿語図》(I)、森徹山《兎図》山種美(J)。

第2章：　竹内栖鳳の画業：

　《雲龍》京都市美(F)、《模写　雪舟「山水長巻」》京都市美(L)、《百騒一睡》大阪歴博(K)、《飼われたる猿と兎》東近美（4)、《虎・獅子図》三重県美(6)、《絵になる最初》京都市美(2)、《班猫》山種美(3)、《蹴合》(1)、《蛙と蜻蛉》山種美(C)、《驟雨一過》京都市美(E)、《雄風》京都市美(9)。

　《班猫》のモデルとなった猫の写真が2枚出ていた。一枚は、坐って大きな目でこちらをじっと見ている写真、もう一枚は長谷川潾二郎の画のように寝ている姿。

第3章：栖鳳をとりまく人々：

　本章の画はすべて山種美蔵。西村五雲《白熊》(7)、西山翠嶂《狗子》、橋本関雪《霜の朝》(G)、上村松園《新蛍》(5)、伊藤小坡《虫売り》(H)、村上華岳《裸婦図》(8)。

【参考】

・2000年　東武美術館、「三千院の名宝展」： 《猿猴図》

・2006年　山種美術館、「竹内栖鳳と弟子たち」： 《班猫》、《緑池》、《蛙と蜻蛉》、《鴨雛》

・2006年　「東京国立近代美術館所蔵作品展」： 《飼われた猿と兎》

・2006年　東京国立近代美術館、「揺らぐ近代ー日本画よ洋画のはざまに」： 《ヴェニスの月》

・2007年　新国立美術館、「日展100年」： 《アレ夕立に》

・2007年　京都市美術館、「京都と近代日本画」： 《池塘浪静》、《雨》、《絵になる最初》、《絵になる最初》の大下絵

・2007年　京都国立近代美術館、小企画「福田平八郎と師友たち」： 《春雪》

・2008年　足立美術館、「日本画の中の美人たち」： 《富貴くさ》

・2008年　野間記念館、「竹内栖鳳と京都画壇」： 《古城枩翠》

・2008年　ホテルオークラ、「第１４回秘蔵の名品アートコレクション展」： 《虎》　

・2008年　日本橋三越、「今、甦るローマ開催・日本美術展」： 《蹴合》

・2009年　東京都美術館、「日本の美術館名品展」： （前期）《絵になる最初》、（後期）《散華》

・2009年　東京富士美術館、「新・名品100選展-日本・東洋美術の精華」： 《獅子》

・2009年　野間記念館、「近代日本の花鳥画-花と鳥の肖像画」： 《犬》

美術散歩　管理人　とら