記事ランキング
ブログパーツ
最新のトラックバック
外部リンク
以前の記事
2021年 01月 2020年 11月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 more... カテゴリ
全体
国外アート 西洋中世美術 ルネサンス バロック 印象派 印象派後期 現代アート(国外) 東洋アート 仏像 国内アート 江戸絵画(浮世絵以外) 浮世絵 近代日本美術 戦争画 現代アート(国内) アート一般 書籍 音楽 映画・写真 講演会 北海道の鈴 東北の鈴 関東の鈴 中部の鈴 関西の鈴 中四国の鈴 九州の鈴 ヨーロッパのベル アジアのベル アメリカのベル オーストラリアのベル 未分類 フォロー中のブログ
検索
その他のジャンル
ファン
ブログジャンル
画像一覧
|
1950年代、それは1945年の終戦後5年目からの10年間。私にとっては青春時代。米穀通帳を持って夜行列車で上京し、親元離れての通学時代だった。 高校生の社会科の授業では、安保賛成組と安保反対組に分かれてのディベート。大学では授業料値上げ反対闘争などの自治会活動。これは安保発効前夜の国会前座り込みにつながっていく。一方、運動部は山岳部での楽しい思い出もたくさん残っている。 まさに戦後の復興期であった。生活は貧しく、賃上げストライキが頻発していたが、当時、社会は理想を追い求めていたと思う。 美術展についていえば、1951年にマティス展とピカソ展、1953年のルオー展にも連れて行ってもらった記憶がある。 一方、戦後の美術は前衛美術の花ざかりとなり、当時の自分の理解可能な範囲をはるかに超えてしまい、美術に対する関心も次第に薄らいだ。 それから半世紀以上が過ぎ、経済の下降を止められない現在の日本において、戦後のこの時代のことを批判する権利は誰にもないだろう。 私自身は、貧しいが全国民が上を向いていたあの時代を懐かしみながら、この展覧会を見にいくことにした。その後、大分美術に親しむ機会が増えたので、少しは分かるかなという淡い期待もあった。 50年代の美術界は、社会的な出来事に関心を寄せつつも、現実的な対応をせざるを得なかったようである。他分野との垣根を越えて協力していかなければならなかったのもそのためだったように思う。 この展覧会は、こうした50年代美術の精神と活力を、「実験場」というキーワードで括って構成したものとなっていた。 1.原爆の刻印: 今となっては、すべての日本人が原爆や原発に関して不安の念をいだいているが、戦後間もないこの時代には、そのことに強い関心を持つ余裕のある人間はそれほど多くなかったような気がする。 このセクションに出ている1957年の土門拳の《原爆ドーム》や《原爆病院》の写真をみると、むごたらしい姿を容赦なく写したものが少なくない。報道写真の「さが」ということで片付けてよいのだろうか。 これより少し後の1960年代の川田喜久治の作品、例えば《地図」より 原爆ドーム 太田川 広島》などを見ると、大分落ち着きが出てきているように思う。 2.静物としての身体: ここでは、戦後間もない時期の作品がいくつも見られた。 例えば、鶴岡政男の1949年の油彩《重い手》には、太平洋戦争の生々しい記憶が、上野の浮浪者の悪魔的な姿の上に投影されている。同じ作者のブロンズ《転がっている首》↓も戦時体験なのだろう。 浜田知明のエッチング《少年兵哀歌》の連作も、過酷な兵役体験の残夢だと思われる。 3.複数化するタブロー: ここでは、印刷絵画、挿絵、漫画、現代詩、ルポルタージュといった領域での活動が紹介されていた。 4.記録・運動体: このセクションでは、戦後の社会的な問題に対して敏感に反応した人々の活動の足跡が、版画や出版物で紹介されていた。 無着成恭の「山びこ学校」の増補版が出たのが1951年というのだから、まさに今昔の感にたえない。 「暮らしの手帳」の1948-60年のものがズラリと並んでいた。表紙を見ているだけでは分からないので、手に取って読んでみたい気がする。 5.現場の磁力: 50年代には列島各地で起こった激しい反基地闘争について、内灘で得た経験を諷刺的に描いた池田龍雄の《怒りの海(内灘シリーズ)》↓や、砂川闘争を壁画的な構成にまとめた中村宏の《砂川五番》が出ていた。 1950年に来日したイサム・ノグチは、土偶や埴輪に触発されて制作を行った。今回出ていた《かぶと》などは、その意味で、日本の作家に大きな影響を与えたことだろう。 岡本太郎は、1952年に「縄文土器論」を発表し、それまで単なる考古学的な興味しか持たれていなかった縄文土器の豊かな造形性に着目した。今回の展覧会にも、彼の写真《縄文土器》が3点出ていた。《赤のイコン》↓のような岡本太郎の作品にも、この縄文のエネルギーが感じられる。 写真家・濱谷浩は写真集「裏日本」中の《津軽の男》(1955年)↓には、雪の中にすっくと立つ農民と馬の自信のある姿が見て取れる。 日本画家・東山魁夷が制作した彼の代表作《道》も、青森県の種差海岸の風景だったとのこと。 このようなテーマの作品が縄文の故郷である東北に多いことは興味ある事実である。 8.都市とテクノロジー: 高度成長期に入り、山口勝弘はガラスを利用した《ヴィトリーヌ》シリーズ↓によって美術を都市空間の中に展開していった。成長期の光の部分を構成主義的な「冷たい抽象」で表現したのである。 地主と農民の闘争をテーマとした山下菊二の《あけぼの村物語》↓、安保闘争の挫折を戯画的に描き出した中村宏の《階段にて》↓↓、《基地》などが、その代表的な作品である。 この展覧会の第1部は100% 楽しめたが、正直言って第2部はちょっと疲れた。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2012-10-17 19:16
| 国内アート
|
ファン申請 |
||