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家内はシャルダンの大ファンである。だからこの展覧会をとても期待していた。
18世紀フランス絵画といえば、王侯貴族にもてはやされたロココ絵画が有名であるが、私は、フラゴナール以外の軽薄で享楽的なロココは大嫌いである。 同じ18世紀のフランス絵画でも、シャルダンは別格で、彼の地味な静物画や愛情こもった風俗画は見ていて心地よく、自然に和んでくる。 9月になったとはいえまだ暑いので、東京メトロ・二重橋前駅→丸の内MY PLAZAレストランフロア→丸の内ブリックスクエア経由で美術館に到達した。 シャルダンの画はいくつも見ているが、シャルダンに絞った展覧会は今回が初めてである。 シャルダンは、1699年のパリ下町生まれ。父はビリヤード台を作る職人。 《赤えい》↓や《食卓》↓↓(いずれも今回出展されていない)によって、1728年、「動物と果実に卓越した画家」としてアカデミーに受け入れられ、その後、彼の静物画や親密な雰囲気の風俗画は高く評価されて、1755年、アカデミーの会計官とサロンの展示係を兼任するまでに出世した。 ![]() ![]() シャルダンの現存作品数は所在が確認されているもので238点ということだが、今回展示されている作品はそのうちの38点のみ。 彼の作品は、1730年代初めまでの「初期静物画」、1730年代初めから1750年代初めまでの「風俗画」、1750年代初めからの「晩期静物画」と大別されており、今回の展示もこれに沿って組み立てられていた。彼の装飾絵画や晩年のパステル画は今回は残念ながら出ていなかった。 Ⅰ.多難な門出と初期静物画 1720年頃の《ビリヤードの勝負》↓は現存する最初期の油彩画。後に風俗画を手がけるシャルダンとしても、これだけの多数を描いた作品はないとのことである。父親がビリヤード台の職人であったことが関係しているようだ。こんな古臭い画を描いていたらとても有名にならなかっただろう。 ![]() ![]() ![]() 1730年頃から、シャルダンは厨房画を描き始めた。対作品の《肉のない食事》↓と《肉のある食事》↓↓は、銅板を支持体として描かれたものだが、四旬節の断食の習慣に基づいている。《肉のない食事》の魚やフライパンの寒色と、《肉のある食事》の銅鍋や肉の暖色が対比されている。ここでも、いろいろな素材の前後関係を超絶技巧で表現している。 ![]() ![]() 1734-35年の《錫引きの銅鍋》と《銅の大鍋と乳鉢》は、オーク材に描かれた対作品らしいが、所蔵美術館が異なっている。 Ⅲ.風俗画-日常生活の場面 シャルダンは1733年頃から風俗画を描き始めた。風俗画は静物画に比べて格上のジャンルに属しており、コレクターの評判が良かったことがその理由。 シャルダンの静物画の顧客は、主に画家や批評家だったのに対し風俗画の顧客にはスウェーデン王妃、プロイセン王、ロシア皇帝といった外国の王侯貴族が名を連ねているのだから、この転向は大成功だった。 風俗画への転向を勧めたのは画家ジョセフ・アヴェドだったが、1734年制作の彼の肖像画↓が会場に出ていた。その画自体は、17世紀オランダ肖像画の亜流のようで、あまり感心しなかった。 ![]() ![]() ![]() ![]() もう一枚の絵葉書は《病後の食事(思いやりのある看護人)》↓にした。卵の殻を向いている女性の服装のピンクが美しいというだけではなく、クソールが描きこまれていたからである。 ![]() ![]() ![]() 1774年、シャルダンは再婚によってブルジョワの仲間入りを果たし、1750年代になると、注文制作・版画ロイヤルティ・年金収入などで生活は安定した。 1750年代の半ばになると、シャルダンは完全に風俗画を放棄してしまい、再び静物画に専念するようになった。本来静物画が好きで、風俗画を制作していたのは生活のためだけだったのだろうか。あるいは、公務が多忙となり、風俗画のアイデアが枯渇してきたためだったのだろうか。 《カーネーションの花瓶》は↓、シャルダン唯一の花卉画。沢山の花が描きこまれている。花瓶はデルフト焼。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 例えば、1768年頃に制作された《銀のゴブレットとりんご(別名:銀のゴブレット)》(↓左)には、今回展示の初期静物画(1728年以前の制作)の《昼食のしたく(別名:銀のゴブレット)》(↓右)にも描かれていたゴブレットが再登場している。両者を比較すると、光の描写に関しては、さすがに後期の画(↓左)のほうが巧みである。 ![]() シャルダンの晩年の静物画《木いちごの籠》は、今回の展覧会のメインビジュアル。現在は個人蔵で、通常は非公開のもの。カーネーションは近くで見ると粗っぽい描き方だが、離れて見ると浮き上がって見える。 ![]() しかし、シャルダンの優しい情緒的な風俗画も素晴らしい。「シャルダンの静物画と風俗画のどちらが好きか?」と訊かれると、迷ってしまう。家内の意見ははっきりと「静物画>風俗画」とのことだが、私自身の答えは「静物画=風俗画」という「兄たりがたく、弟たりがたし」的なもので歯切れが悪い。 すいている会場で、これらの傑作たちをほぼ独占状態で見られたのはとても良かった。また、一点を除いては、ガラスのない直接展示だった。これも良かった。 上野のフェルメールのような社会現象惹起展ではないが、渋谷のレーピンと同様の玄人好みの展覧会だといえると思う。 展示数がそれほど多くないので、1時間で楽に見終わることができ、サラリーマンの食事時間の前に、丸の内ブリックスクエアの寿司屋でバラ寿司を食べ終えた。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2012-09-13 09:26
| 国外アート
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