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この展覧会の英語名は、“From Renaissance to Rococo, Four Centuries of European Drawing, Painting and Sculpture”であるが、日本名の副題は「学べるヨーロッパ美術の400年」。確かに中学生・高校生らしき観客が目についた。
大体、「ベルリン国立美術館Staatliche Museum zu Berlin」というドイツ的な美術館群そのものが、外国人には分かりにくい。東京でいえば、「東博」・「西美」・「近美」・「新美」の4館を合せて、「東京国立美術館機構」としたようなもの。 今回は、この「ベルリン国立美術館群」のうちの「絵画館」のオールドマスター絵画コレクション、「ボーデ美術館」の彫刻コレクション、「素描版画館」からの出展であるが、「ベルリン国立美術館群」には、この他に、ベルクグリュン美術館、シャーフ・ゲルステンベルク・コレクション、写真美術館、装飾美術館、新ナショナルギャラリー、ハンブルグ駅現代美術館、ペルガモン博物館、新博物館、旧ナショナルギャラリー、旧博物館、ダーレム博物館、ケペニック宮殿がある。このうち下線の場所には以前に訪れたことがある。 展覧会は、時代順に分かれた1-5章と、ルネサンス素描の第6章に大別されている。以下、主だった展示品についての感想を述べていく。 第1章 15世紀: 宗教と日常生活 ・ドナテッロの工房《聖母子とふたりのケルビム》: イタリア・ルネサンスを代表する作家の工房で制作された大理石作品。聖母の髪や衣には古代彫刻の影響が認められる。 この木彫像は、正面から見ると、胸に靴屋用のエプロンをかけ、手には作業中の靴を持っているが、背面に回ってみると、大きなかごがあり、その脇に一足の仕上がった靴が置かれている。このように、実際にその周囲を周って見ないとその彫刻の良さが分からない。当然のことながら、彫刻とは、二次元の図録では再現しえない三次元美術なのである。また、この作品から、この時代に、手工業の重要性が増してきたことや社会福祉が芽生えてきたことが理解される。 この章で、以上の他に好印象に残った作品は、リッピの油彩《聖母マリアと洗礼者聖ヨハネのいる磔刑》、ドメニコ・ロッセリの浮彫《トビアスと天使》、ラインランド工房の浮彫《最後の晩餐》。また、15世紀の段階では、彫刻が絵画より50年先に進んでいたとの印象を持った。 第2章 15-16世紀: 魅惑の肖像画 ・ルーカス・クラーナハ(父)の工房《マルティン・ルターの肖像》: クラーナハはニュルンベルグ出身者として、ルターの支援を続けていたことは有名。この作品は工房作だが、ルターの面差しは優しい。 ・アルブレヒト・デユーラー《ヤーコプ・ムッフェルの肖像》: ドイツやフランドルの商人も次第に力をつけてきており、デューラーが描いたムッフェルも、ニュルンベルクの商人・政治家である。描かれた毛皮の上着、縁なし帽子の金ベルト、白シャツのステッチなど、デューラーの写実の技の凄さに感嘆する。 ・ルーカス・クラーナハ(父)《ルクレティア》: イタリアで生まれたマニエリスムは、フランスへもたらされ、その後フランドル、オランダ、そしてドイツにも影響を与えた。ドイツの画家クラーナハ(父)の描いたこの作品は、イタリア・マニエリスム彫刻と同じ部屋に展示されていたので、この画家がマニエリスムの影響を受けていたことがよく分かった。 16-17世紀、新大陸から持込まれる金銀などの富を背景にヨーロッパで最大の経済力と覇権を誇ったのはスペインだった。 ・ディエゴ・ベラスケス《3人の音楽家》: 1616-20年頃の作品。この画では、パンとチーズと白ワインという楽師たちの軽食と、宴会における豪勢な食事とを対比させることによって、社会的矛盾が描き出されている。左奥には、マダガスカル原産のキツネザルがパンを手にしてこちらを見ている。楽士が持っている楽器は、バイオリンが1丁、ギター様の古楽器が2丁。 追記: 担当学芸員・高梨光正氏の新解釈(U SEVEN Vol47, Jan 2013)では、鏡といわれてきたものは恋人の肖像画で、東インド会社に勤めている恋人が給料で買った真珠を手紙とともに送ってきた。彼女はそれを身に着け、肖像画の相手に見せている 。 この画面の真ん中の部分は空白になっており(初めここに描かれていた世界地図は後から塗りつぶされた)、左側の窓から差し込む光が少女の顔に当たっている。このような柔らかな光が、フェルメールの最大の魅力である。机の上には中国製の磁器の壺や手紙らしき紙片、空いている椅子には何も置かれていない。 ベルリンでは、この絵画館に2日続けて行った。その時に、フェルメールの2作品の前で撮った写真が↓。個人的には、もう一つの《ぶどう酒のグラス》の赤いドレスの女性の方が好み。こちらの卓上にはデルフト焼のピッチャー、椅子の上には恋人を暗示するリュートが置かれている。 18世紀は変動、変革の時代であり、人間の知性と感性の変化が、18世紀美術を生み出していった。 ・セバスティアーノ・リッチ《バテシバ》: 1725年の作品。明るい典型的なロココの作品である。ベルリン絵画館で"50 Materpieces"を買ってきたが、今回来日した中で、この50点の中に入っていたのは、この《パテシバ》だけ。フェルメールで入っていたのは《ぶどう酒のグラス》の方だった。 第6章 魅惑のイタリア・ルネサンス素描 素描版画館からイタリアの素描作品30点が紹介されていた。今回の展覧会では、ここが最大の見せ場である。15世紀以降の・ルネサンス期の美術は、絵画彫刻だけではなく、素描そのものが芸術家の創造力の記録媒体として大きな重要性を担っていたのである。 ・サンドロ・ボッティチェッリ 《ダンテ『神曲』「煉獄篇」挿絵素描より:愛の原理を説くウェルギリウス(第17歌)》 ・サンドロ・ボッティチェッリ《ダンテ『神曲』「煉獄篇」挿絵素描より:地上の楽園、ダンテの罪の告白、ヴェールを脱ぐベアトリーチェ(第31歌)》 これらは、今回の展示で最も貴重なもので、1480-95年頃、ボッティチェッリがダンテの『神曲』写本のために制作した102枚の挿絵素描うちの2枚。これらは通常素描館外へ貸し出されることはなく、今回特別に出品されることになった。羊皮紙に銀筆とインクのみで描かれたたこれらの作品には、髪の毛や衣紋などが優美に描かれており、彼の息遣いが感じられるほどだった。 「煉獄編 第17歌」の場面では、ダンテは古代ローマの詩人ウェルギリウスの導きを受けたダンテが、知的な洞察と抽象的な幻視の世界を体験していく姿を、異時同図の手法で描いている。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2012-06-22 23:48
| 国外アート
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